「そんなメニューがあったなんて・・・!」
知らなかった。僕は知らなかった。"釜バターバジル"なんて知らなかった。
おおよそ、どんなものなのかは想像が付くけれど、まだ出会ったことがない未見のメニュー"釜バターバジル"
それを追いかけて、僕は高知市の「てづくりうどん・麦笑」にやってきた。
相変わらず、店のお兄さんとお姉さんは、明るく優しい。
「冷やかけって、もうありますか?」
と僕はお兄さんに訊いた。
「えぇ、ありますよ!」
とお兄さんは言う。
「じゃあ、冷やかけ2玉で・・・!」
いったい僕はどうしてしまったのだろう。
釜バターバジルを注文する予定だったのに、"冷やかけ"を注文してしまった。
「もうすぐ揚がりますのでね!」
お兄さんはそう言って微笑む。ほむほむと僕は思う。
<湯掻きたてがくるお・・・!>
そのままセルフレーンの前に立って少し待つあいだに、目の前に並べられた天ぷら類の中から、"レンコン天"を皿に取る。
そして先に会計。お姉さんはレンコンのことを「レンコンさん」と可愛らしく言う。僕は萌えた。
イリコが強く香る、冷やかけ出汁。
麺はキューッン!と引き締まっている。
そしてその麺の表面には、以前よりも格段に多くの細かな凹凸が見える。
食べ終えて、箸を器の中に置く。
いったいどういうわけだろう。レンコンを入れていた皿のほうにも箸が1膳、置かれている。
いつの間にか、僕は卓上の箸立てから、箸を2膳も取っていたのだろうか。
記憶にない。どうして2膳も取ってしまったのだろう。僕にはわからない。何も思い出せない。
大体・・・元々・・・「釜バターバジル」目当てだったはずなのに、どうして「冷やかけ」を食べているのだろう。僕にはわからない。
きっと突然、冷やかけが食べたくなったのかもしれない。わからない。僕は僕がわからない。
わからないことをたくさん抱えながら、僕は蚊の羽音ほどの、とても小さな声で呟く。
「圧倒的・・・イリコ・・・」
◆ てづくりうどん 麦笑
(高知県高知市本町2丁目2-4)
営業時間/11時~15時
定休日/不定休(月2回程度)
営業形態/セルフ
駐車場/無
(しょうゆ2玉400円、かけ2玉380円、[1玉の場合は100円安くなる]
釜バター、ちく天100円、アジフライ80円など)
『麦笑』の場所はココ・・・!