高知市帯屋町の老舗居酒屋『大吉』は、連日多数のお客さんで賑わう人気店にして名店である。
インターネットサイトで飲食店を紹介する際、よく特定の店を「名店」とうたっているのを見かける。「うどんの名店!○○で噂の肉うどんを食べてきた!」みたいなタイトルが付いた記事のことだ。
そんな私も「名店」という言葉をときどき使うし、この記事のタイトルにも見事に「名店」と付いているわけだが、帯屋町の『大吉』は紛れもなく、高知有数の居酒屋の「名店」といってしまっても問題ないだろう。
行ったことのあるかたはおわかりいただけるだろうが、老舗にしか出せないお店の雰囲気が素敵で、しかも料理が抜群においしいのだ。
居酒屋大吉の店内
居酒屋大吉の店内。1階はL字型に伸びるカウンター席と、ほかにテーブル席。2階と3階には座敷がある。
歴史が染み込んだ、床、壁、天井から、大量の情緒があふれている。
お通しは「ホウレンソウのおひたし」。
カウンター席の隅に腰を下ろした竜一。まずは乙女のように可愛らしく「ゆずチューハイ」をあおり始める。
カウンターの向こう側では、何人かの料理人さんたちが忙しそうに調理をされているのが見える。
居酒屋大吉のメニュー
多彩なメニューが並ぶ、居酒屋大吉。レギュラーメニューのほかに、その日のおすすめが記載された「日替わりメニュー」も存在する。
焼鳥
初手は「焼鳥」から。
よくある「ねぎま」は、鶏肉のあいだに「長ネギ」が刺さっているものだが、大吉の焼鳥は「タマネギ」が刺さっている。
しかしタマネギを刺すこの形。珍しいと思ったが、九州・福岡など、地域によってはメジャーな形である模様。
タマネギのねぎま、"タマねぎま"もなかなかおいしい。
「長ネギよりもタマネギのほうが甘くて食べやすいかもしれないねぇ……」
なんて感想を述べながら、そう言ってしまうと長ネギ農家の立場が……それでもタマネギ農家はイヤな気はしないだろう、なんて生産者の立場を考えてしまうとき、私は農家なのだと思い出す。
牛ホルモン炒め
「牛ホルモン炒め」。牛ホルモンをニンニクの芽とモヤシなどと一緒に炒めてタレを絡めてある。
私は牛ホルモンが好きだ。
しかし家で食べようとすると、脂でベチャベチャになってしまって上手くいかないし、フライパンが大変なことになるから「家でホルモンは食べない」。いつしかそれがマイルールとなっている。
その反動で、居酒屋さんなどで見かけると高確率で注文してしまうのが、この「ホルモン炒め」。
そんなに大量にはいらない。少し頼んで食べるのがいいのだ。
「いつの飲み込めばいいのかわからない」。ホルモンが苦手な人がよく口にするセリフだが、ホルモン好きの私などは2~3回噛んだ程度で飲み込める。
ホルモンが、喉をグイグイと押し広げながら胃に落ちていく。その感覚は風邪をひいたときに飲むアレに少し似ている。
ホルモンは錠剤です。
居酒屋大吉の名物「イカ団子」
不動の人気ナンバーワン!!
超ヒットメニューです!
……とメニューに書かれた「イカ団子」。
そんな文言が書かれているから、注文する前から「イカ団子」に対するハードルは半端なく上がっていたわけだが、食べてみて納得。
これはうまい!
丸い「イカ団子」という弾丸が、私の心を撃ち抜いた。
▲ イカ団子の中身は、この状態。
つみれ状になったイカとネギなどが入っている。
さすがは名店の1番人気メニュー。「おおーっ!」と声が出るほどのおいしさだ。
イカだけど「まぁイッカー」なんて妥協は一切感じない。丁寧に作り込まれた味がする。
そうやって食べているあいだにも次の注文が入り、イカ団子を作り始める料理人さん。タッパーに入ったつみれを取り出し、慣れた手つきで団子状に丸めていく。
「注文が入ってから、一つ一つ丸めているんだなぁ……」
マグロの目玉の煮付け
さらに「マグロの目玉の煮付け」。
私は、魚の目玉も好きである。
ブリの目玉も好きだが、マグロの目玉もたまらないものがある。
世界の目玉好きのかたならおわかりいただけるだろう。目玉の周りに付いた、コラーゲンたっぷりのプルプル!あの部分を食べると、心がプルプルワンダーランドへといざなわれてしまうのだ。
ゴボウや豆腐などと一緒に甘辛く煮付けられた、マグロの目玉。
これがまた!焼酎に合う!
……などと言いながら、マグロの目玉の煮付けが出てくる頃には竜一、とっくに柚子チューハイから焼酎ロックに切り替えており、しかも焼酎ロックは3杯目ほどに突入していた。
カツオの塩タタキ
超抜級だったのはこちら。
カツオの塩タタキ!
超抜級(ちょうばつきゅう)とは、超抜けているクラスの意味である。
大吉の塩タタキは、ハイレベルな高知タタキ界の中でも、超抜けているクラスだ。
『ひろめ市場』内のタタキがおいしいお店『やいろ亭』と、どちらがおいしいだろうと一瞬考えたが、次の瞬間には「それは答えを出すのに2万年ほどかかる難問だ」と結論づけて考えるのを諦めてしまった。
カウンターの向こう側では、料理人の方々が忙しそうに働いている。長い包丁で刺身を切るかたなど、動きに一切無駄がなく、上下に身体を揺らしながら切る様など、まるでそういうダンスがあるみたいだ。
料理には作った人の気持ちがこもる。
カウンターの向こう側の厨房で繰り広げられる、"料理ショー"を眺めさせていただいて、大吉の料理はおいしいわけだなぁと思った。
塩タタキに、イカ団子に、お店のかたの情熱が入っているのである。
「居酒屋 大吉」の所在地、営業時間、定休日、駐車場
所在地/高知県高知市帯屋町1丁目15-13(地図)
営業時間/17:00~23:30(L.O.23:00)
定休日/日曜、祝祭日
駐車場/無
■カウンター席/有(1階) ■テーブル席/有(1階) ■座敷/有(2階~3階)