土佐市には随分と前から大手をかけていた。
土佐市うどん主要5店の内の4店(「中乃家」「黒潮うどん」「よし乃」「一蓮」)を制覇して、残すところあと1店となっていたのだ。*一蓮はその後に閉店されました。
だが、私は元々"新規開拓"にはあまり興味が無く、むしろ気に入った店ばかりに通うタイプで、土佐市制覇なんかしなくてもいいや、と思っていたのだけれど、やはり土佐市制覇はしておかないと、そこに転がっているパズルの最後の1ピースを、はめないまま放置しているみたいでスッキリしない。
だから、なんとかやる気を出して土佐市へ行くことにした。
目指すは、『清瀧(きよたき)』というセルフ店。
それにしても、ここ1年ぐらいのあいだに何度土佐市へ行ったことだろう。
毎回うどんを食べるため、ただそれだけのために行くわけだけれど、あまりにも頻繁に行くせいで、段々と土佐市に住んでいるかのような錯覚さえ起こし始めている。
土佐道路から天王ニュータウンの『ちっ子亭』の前を通って坂を下り、土佐市へ進入。(このルート、たぶん春野経由で行くより早いからオヌヌメ)
いきなり、迷った。
戌年であるから嗅覚が凄まじく、10キロ離れたところからでも出汁の香りを嗅げて、しかも嗅ぎ分けられるから、見知らぬ土地である香川に行ってもカーナビなんか必要なくて、絶対に迷わない私が、迷った。
<この俺が迷った・・・生まれて初めて迷った・・・!
迷ったことなんて・・・無かったのに・・・!>
おそるべし、土佐市。
おそるべし、清瀧。
けれども、原因が窓を閉めていることにあるとすぐさま気が付いて、車の窓を開けた。
すると・・・なんということでしょう・・・!
『清瀧』の出汁の香りが漂ってくるではありませんか・・・!
<香りを得たっ!あきらめろ清瀧!窓を開けた俺からは逃げられんぞっ・・・!>
『さぬきうどん 清瀧』
清瀧の直前はオフロードな様相になっていて、ランドクルーザーで来るべきだったと少し後悔したけれど、愛車のフェラーリF40でも、わりと大丈夫だった。
"こんなところ"と言っては失礼だが、こんなところにうどん屋さんがあったのか!と思うほど、殺風景なこんなところで、ここだけ土佐市じゃなくて清瀧市であるかのような独特の雰囲気を持った、こんなところだった。
曜日は土曜日。時刻は13時半ほど。
「ガラガラ」と戸を引いて入った店内は広く、小さい子を連れた家族連れが多い。
L字型に配されたセルフカウンター。
その向こう側で一心不乱に麺を湯掻く、私と同い年ぐらいの男性の店員さん。
湯気が昇る釜の前にコチラに背を向けて立つその姿は、湯気が白いオーラみたいに見えて、なんだかスーパーサイヤ人みたいだな、と思ったけれど、髪は黒髪だったしツンツンにもなっていなかったから安心した。
カウンター上方に掲げられた写真入のメニュー。
そこに「しょうゆ」があるのを見つけて、注文する。
すると、「はいよー」みたいなことを言い、ソソクサと器に麺を入れ始めた。
<受け答えが慣れている・・・!
明らかに勤続1年以上のベテラン店員さんだ・・・!>
ベテランから渡された白い器には、白い麺が入っただけの状態。
会計を済ませたあと、その上にネギや生姜などの薬味を盛ってゆく。
セルフのうどん屋さんで薬味を盛る作業というのは、
結婚式場で花嫁の着付けをするときの気分に似ている。
もっとも、私は花嫁の着付けなどしたことは無くて、今だってテキトーに言っているだけだけれど、器の中に入ったうどんにとっては、一生で一度の晴れ舞台なのだから、とにかく、「綺麗になぁれ!」という気持ちでやっていることだけは、たしかだ。
『しょうゆ・冷(大) & かき揚げ』
<綺麗だね・・・!>
<やだ!かき揚げさんたら・・・!>
そんな、醤油うどんとかき揚げ・・・いいや、新郎新婦の声さえ聞こえてきそうな、仲むつまじき様相。
<さっきのベテランに祝辞を述べてもらえば良かったかな・・・>
なんて思ったけれど、後の祭り。
ここは私が食べることで、祝辞に代えさせていただくしかない。
私は恐ろしく低い声で呟いた・・・。
<こんにちは・・・!いま俺が食べてあげるからね・・・>
カドをシッカリと魅せる麺は、クニュシコ。
つまり、表面クニュ、中がシコ、である。
セルフ店に多いスタンダード路線の流れを感じるけれど、何処と無く攻め気も感じるような感じないような、でも少し感じる気がするクニュシコっぷりであった。
ただ、醤油をかけようとした際、卓上に置かれた醤油の容器を取ると、容器の周りに、こぼれた醤油がベッタリと付いて酷く汚れていて、「やや!」と思った。
けれども、小さい子がやたらと多い店内を鑑みて、まぁセルフ店でもあるし、仕方が無いのか・・・とも思った。
そして、かき揚げである。
うどんを食べながらかき揚げをよくよく見てみると、やたらと大きいではないか。
トッピングコーナーにて、トングで挟んで取った際には大して気にならなかったのに、今になって見直してみると、やたらと大きいのだ。
あまりにも大きいから、物は試しとうどんの上に乗せてみた。すると・・・。
<おやおや・・・!
麺が隠れたじゃないか・・・!>
たとえば、「かけうどん」を注文した場合、麺の上にこのかき揚げを乗せると、蓋の代わりになって、かけ出汁の温度を良い具合に保てるのではないだろうか。
そして麺も出汁もかき揚げも、一緒くたにガブガブと貪り食うと、きっと至福の時を過ごせるし、なにせワイルドだ。
時刻は14時が近付いているというのに、次から次へと人が来る清瀧。
なぜだか小さな子を連れた家族連ればかり。
その理由は、"値段の安さ"と、広さに起因する"入り易さ"だろうか。
子供たちの声が響く賑やかな店内で食べる、うどん。
麺の「クニュ」と同時にネギの「シャキ!」と生姜の「ピリッ!」
それらを大根おろしがフンワリと包んで、醤油と共に広がってみせた。
◆ さぬきうどん 清瀧
(高知県土佐市高岡町乙2089-1)
営業時間/10時30分~15時
定休日/水曜日
営業形態/セルフ
駐車場/有
(しょうゆ大350円、かけ大300円など)
『さぬきうどん清瀧』の場所はココっ・・・!
2018年に再訪!