うどんを食べに行きたい。だが、特にコレ言って行きたい店がない場合、そんな場合、よくこの結論に達す。
「あぁっ・・・もうたも屋でええかっ・・・!」
そう言うと聞こえは悪いけれど、それは『たも屋』が"それだけ気軽に食べに行けるうどん屋さん"ということの裏返しなのである。
<そういや、最近『たも屋』!新メニューをドシドシ投入しているらしいじゃねぇか・・・!>
投入されている新メニューをインターネットで調べていると、あるメニューに目が留まる。
<しっぽくうどん!これも新メニューか!?そういうのは食べたことがない!冬季限定…しかも高知ではインター店でしか食べられねぇとある・・・!>
限定に輪をかけての限定・・・!
コイツはレア!レア度満点・・・!
そして・・・!
よくよく考えてみれば・・・!
いつも俺は南国専用機・・・!
<ちょうど良い機会だ。この機会にインター店と、しっぽく!俺の知らないたも屋を存分に体感してこようぞ・・・!>
『手打ちうどん たも屋 高知インター店』
入店した竜一、初のインター店の構造に、戸惑う。
<おいっ・・・これドコで注文すりゃいいんだ・・・!>
常日頃、南国店ばかり行くせいで、南国店とはまったく違うインター店の構造に、戸惑う。
<入って左側に広大なスペース!右側にも若干のスペース!どっちに行けばいい・・・俺は一体どっちに行けばいいんだ・・・!>
南国店には右側に・・・!
スペースなんてないのにっ・・・!!
そのとき。右斜め前に設置されたカウンターの向こう側から、白い服を着た男性店員さん(推定年齢30代半ば)が呼ぶ。
「いらっしゃいませ!ご注文どうぞぉー・・・!」
ククク・・・!
謎はすべて解けた・・・!
<注文受付係はあの人だ!あそこであの人に注文すればいいんだ・・・!>
歩み寄る、竜一。
カウンターの脇に、しっぽくうどんのカラー写真入りメニューがシッカリと貼られているのを確認。
のち、満を持して、注文。
「しっぽくうどん・・・特大でっ・・・!」
瞬間、眉毛をハの字にして、クイズミリオネアで、「ざんねーん!」と言う時の"みのもんた"みたいな表情をする店員さん。
「すいませぇん!しっぽくうどんは土日限定なんですよぉ・・・!」
えええっ・・・!!
<なんだよそれっ!てことは、しっぽくは高知のたも屋ではインター店限定で、なおかつ冬季限定で、しかも土日限定というわけかよ・・・!>
コイツはレアどころじゃねぇ・・・!
激レア・・・!
激レアうどん・・・!
ないものはない!仕方がない!たまたま平日に来てしまった!それがそもそもの不運!逆に偶然土日に来てラッキー、そういう可能性だって往々にしてありえた・・・!
これはちょっとした運否天賦・・・!
勝負は紙一重だった・・・!!
釘を拾って車のタイヤがパンクすることもあれば、釘を踏ん付けても、運次第じゃ釘がタイヤに刺さらないことだってある・・・!
しっぽくアウトでインター店に来た意味は消し飛んだが、なぁに…大した問題じゃないさ!俺にはもうひとつ食べたい新メニューがあるっ・・・!!
「じ、じゃあ!釜バターの大で・・・!」
しっぽくが出来ないと分かるや否や、もうひとつの新メニュー「釜バター」にすぐさま切り替えた竜一。
だが、またしても店員さんの表情。「ざんねーん!」バージョンの"みのもんた"。
「すいませぇーん。釜バターは、今から麺を湯掻かないといけないので、お時間10分少々かかりますけど・・・!」
感じた。
"当然、他のメニューにするよね?10分も待てないよね?"という空気。
竜一はそれを跳ね返す・・・!
<何を言っているんだ……。10分、それがどうした・・・>
俺は釜バターを譲らない・・・!
「いいですっ・・・!」
「えっ!10分少々かかりますが、構いませんか・・・!?」
「はい・・・!」
頑なにこだわった釜バターチョイス。
竜一、番号札を持たされ、カウンター席に座って待つこと数分。
器に割り入れられた生卵と、容器に入ったブラックペッパーが先に運ばれてきた。
<おおぉっ!このパターンは初めてだ。うどんを待っていて生卵と胡椒が先に来ちゃうこのパターンは前代未聞!盆の隅に飛車・角・鎮座かっ!このあとどう来る、たも屋・・・!>
先攻めに煽られ、否が応にも高まる期待、心拍数。
その時・・・!
「釜バターでお待ちのお客様ぁー・・・!」
きたっ・・・!
是が非でも譲れなかった俺の渾身の勝負手・・・!
