「ケムリ」さんから「bar ラストチャンス」へ行った夜。
途中からかなり楽しくなってしまって、
ハイテンションでマキさんやラストチャンスの皆さんに別れを告げたあと、
私はまた両手を広げてクルクル回りながら夜の繁華街を歩いていた。
最近、酔うと飛びたくなる。
三連休最終日。
すでに日付けも変わってしまって、人通りはさらに少なくなっていた。
<お腹・・・空いた・・・!>
私は酒を飲んでいる最中に、あまり食べれない。
だから飲み終えたあとは、大抵お腹が空いている。
例の"うどん・ロボット屋台"に行ったけれど、
祝日ということもあってか居なかったので、グリーンロードの屋台街へ。
それこそ祝日のせいか、
屋台の数自体が普段より少なかった。
だがその分、どの屋台も混んでいた。
満席の屋台。
酔った金髪ギャルメイクのオネエチャン集団が大声で叫び散らしている屋台を避けて、
落ち着けそうな屋台の軽少な椅子に腰を下ろした。
『屋台処 じゅんちゃん』
空間、広い。
湯気が上がる寸胴の前で麺を湯掻きながら、関西弁で喋るオバチャン。
どうやらそのオバチャンが店主らしい。
もう一人のオバチャンが、出来上がったラーメンを運んでいる。
関西弁のオバチャン。
「せやせやぁー!」「明日雨降るんかいなー!」
テンション高い。
私が知っている誰かとダブる。
いまに、「○○なのにゃ!」・・・あるいは、
「にゃり~ん♪」なんて言い始めないかとドキドキした。
言い始めたら、
「ご姉妹・・・なのですか・・・?」
と訊いてみる所存だった。
『とんこつラーメン』
出来上がった、とんこつラーメン。
屋台らしからぬ、凝った盛り付け。美しい。
ヨダレを飲み込んでいると、関西弁のオバチャンが言う。
「待たせたさかい・・・!
ウィンナー、オマケしといたから・・・!」
<えぇっ・・・ウィンナー・・・!?>
言われた瞬間、意味がわからなかった。
<オマケのウィンナー・・・!?
ウィンナーなんて無いじゃん・・・!>
私は酔っていて、
耳がおかしくなっているのかな、
なんて思った。
まぁ、酔ったらいろいろあるよ、
と気にせずラーメンを食べようとしていると・・・。
てぇっ・・・!
<おいっ・・・!
ラーメンの中にウィンナー・・・ドボンしてるっ・・・!>
これにはかなり驚いた。
なるほど、こういうことか、と。
<家で食べるインスタントラーメンにウィンナーを入れる・・・!
それはたしかに、かつて俺も一時期やっていたことがある・・・!
でもお店で食べるラーメンで・・・こういう攻められ方をしたのは初めてだ・・・!>
なんだか知らないけれど「すごいっ・・・!」と思った。面白かった。
クリーム色の泉を箸で探って、
麺を持ち上げれば・・・。
はいっ!
絶景っ・・・!
『おでん』
ダイコンと、コンニャク。
食べ易いように切ってくれて、
さらに上にネギを盛ってくれている。
こんなことをしてくれる屋台、なかなか無い。
ホクホクのダイコンのおでんを噛み締めながら、
オバチャンの軽快な話と細かい心遣いに、私の心もホクホクしていた。