『EP4を読む』
ドンブリを手に、ファミーユのカウンター席に戻った。
隣に座る、愛媛から来たご夫妻の旦那さんが目を丸くした。
「まっ…!また食べるんですか…?」
「え……ええ………」
いったいどういうわけだろう。
私はまたしても『タタキ丼』を手に抱えていた。
<ダメだ……!
俺はもう俺自身にも止められない…!>
うどんに溺れ始めた初期の頃と同じ…!
食べたい…逢いたい…!
逢って食べたいという意思に自制が効かない…!
この感覚は危険…!
観始めたら気になり…追い続けてしまう…
月9ドラマの恋の行方のように…!
タタキ丼しか、見えない。
5杯目…!
『お城のいちばん船・鰹タタキ丼』
『いちばん船』は、お寿司屋さん。
お寿司屋さんのタタキ丼。
丼上を席巻する赤い群れ、鰹。
<赤い……!この鰹…赤身…!圧倒的…赤身…!>
もはや……!
この鰹は…鰹じゃない…!
これは……!
鰹型のシャアっ…‼︎
うどんがそうであるように、
タタキ丼も違っている…。
たとえば人がそうであるように、
個々それぞれが違っている。
タタキ丼は人であり、タタキ丼はシャアなのだ。
(ひろめ市場「タタキ丼」の迷宮
•完)
『番外編を読む』