『第17話を読む』
2日目の宿『湯苑』には、2カ所ある大浴場の他に「貸切り露天風呂」があるというので、入ってみることにした。
露天風呂を貸し切れるのは、50分間。
最初の25分間をオバ=アとオカン。残りの25分間をオビ=ワンと私が使う。
露天風呂の待ち時間に、生まれて始めての足岩盤浴!
足が…あったけぇ…!
足を温めながらボケーっとしていると、オバ=アとオカンが風呂から出てきた。
ロビーの片隅で、伊豆関連のよくわからない冊子を読んでいたオビ=ワンを呼び寄せ、風呂へ向かう。
『貸切り露天風呂』
露天風呂の周りを囲う竹柵の向こう側、すぐそばに海。波の音が「ザッパーン!」と聴こえてくる。
「ちっくと…ぬるいねゃ…!」
とオビ=ワンは湯加減の感想を述べた。
「んー」
私は曖昧な返事をした。「ぬるいっちゃぬるい」
風呂から上がると部屋に戻り、しばらくグダグダした。それから晩ごはん。
うっひょー!
ビール!うっひょー!
飲みまくる高知県民。
他の宿泊客たちと同じ空間で食べる方式だったのだが、我々だけ酒の注文の仕方がおかしかった。
オビ=ワンとオカンは日本酒を飲み、私は焼酎をロックで飲んだ。お代わりもした。しまくった。
しかし途中でオカンが「ここは旅館だ!飲み屋じゃない!他にこんなに飲みゆう人おらんやいか!恥ずかしい!」みたいなことを言い始め、シブシブ飲むのをやめた。
だが、そのときオカンの顔は真っ赤だった。
もちろん恥ずかしさで真っ赤なのではない。ただアルコールの作用で血行が良くなっているだけだ。
後半、大きな金目鯛の煮付けが出てきた。
「すごいね!これ…!」
無邪気に歓声を挙げる私を蔑むようにオカンが言った。
「えー?竜一…金目鯛…初めて見るが?」
「いや…あるけど…」
マジレスされたことに私が動揺していると、さらにオビ=ワンが言った。
「金目鯛は室戸の海でも漁れらぁよ…!なんちゃあ静岡まで来いだち食べれる!」
「いやいやいや…そんなこと言うたら身も蓋もないやいか…!」
一連のやり取りを聞いていたオバ=アが「ヒャッヒャ」と笑った。
それから部屋に戻って、また飲んだ。
「あれらぁ、まだやりゆう!」
焼酎を煽る私とオビ=ワンを見て、オバ=アが言う。
見知らぬ地で飲む酒は旨い。
どこで飲んでも旨いのだけれど、また一段と旨い。
(第19話に続く!)