八月末にひっそりと閉店した『うどん源水 南国』。その跡地で改装工事が行われていた。何になるんだろう。答えが出たのは数カ月後。
白と水色の看板に『Good Time Cafe』と書かれている。オープンしていることは、しばらく前から知っていた。ここまで来る車中で何度か口に出して言ってみたりした。
「ぐったぁーいむかふぇ」
"ぐっどたいむかふぇ"と日本語読みにしないのがポイントだ。
「ぐったぁーいむかふぇ」
たぶん五回くらい口にした。"おっぱっぴー"みたいなノリで何だか言いたくなる魔法の言葉、「ぐったぁーいむかふぇ」
六回目を口にしようとした瞬間、<いかん俺、ぐったぁーいむかふぇ中毒になりゆう>と思い自重した。
源水時代からよく来ていて、勝手知ったる駐車場に車を停め、歩き慣れたアスファルトを踏みしめる。しかし店内の雰囲気、源水時代とまったく異なる。
<こりゃあ別の店みたいじゃよ>熟練の爺さんみたいな口調でそう思った。本当に別の店なのだから当たり前だが、源水時代とは席の配置も店内の配色も変わっているので見違えた。
「明るく太陽の差し込むカリフォルニアスタイル」がコンセプトらしい。たしかに太陽の光が眩しいくらい入ってきている。ドラキュラだったら、すでに灰になっていることだろう。
奥のソファーがある席に腰をおろす。
<うーん、なかなかの座り心地>
一時期、ソファーを探す旅をしていたことがきっかけで、私はソファーにうるさい。弾力、手触り、背もたれの高さに至るまでチェックする。
<いいねぇ>とくに座った瞬間のメキメキという音がよかった。何ともカルフォルニア感が漂う響きだ。
白いテーブルに広げたメニュー。『ゴーゴーカレー』がある。「金沢カレー」なのだそうだ。
<これがおそらくこの店の看板メニュー…!>直感でわかった。元々このくらいの嗅覚がないと、店側の攻撃力が突き抜けている讃岐うどん巡りなどでは生きて帰って来られない。
普段はとくに看板メニューなど気にせず、いきなり亜種系を攻めたりもするが、ゴーゴーしたカレーは食べたことがない。
<ここはあえて…ゴーゴー勝負だっ…!>
窓の向こう側に見えるテラスにも席があり、そこでも若い女性たちがごはんを食べている。
<今年の十二月は普通やないくらい暖かいな。昼間とはいえ、外でごはんが食べられるなんて…>
数分後に来たる、ゴーゴー。ゴーゴーカレーランチ。
「黒っ!」思わず声が出た。
白米にかかった濃い色のカレー。上にソースを垂らしたトンカツが豪快に載り、横に千切りキャベツが居座る様は圧巻。能登半島に打ち付ける日本海の荒波みたいな迫力がある。
「うわっ!濃いね…!」また思わず声が出た。予想に反してあっさり、なんてことはない。見た目通り濃い。かなり濃い。
<男らしい濃さしたカレーだなぁ>勝新太郎のような濃さだ。カツだけに。
ランチセットにした恩恵で、カレーのほかにサラダとスープと何かよくわからないものも付いている。
スープはタマネギ畑。オニオンの甘みが凄まじく、ちょっとした思春期の恋よりも甘い。
何かよくわからないものも食べてみる。これは最初グラタンかと思ったが、どうやら違う。フォークでほじってみると、中にたくさんのシメジとエノキが入っている。
<茶碗蒸し…!?>口に入れると、やはり茶碗蒸しの味がする。しかしよくある茶碗蒸しの味ではない。<チーズの味がする>
激動二〇一五。
<上に載ってんのはチーズか、これ!>
チーズ茶碗蒸し。
金沢カレーに続いてこれも初めて食べた。初物尽くし。ぐったぁーいむかふぇ。
お冷やの容器がコップというよりも皿に近かった時点で只者ではないと感じていたが、茶碗蒸しにチーズを投入してくる辺り、ふぁんたじすた。じろーらも。
カルフォルニアコンセプトの雰囲気に包まれて、高知で食べる金沢カレーはダンディズム。大人の味がした。
グッドタイムカフェの所在地、営業時間、定休日、駐車場
- 所在地/高知県高知市大津甲388-1(グッドタイムカフェの地図)
- 営業時間/10:00〜22:00
- 定休日/火曜日
- 駐車場/有
- ■カウンター席/? ■テーブル席/有 ■座敷/無
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