早めに来て良かった・・・。
お昼時になると、
行列が出来てしまうこのごろの『まるしん』も、
開店直後の時間帯だと、さすがに空いていた。
開けると、いつものように「キュッキュ!」と鳴る入り口のドア。
段々と年季が入ってきた店内。
いつ来ても余裕で座れた当時を知っていて、
その頃から密かに応援していた"隠れまるしんファン"としては、
気軽に来られなくなってしまったけれど、
近年のブレイクは本当に嬉しいことだったりする。
さて、そんなまるしんで、
今回頂くのは、コチラっ・・・!
圧倒的・・・かきあげ・・・!
『かきあげぶっかけ(特盛)』
昨年、12月。
半年ぶりに再会した"それ"は、
相変わらず、重厚で美しいデザインをしていた。
あらっ☆
蓋がぁ~まるでぇ~★
かきあげみたぁ~い♪
乙女のように、はしゃぐ竜一。
だが、その時。
言った側から、とてつもない違和感、襲う。
いや・・・待て・・・!
これは・・・!
まるでかきあげ・・・と言うより・・・!
かきあげそのものっ・・・!
蓋が、かきあげみたいなんじゃない・・・!
かきあげが蓋なんじゃねぇのかっ・・・!
こうすればたしかに・・・!
麺の冷気が外に逃げない・・・!
そして何より・・・埃避けには打って付け・・・!
こんな画期的なシステム・・・!
NASAでも思い付かねぇ・・・!
その時になって、
私は初めて気が付いた。
まるしん。
実は最先端のテクノロジーをも超越していたのである。
そのかきあげ。
漬物石のように重く、
麺を持ち上げただけで腕が痛い。
最初は楽に食べ進めていた竜一。
しかし、徐々に変わって行く顔色。
食べても食べても減らねぇ・・・!
麺が湧いてきてんじゃねぇのか・・・!
まるで・・・!
広い海原を漂っているかのようだった。
泳いでも・・・泳いでも・・・
岸が見えてこない・・・。
泳いでも・・・泳いでも・・・
見えるのは水平線だけ・・・。
息継ぎをするように、
あえて混ぜていなかったワサビを、
少量ずつそのまま口に放り込み、
食べ飽きてきた脳をリセットする。
しかし・・・苦しい・・・。
岸に辿り着く前に、
溺れてしまいそうだ・・・!
このまるしん・・・!
かきあげの海でっ・・・!
ああ・・・こうなることは、
注文した時から分かっていたさ・・・!
だが・・・俺はあえて特盛にした・・・!
逃げたくなかったんだっ・・・!
俺はいつもいつも逃げてきた・・・!
この難攻不落の要塞から・・・!
特盛の・・・かきあげぶっかけから・・・!
だけど、もう解ったんだよ・・・!
かきあげは逃げない・・・!
逃げているのは・・・!
自分自身だったんだっ・・・!
今だって、口の中は油でベトベト・・・!
喉の入り口では麺が大渋滞・・・!
僅かでも入れると、逆流・・・!
その危険さえもある・・・!
だが・・・もう今更・・・!
戻ることなんか出来るかっ・・・!
人生にバックギアなんてねぇんだよっ・・・!
押し込むんだっ・・・!
胃袋の奥底までっ・・・!
竜一は、必死だった。
今までの自分と決別する為に、
かきあげぶっかけと必死で戦っていた。
継続は力なり。
戦い続けるということは、
食べ続けるということ。
食べ続けた竜一は、ついに打ち勝つのだった。
圧倒的・・・完食・・・!
ひばり食堂より辛かった・・・。
『しょうゆ・温(大盛)』
『揚げ餅』
「ふぅ・・・ふぅ・・・ふぅ・・・」
食べ終えて会計。
マラソンをした後のような荒い息を吐く竜一とは対照的に、
店主は至って冷静な表情でレジを打つ。
ドアを「キュッキュ!」と鳴らして外に出ると、
ヒンヤリと冷たい師走の空気が肌に突き刺さり、
食べ過ぎて火照った体が、冷水で締めたうどんみたいに、
キン!と冷やされて引き締まるのだった。
◆ 手打ちうどん まるしん
営業時間/10時30分~19時
定休日/月曜日
営業形態/一般店
駐車場/8台
(かきあげぶっかけ500円、スペシャルぶっかけ650円、しょうゆ380円、かけ350円、
温玉ぶっかけ480円、揚げ餅100円、中盛50円増、大盛100円増、特盛200円増など)
『手打ちうどんまるしん』の場所はココ!