高知市の『帯屋町チェントロ』に来ていた。うどんを食べるためだ。一階の『金高堂書店』には入ったことがあるが、二階に上がるのは初めて。
エレベーターのドアが開くと長い通路が伸びていた。外のアーケード街の喧騒とは裏腹に静まり返っている。
どこにあるんだろう。不安に駆られながら、てくてく歩いた。
すると通路の一番奥にあった。『一汁三菜食堂』と書かれた自動ドア。高知に数店舗ある、セルフスタイルの食堂だ。
中に入ると、左側に長いセルフレーンが伸びていた。通路といい、セルフレーンといい、チェントロはなんでも長い。長過ぎて向こう側が霞んでいる。
メニューで確認したそれをカウンター越し、注文する。よもや『一汁三菜食堂』に、うどんを食べに来る日がこようとは。
セルフレーンを進むと群雄割拠、たくさんのおかずが並んでいる。
<うどんだけでいい!うどんだけで!いろいろ食べると太るから!>
食欲を抑えようとしたがダメだった。セルフうどん店でもよく見かける『アジフライ』を取ってしまった。陥る自己嫌悪。
レジの前で少し待っていると、完成したうどんを渡してくれた。窓に沿ったカウンター席に持って行って食べる。
カレーの香りがぷんぷん漂っている。箸で麺を持ち上げると、その香りは一層高まる。鼻から脳へ。カレーが直撃。
そのまま食べる、白い麺。
プニプニした麺にカレーが絡まって攻撃してくる。
辛くない。まったりしたカレー。でもあとから少しだけピリッとくる。
途中で水を飲んで、口の中のカレー感を弱めて、アジフライ。ソースを一回し。かけて食べる。
衣がサクッ。冷めているけれど、お母さんの作り置きアジフライみたいな雰囲気で悪くはない。アジフライというのは、冷めてもそれはそれでまた風流だ。
アジフライは葉桜。人はそれに価値を見出さないが、あるいは価値観が違えば、それはそれでよいものなのだ。
呼吸を整えて、アジフライに添えられた野菜を食べる。キャベツを噛むと、中から水分が出てきた。口の中にまだ残るカレーの香りにキャベツの香りが入り混じる。
もう一度うどんへ。
再度カレーが私を支配する。褐色のカレーの世界。そこに食べかけのアジフライを投入。
明らかにカレーが動揺している。まさかアジフライを入れられるとは思うまい。仲良くやれよ。カレーとアジフライ。
カレーが付いたアジフライ。カレーアジフライ。カレーという意外な友の熱を得たアジフライは咲いた。満開だ!カレーアジフライの花が満開だ!