『かるぽーと』を出た。時刻は午後二時。どうやら鑑賞し終えるのに二時間ほどを費やしたようだった。
昼ごはんをどうしようかと考えたが、すでに多くのうどん屋は閉まっている。
エレベーターの中で見た張り紙が気になっていた。張り紙には、こう書かれていた。
『かるぽーと3F喫茶 カフェ・ド・リーブルで深夜食堂メニューが食べられる!』
どうやら県展が開催されている『かるぽーと』内で同じく開催されている、漫画『深夜食堂』で有名な高知県四万十市出身の安倍夜郎さんの『安倍夜郎展』に関連したもののようだった。
張り紙には、こうも書かれていた。
『ナポリうどん』
「うどん……。うどんかぁ」悪くない。「行くか……?深夜食堂」
いま出てきた『かるぽーと』にまた戻り、エレベーターで三階へ上がった。
自然光が射し込む店内。開け放たれた窓から涼しい秋の風が吹いてくる。
店員のお姉さんが運んできた赤いうどんの上には、赤いウインナーが載っていた。予想していた通り、ナポリタンスパゲティのうどん版といった様相。
それにサラダが付いている。
箸で挟んだウインナーを様々な角度から、じっと見つめた。足の開き具合が美しい。綺麗なタコの形になっている。
漫画では読んだことがないけれど、テレビドラマ版『深夜食堂』の『赤いウインナー』の回は観た。松重豊が演じるヤクザの"龍ちゃん"が、タコさんウインナー好きという、ギャップ萌え回だった記憶がある。
やはりここは足からか、と思った。松重豊はたしかタコさんを足から食べていた。頭から食べる派の私にとって、あれは衝撃的なシーンだった。足から食べる人なんかいるのかと。
今回はあえて"松重豊喰い"にチャレンジしてみよう。
タコさんを足から食べてみる。
「おお、なんかちょっとだけ龍ちゃんになった気分!」ケチャップ味のウインナー。
「いいぞぉ!いいぞぉ!歯応えが抜群じゃないかあ」ちょっとだけ『孤独のグルメ』も織り交ぜてみた。「うん。うまい。いかにもウインナーってウインナーだ。もぐもぐ」
うどんを食べる。ケチャップ味のソースに混ぜられたタマネギがシャクシャクと音を立てる。べつに熱くはないけれど、言っておきたい。
「うおォン、俺はまるで人間火力発電所だあ」
ナポリうどんが入った皿を載せた盆に、紙が敷かれている。そこには松重豊とは少し印象の違う男性が描かれている。ジャケットを羽織り、サングラスをかけてタコさんウインナーを食べるその人物は、十中八九、原作の龍ちゃんだ。
「原作の深夜食堂ってこんな感じの絵なんだなあ」
サングラスの奥に潜む瞳の輝きをうかがい知ることはできないが、ギャップ攻めの彼のことだ。きっとつぶらな瞳に違いない。
(深夜食堂メニュー食事と、安倍夜郎展観覧で、いまなら深夜食堂オリジナル箸置きがもらえる!)
(か……かわいい……!)
※『ナポリうどん』は期間限定のようです。詳細は当記事一枚目の画像にて。