前編はコチラっ・・・!
『ビストロ セルフィーユ 前編/まさかの洋食』
「何名様ですか・・・?」
問う女性店員さん。
「34万名だ・・・!」
タバコを吸わない事を告げて、
光が射し込む明るい禁煙席に座る。
「いやぁ・・・圧倒的・・・射光・・・!」
などと呟いていると、先程の女性店員さんが、
水とおしぼりを手に「サッ」と歩み寄って来た。
「ご注文はのちほどでよろしいでしょうか・・・?」
「あ・・・あ・・・いや・・・この・・・!
ほ・・・ほほ・・・ほっとこうちのやつで・・・!」
オシャレな雰囲気の店内では、貴婦人風マダムや、
絶頂期を迎えたカップルたちが優雅に食事を楽しんでいて、
通常、場末のうどん屋を主戦場にしている私は、少しの場違い感を感じた。
なにやら手間の掛かりそうな料理だったから、
もっと待たされるのかと思いきや、
足早に畳み掛けるセルフィーユ・・・!
『カボチャの冷製スープ & サラダ』
「アサリスープ」「コーンスープ」「カボチャの冷製スープ」
の中から選択できると言うから、冷静に、冷製スープを指名した。
どうやら、『冷製スープ』とは、
うどんで言うところの、『ひやかけ』のようである。
いざ、その冷製スープを冷静な表情で飲む。
「ズっ・・・ズズズっ・・・!」
ぐはぁっ・・・!
<カボチャ・・・カボチャ・・・きたぁっ・・・!
きたぁっ・・・カボチャぁぁぁ・・・!
突き抜けるぅぅぅぅぅ・・・!>
脳天突き抜けるカボチャ・・・!
圧倒的っ・・・!
クリーミー・・・!
<サラダに入っているレタス・・・甘ぁぁぁい・・・!
肥料が・・・!効いてるぅぅぅ・・・!>
程なくして現れる・・・!
メインディッシュ・・・!
『Aランチ』
(1150円 → ランチパス提示で500円、11時~14時30分、期間中2回使用可能)
こ れ が 5 0 0 円 ・・・!
県民・・・歓喜・・・!
感無量・・・!
<もう・・・!言葉に出来ねぇ・・・!
もう・・・なんて言っていいのか・・・!
とりあえず・・・!この魚うめぇ・・・!>
洋食=高い・・・!
そんな固定観念を根底から覆す・・・!
圧倒的っ・・・!
コストパフォーマンス・・・!
<高くて美味いは当たり前・・・!
安くて美味い・・・!
これを・・・非凡なるバランスで実現しているっ・・・!>
お飲み物まで付いてるし・・・!
優雅にアイスコーヒーを飲んでいると、
ふいに、何か大事なものを忘れているような気がした。
しかし、それは気のせいだろうと思った。
そして、そのままエレガントな午後のひと時を満喫していた。
が・・・!
気のせいだろうと思ったそれは、
気のせいでは無いと気が付いた時。
血の気が引いた。
<あかーん・・・!あかーん・・・!
あかーん・・・俺・・・!>
財布忘れたかも・・・!
<これは・・・不味い・・・料理は美味しかったけど・・・不味い・・・!
これは不味いことになりましたよぉぉぉ・・・!>
思えば思うほど、さらに血の気が引いて行き、倒れそうになってきた。
人生初の『食い逃げ』の瞬間が目前に差し迫る中、脳裏を過ぎった標語。
オカネ・・・ナイ・・・!
ダメ・・・ゼッタイ・・・!
<しかし・・・まだ一縷の望みはある・・・!
車に財布を忘れていた・・・!そのパターン・・・!
糸はまだ切れちゃいねぇ・・・!>
私は一旦店を出ると、
駐車場に停めてある車を足早に目指した。
<あってくれ・・・!あってくれ・・・!
一世一代・・・!最後の希望・・・!>
希望の財布・・・!
<これが無かったら・・・!
四方も八方も塞がり切って・・・終い・・・!>
たぐり寄せろ・・・!
光の糸をっ・・・!
「ガチャッ・・・!」
運転席のドアを開けた。
シートの上に横たわる薄汚い二つ折りの財布。
見慣れたそれを手に取ると、
私は頬を擦り付けて歓喜した。
「あったぁぁぁあ嗚呼・・・!」
<もう少しで閉まり切りそうだった運命の扉を・・・!
最終最後・・・土壇場で・・・!コジ開けたっ・・・!>
頬を伝う大粒の涙。
<やったぁ・・・やったぁ・・・俺はやり遂げたんだ・・・!
このセルフィーユでお金を払って・・・真っ当に退場する・・・!
そういう何気ない行為を・・・定石どおり・・・やり遂げたんだっ・・・!>
もう一度、店に入って、
何食わぬ顔で支払いを済ませて、また外に出た。
新鮮なシャバの空気を肺一杯に吸い込む。
「クク・・・最後に勝手に一悶着やっちまったが・・・!
俺は・・・!ここに来て初めて知ったぜ・・・!
世の中には・・・うどん以外にも美味しいものがあるのだと・・・!」
来た時にはドンヨリと空を覆っていた雲は徐々に散り、
狭間から、強烈な夏の光が射し込み始める。
「美味しい物は、人を笑顔にする」
その根底が、『ビストロ・セルフィーユ』にはシッカリと根付いている気がした。
◆ ビストロ セルフィーユ(南国市前浜)
営業時間/8時~21時
定休日/無
駐車場/有
『ビストロセルフィーユ』の場所はココっ・・・!
お好きな呪文を唱えながら押してください。♪~(´ε` )