6月―――。
梅雨の真っ只中。
<ムシムシ…ムシムシ…蒸せまくるぜ…!さすがは梅雨だ…!>
俺が望んだもの…
それは海老…
大きな大きな海老だった…!
香南市野市町。
『手打うどん 田吾作』
<海老と書いてエビと読む…それを知ったのは中学の頃だった…以来…極稀に無性に食べたくなる……エビが……エビが……!>
紺色の暖簾。
くぐる。2年ぶり。
『田吾作』の暖簾。
店内の椅子に腰を下ろし、メニューを見る。
これはただの確認。食べるものは決めている。
<変わらず…あるっ…!天ぷらうどん……!>
知る人ぞ知る事実。
田吾作の『天ぷらうどん』に入っている天ぷらは、エビ天のみ。
だが…そのエビ天…!
県下最大級に巨大…!!
どうせ食べるなら…!
デカイのがイイッ……!!
一般店の方式。
オバチャンに注文して待つ。
瞑想して待つ。
数分後――――――。
来るっ…!!
棍棒っ…!!
<巨大っ……極太っ……!
ドンブリから…ハミ出てるっ……!!>
この局面…眼前に現れたそれ…!
紛れもなく棍棒……!!
エビ天の限界まで攻めた…!
棍棒っ…!棍棒エビっ……!!
<相変わらずデカイんだな…田吾作さん…じゃあ早速…エビ天から…>
いかない。
<お楽しみは…あとに取っておく…まずは麺…うどんの主役は…あくまで麺…そうだろう?…麺からいくのが…気持ちのいい人生ってもんだろう…!?>
エビ天を一旦スルー。
その背後から取り出す…麺…!!
平べったい麺…!!
<しなやかな弾力と喉越し…たとえば…シコタマ呑んだ翌日や…若干体調が悪いとき…構えずとも飲める麺…!優しい…!!>
喉に……………!
胃に……………!
優しい…!!
<俺…ここにきて…わかった気がするんだ…>
田吾作のうどんの半分は…!
優しさでできている……!!
だがっ…!
そんな麺や出汁とは裏腹に…!
エビ天………!
圧倒的…攻撃力っ…!!
かぶり付こう…!
頭から………!!
そして食べおおす…!
尻尾まで………!!
カラッと揚がった衣…。
それを噛むと、訪れる。
限度なき幸福っ…!!
思わず店の外に出て…!
ジョジョ立ちしてしまう始末…!!
こうなったら……!
もう一杯食べるしかない……!
カレーうどん…!
俺たちの希望…!!
この局面…棍棒連打…!
エビ天に続く…もう一つの棍棒…!
ちく天…付けおおした…!!
<俺だって田吾作は初めてじゃない…知ってたさ…>
田吾作は棍棒…!
いっぱい持ってんだ…!!
まろやか、だが刺激的なカレー。
慎重かつ大胆に、そんな雰囲気。
その後にちく天を噛むと、ほのかに青ノリの香りがカレーに混じる。
<磯辺ってる…!>
磯辺りながら、伝説の昼は終わった。
◆ 手打うどん 田吾作
(高知県香南市野市町西野2545−1)
営業時間/11:00~15:00
定休日/月曜日
駐車場/有