『純手打ちラーメン とがの』に着いたとき、すでに午後2時半になろうとしていた。昼の営業時間は3時まで。30分前にオーダーストップということもあり得る。しかし2時半まで、あと5分ほどあるので大丈夫だろうと思いながらも雨の中を速足で歩いてきた。
(大雨で店舗画像撮れず。上記画像は以前、夜に行った際のものです)
店の前まで来て、駐車場の存在を示す張り紙を見て、愕然とした。
<そういや…とがの、駐車場あったがやった>
店の隣に2台分ほど駐車場があることを忘れていた。わざわざ遠くの、それも有料のコインパーキングに車を停めてきていた。雨も降っているのに。時間もないのに。
<たぶん慌ててなかったら駐車場のことばぁ思い出したろうにねぇ>
「急いては事を仕損じる」なんて、ことわざもあるくらいだ。
昼の閉店時間を間際に、『とがの』の店内はすいていた。
テレビから夏の高校野球中継が流れている。
ツーストライク。バッター追い込まれた。ピッチャー投げる。打つか…!?打った!内野ゴロ!セカンド取りに行く!
そのとき「バァァァーン!」
音がした。大将が生地を台に叩き付ける音だった。
店の片隅で麺を打つ大将。両手で生地を持ち、上下にフワフワさせている。そしてまた「バァァァーン!」台に叩き付ける。
先に『ちゃんぽん』がきた。それから『半チャーハン』がきた。
相変わらず独特の色をしたスープ。香りが湯気とともに漂ってくる。豚骨スープだと聞いたが、よくある豚骨スープと違う香りがする。
麺も相変わらず独特の手打ち麺だが、以前より太さは揃っている気もする。それでも中には極太の麺や細い麺も入っている。モチモチした食感なんかはラーメンというよりも、うどんを食べる感覚に近い。
そして太い麺と細い麺で、また感じが違って、一杯の中に多面性がある。同じ人でも、見る人、見る面によって異なった印象を受けるのと似たようなものなのかもしれない。
『とがの』はラーメンを通じて教えてくれているのだ。人の一面だけを見て判断してはいけない。一面だけを見ていると、いかがわしい羽毛布団を買わされるぞ。怪しい口座に振り込みたくなっちゃうぞ、と。
でも他人の本質を見極めるのって難しいんだよな、と、チャーハンを放り込む。
しっかり味の付いた半チャーハン。筋肉質の男って感じがする。
(やきそばも、もちろん手打ち麺で、オイスターソース?が結構効いていた)
食べているとなかなか身体が温まってきた。強めにかかっている冷房で何とか発汗が抑えられている感じだ。
<高校球児は偉いねぇ。こんな暑い中、野球をして>
昼下がりのお婆ちゃんみたいに目を細めた。テレビの中ではまだ、白いユニフォームを着たオーバーハンドのピッチャーが白球を投げ込んでいる。
<うどんみたいやと思ったけど、やっぱりラーメンか…でも普通のラーメンとも、また違うもんなぁ>
食べれば食べるほど、わからなくなってきていた。普通のラーメンではないのだ。
<まぁ…『純手打ちラーメンとがの』っていう食べ物ながやろね>
スープを飲むと喉の奥から豚骨の香りがしてきて、「僕は豚だ、ブー」と言っていた。
◆ 純手打ちラーメン とがの
(高知県高知市本町2-5-13)
営業時間/11:00~15:00、17:30~22:30
定休日/年末年始のみ
駐車場/店の隣の5番と6番