数年前から食べたいと思っていた『まがみ』の弁当が手に入ったのは、ある朝のことだった。
非常に人気のある弁当屋さんだと噂に聞いてはいたけれど、なかなか機会がなくて、ずっと食べることができていなかった『まがみ』の弁当が目の前にあるのだ。
<あらまぁ!まがみの弁当よ!あの有名な、まがみの弁当よ!>
嬉しさのあまり、縦から横から撮影した。
弁当の容器の上にかけられた包装紙が洒落ている。
灯台があって、その向こうに海があって、船と雲が浮かんでいるという何とも若大将好みなデザインだ。そこに筆書きのような書体をもちい、朱色で「まがみ」。…いい。
フタを開けると、ケチャップの香りがした。
<わぁ!ハンバーグ!>ちょっとした小学生みたいにハシャぐ。
隣には、名古屋名物エビフリャー。
長い。長野県くらい長い。長すぎて先端がごはんのほうまで、はみ出している。
<エビフライが長野県とすれば、コイツは富山県か>
と思いながら、ジャガイモの炊いたやつを見た。
新潟の位置がキュウリの漬物で、群馬の位置がハルサメのサラダっぽいやつだ。
<ハンバーグ、結構ケチャップ効いちゅうな>
ソースも入っているのかもしれないけれど、ソース感はあまりなく、ケチャップが強い。肉の味とケチャップの味で攻めてくるハンバーグ。ケチャッピュ!って感じだ。
<こりゃあ、ごはんが欲しくなる味や!>
ハンバーグ一口で、ごはんが五口くらい食べられる濃厚さ。このハンバーグがあれば「ごはんがス○ムくん」は必要ない。
<先のほうは衣だけちゃうんか>
と食べる前からイチャモンをつけられたエビフライだったが、ごはんの上に載ってしまっている先端まで、ちゃんとエビが入っていた。さすがは長野県。
<エビフライもごはんが欲しくなる感じやなぁ>
ごはんを食べていて思った。<まがみのごはん、なんか美味しい>
変な話、お茶をかけて食べたくなるようなごはんだ。それも冷たいお茶をかけて『冷やし茶漬け』にして食べたい。お茶はペットボトルのお茶がいい。米粒がしっかり立っている。
あとから知ったのだけれど、『まがみ』の弁当は毎日一種類しかなく、内容は曜日で変わるのだという。ハンバーグとエビフライは毎週土曜日に販売される組み合わせとのことだった。
<そもそも『まがみ』って、どこにあるが?>
場所も知らなかったので、後日、探検がてらに行ってみたら、高知市大津のバイパスからラーメン店『自由軒』のある交差点を少し南に入ったところに『まがみ』を発見した。
夕方ですでに閉店していて閑散としていたが、昼時は行列ができるそうだ。