行きたくても、なかなか行けない店があった。
その店は、「探す気でいないと通り過ぎてしまう」と聞いた。
それだけ難解な場所にあると言うのだ。
<ククク・・・そういう店ほど面白い・・・!
生姜の収穫前・・・ポッカリと空いた雨の休日・・・!
今こそ行こう・・・!未知なる麺線に夢を見にっ・・・!>
雨の中を一路、北上。
大豊町方面を目指す。
ウォータースクリーンの中を突き抜け、
デカ盛りの聖地、『ひばり食堂』前を通過。
暫く進んで、フッと窓越し、
右横を見て、叫んだ。
「あぁっ・・・!
アレや・・・あった・・・!」
「圧倒的・・・山間部・・・って違うわ・・・!
アレよ・・・!アレ・・・!」
望遠・・・のち・・・!
発見っ・・・!
『釜揚げうどん 遊』
対岸まで・・・ひとっ飛び・・・!
タケコプターでっ・・・!!
パタパター♪
店舗のスグ横には、
清らかに流れる『穴内川(あなないがわ)』
セルフだと聞いてはいたが、
詳細なシステムが解らないため、
若干、ドキドキしながらの入店。
L字型のカウンターの向こう側で、
店主らしき男性が、何か忙しそうに作業をされている。
その上部にうどんの名前を書いたメニューがあったから、
ここで注文をすれば良いのだと、経験を元に解釈して、発声。
「釜玉山かけの大盛と・・・!
かけの・・・大盛・・・!」
「釜玉山かけの大盛と・・・!
かけの大盛ね・・・!」
それだけ言って、店主はまた作業を再開した。
<あ・・・!あれ・・・!
うどんはいつ受け取れば・・・!>
大抵の高知のセルフ店の場合、
釜玉は、茹で上がりのタイミングに恵まれない限りは、数分待ち。
かけは、茹で置き麺を入れて、即渡しである。
だが、この時、店主。
かけを渡して来る気配は無い。
<あれ・・・これ・・・!
俺・・・どうすればいいの・・・!>
店主に聞けば良いものを、聞けない。
<ククククク・・・!
俺のノミの心臓を甘く見ないほうがいい・・・!>
聞く勇気・・・!?
そんなもんがあったら・・・!
何の苦労もしねぇんだよっ・・・!
店内を見渡すと、地元の方だろうか、
幾人かのおばちゃん連中が、談笑しながらお茶をすすっている。
しかし、テーブルの上に、
お茶はあれど、うどんは無い。
瞬間、竜一、理解。
<フフッ・・・!なるほど・・・!
おばちゃん達は・・・みんな待ってんのか・・・うどんの出来上がりを・・・!
それならば・・・俺も勝手に座って待っておけば良さそうだぜ・・・!>
窓から見やる風景。
木々の葉色に、わずかに感じる紅葉の気配。
素敵なのどかさ。
なんとも落ち着ける雰囲気に身を委ねながら、待つこと数分。
「釜玉山かけでお待ちのかたぁ・・・!」
店主の奥様らしき女性に呼ばれた。
「はい・・・!これ釜玉山かけね・・・!」
店主からカウンター越しにうどんを受け取って、
皿に入れて並べられたトッピングを取り、奥様に代金を支払う。
注文から支払いまで、
一連の流れを完了した時、
霧に包まれた『遊』の営業形態がハッキリと明確に見えた。
<要するに・・・この店・・・遊は・・・!
通常のセルフ店とは少し違う・・・!>
「待ち時間ありタイプ」のセルフ店っ・・・!
(※ つまり、注文→待ち→受取→トッピング→支払い、の流れ)
<待ち時間はあるが・・・待たなきゃいけない分・・・!
茹で置きではなく・・・茹で立てを食べられる・・・!>
それがこの営業形態の長所か・・・!?
ただ、私が入店した時間が、
ピークには少し早いと思われる11時半頃だったために、
もしかすると、客が多い時間帯は、
茹で置き麺でやっているという可能性も考えられる。
うどん県・香川にも、
そういう営業の仕方をする店が、よくあるし。
などと・・・御託を抜かしている場合ではなかった・・・!
代金を支払い終わった竜一・・・ハッとする・・・!
<ちょ・・・!
あ・・・!あれ・・・!?>
(怒涛の後編へ続くっ・・・!)
『釜揚げうどん 遊 後編/うどん全部言えるかな』