やってしまった大豪遊 「台湾家庭料理 福味香(ふみか) 前編」 【愛媛タイづくしの旅】 第7話 | 生姜農家の野望Online

やってしまった大豪遊 「台湾家庭料理 福味香(ふみか) 前編」 【愛媛タイづくしの旅】 第7話

『第6話を読む』


愛媛県伊予郡、
松前(まさき)町にある、
大型ショッピングモール
『エミフルMASAKI』をあとにしたのは、

松山市の『出雲屋』で
鯛丼を食べた数時間後だった。

夕暮れどきの国道を走る車内で、
嫁が訊いてきた。

「晩ごはん、どうする?」

「どうしよう……」

いったいどうすればいいのか、
私にはわからなかった。

「なにか食べたいものないの?」

と訊かれて悩んだ。
悩みながら答えた。

「んーーー」

俺は、鯛が食べたい。

「えー?また鯛……?
鯛のほかに、なんかないの?」

「いや…べつに鯛じゃなくても、
“たい”だったら、なんでも………」

むしろ………

“たい”わん料理……。

台湾料理でも………。

ていうか………!
台湾料理が食べたいっ…!

唖然とする嫁に、

高知には台湾料理屋がない!
だが愛媛にはある!

この機会に是非!
台湾料理を食べようではありませんか!

と力説して到着。

福味香1

『台湾家庭料理
福味香(ふみか)』

エミフル内の書店にあった
雑誌を読んで知った店だ。

まだ夜の早い時間だった。
けれども店内、すでに、ほぼ満席。

わずかに空いていた
カウンター席に腰を下ろし、
メニューを開く。

「あ!天津飯がある!」

私は太古の昔から
天津飯が好きだった。

が、しかしどういうわけか、
最近ますます天津飯が
好きになってきた。

天津飯を被って
寝たいくらいに。

「じゃあ、とりあえず天津飯…」

そう言いそうになった直後。

発見……!

なんじこりゃあ!

その名も……!
フカヒレ天津飯っ…!

天津飯にフカヒレってこと…?
天津飯にフカヒレってこと……?

メニューに記載された
文字列に、釘付け。

いや……!
ダメだ………!

フカヒレを食べる
なんて贅沢っ…!

きっとバチが当たる…!

フカヒレを食べるなんて……!

バチ当たりじゃっ……!

「フカヒレはさすがに、
やりすぎでね………」

フカヒレなんて平民には
縁のない食べ物だ。

そう自分に言い聞かせて、
メニューを見続けた。

「普通の天津飯と……
んー。なんにしよ………」

そのとき嫁がなにか言った。

「食べてもかまんと思うけど」

「え?」

「フカヒレ天津飯にしたいがやろ?」

「そうやけど…でも……」

「ほいたら、
フカヒレにしたらえいやいかー」

なぜか強力にフカヒレを推奨する嫁。
私の心、揺らぐ。

「そ…そうでね…折角やもんね。
折角愛媛に来たがやもんね……」

お会計は俺だけど……!
俺が食べるんだから、まぁいいか…!

折角だ。
奮発しよう、愛媛県。

高知では……!
絶対にしない豪遊……!

バチ当たりな豪遊っ……!

しかしここは……!
高知ではないっ…!!

「いで湯と城と文学のまち。」

松山………!

「松山には、やさしい心と夢
…そして物語がある。」

フカヒレ……!
行ったれぇぇぇ…!

福味香2

『フカヒレ天津飯』

きたっ………!
コイツが上流階級御用達…!

もう………!
本当に………!

福味香3

ごめんなさい。

謝りたくなる……!
凄味っ……!

そっち系のド迫力っ…!

福味香4

こ…これがフカヒレっすか!

餡の中に漂う、
細長くて限りなく透明に近い物体。

それがおそらくフカヒレ。

マロニーじゃないよねっ…!?

フカヒレをスプーンで餡ごとすくい、
玉子とご飯と一緒に食べてみた。

おいひー!

幸せのあまり、表情が崩れる。

がっ…!
しかし…!

なにをやっているんだ俺は…!
フカヒレなんて……
滅多に食べられないんだぞ……!

まずはフカヒレだけを
食べてみろよっ…!

もうひとりの自分が、
もうひとりの自分を叱った。

うどんの出汁の味を
確かめたりはしない。

美味く食べられさえすれば、
そんなことは、
どうでもいいことだからだ。

でも、フカヒレの味は確かめたい。

滅多に食べられないからだ。

高級食材の味を……!
カウンターの片隅でチマチマ味わう!

それこそが庶民……!

気持ちのいい平民
ってもんだろうっ…!

再度スプーンを手に持ち…!
食べる……!

フカヒレだけっ!

そのときの気持ちは、
いまも覚えている。

なんていうか………

天津飯の餡の味がした。

(つづく)
『第8話を読む』

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