『釜バター(大)』
(フューチャリング・ゲソ天)
竜一の基本は、何処の店でも3玉。たも屋で云わば、"特大"と呼称される量。
しかし、今回対戦する『釜バター』には、小や大はあるものの、"特大"の表記がなかったために、オーダーは、"大(2玉)"。
さらにレジ前にて先払いの会計時、『釜玉用出汁』か『出汁醤油』をかけてくれと言われ、
その局面、竜一は『出汁醤油』を選択。
生卵上に適量を垂らしたが、このシステムは釜玉を注文したときと同じ問題を抱える。
味見が出来る状況ではないため、かけ具合の調節が目分量でしか出来ず、かけ過ぎると終わり。
足りなくて、あとから追いがけしようとすれば、追いがけする都度、もう一度はるばるレジ前まで行く必要があり、客側としては…かなり厄介なのだ。
<もっとも俺は…薄めにかけておいて、追いがけは卓上の醤油で行うという攻略法を編み出してはいるがね・・・!>
無論、その攻略法、釜玉用出汁だの出汁醤油だの普通の醤油だの、こだわらない竜一みたいな人は使えるが……、「オイラは絶対釜玉用の出汁しかかけねぇんだ!てやんでぃ!」といったコダワリ派の人は使えない。
テーブルに辿り着いた頃には、バター、すでにトロトロ。
麺線が、とても綺麗で、綺麗で、綺麗で・・・。
会計を終えてから薬味を乗せる際、果たしてこの"完美"の上に薬味を乗せて良いものかと迷うほどだった。
<ふぁぁ!釜揚げ麺独特の小麦の香りとバターの香りが入り混じって、ブワンブワン来るっ・・・!>
生卵を流し入れたのち、ブラックペッパーを投入しようとした竜一に、異変起きる。
出ないっ・・・!
ブラックペッパーが出ないっ・・・!
開け方が分からないっ・・・!
冗談なんかじゃねぇ!本気で分かんねぇんだっ・・・!
ダメっ・・・ダメっ・・・俺はまるでダメっ・・・!三十路を迎えた今日・・・俺はブラックペッパー出すこと・・・!
タダそれだけのことが出来ねぇっ・・・!
瞬間、竜一の脳天を突き抜ける、ある種の疑念。
おいっ!ちょっと待てっ!これはもしかして!とどのつまり・・・!
胡椒が故障している・・・!
その可能性も・・・決してゼロではない・・・!
いやしかし・・・!
さすがにソレは・・・!
試行錯誤して、なんとか胡椒を出そうとする竜一。
あれっ・・・!?
いま一瞬たしかに・・・胡椒が出たような・・・!
いま・・・間違いなく・・・たしかに胡椒が丼上にこぼれ落ちたぜ・・・!?
<ぐはっ・・・コイツは故障なんかしちゃいねぇ・・・!
ただ俺がコイツのことを解ってあげられてねぇだけっ・・・!>
さらに重ねる試行錯誤。
いろいろやってみる。
そして、ついに見付けた。
胡椒を出す方法・・・!
<右回りだ・・・!
蓋を時計回りに回せば・・・コイツ・・・出やがるっ・・・!>
ガリッ・・・!
ガリガリガリッ・・・!
出てきたっ・・・!
大量に・・・止め処もなく出てきた・・・!
正解は・・・時計回り・・・!
胡椒のフタが想定よりも数段階上をいく固さで、悪戦苦闘して完成した『釜バター』
<小麦とバターの香りに、卵とブラックペッパーの香り加わって!芳醇っ・・・!>
その香りが、表面モチモチ!中シコシコ!たも屋の釜揚げ麺らしい食感に共鳴・・・!
想像通りの味ではあるが、裏を返せば…構えた所にシッカリと球威のあるボールが投げ込まれたみたいな!当初から期待していた通りの攻めの感覚っ・・・!
バターの量も多すぎず少なすぎず絶妙で・・・!
拓く・・・拓く・・・!
切り拓いて魅せる・・・!
たも屋の新世界っ!
<人によって好みが分かれる!そういう雰囲気は間違いなくあるけれど、俺は嫌いじゃねぇよ・・・!>
必死で出したブラックペッパーかかりし新メニュー「釜バター」を食べながら思い出す。
当時、春野にしかなかった『たも屋』に初めて行って、『かけ』の麺を湯せんするのに四苦八苦したことを。
<麺の温め方から、胡椒の出し方まで!勉強になります!たも屋さん・・・!!>
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◆ 手打ちうどん たも屋 高知インター店
(高知県高知市杉井流10-1)
営業時間/8時~15時
定休日/無
営業形態/セルフ
駐車場/有
(釜バター大530円、ゲソ天100円)
『たも屋高知インター店』の場所はココ・・・!