うどん処 大名庵 後編/大名うどん

2012.05.30

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うどん処 大名庵 後編/大名うどん

2012.05.30

『前編を読む』


テーブルの配置がどうであったか、
ほとんど忘れていた大名庵の店内の壁に沿って設けられたカウンター席に、
私は一人でポツンと座ってメニューを眺める。

目当てのシャモ肉が入ったうどんは、「大名シャモ鍋うどん」という名だと、
事前にネットで調べて知っていて、合致するメニュー名を探したが、そのようなものは無かった。

念のため、店内の壁を360度すべて見渡して、
「大名シャモ鍋うどん」に関する張り紙が無いかも確認したが、やはり無い。

かなりの欲求を持ってして、それを食べに来たわけだから、
この局面をどうしたものかと、少し混乱しかけた。

しかしながら、下調べと現実が違うのは、
ネット情報に頼っていると、よくあることだし、
うどん屋に通っていると、よくあることでもある。

落ち着いて、もう一度メニューを見てみると、
「大名うどん」という品が、自分が調べて記憶している値段よりも
数十円だが高い値で記載されているように思えた。

シャモ肉は高価だと聞く。

もしも私の記憶と調べに間違いが無くて、
たしかに数十円の値上げをしているのだとしたら、
値上げ分は、シャモ肉分なのではないか。

つまり、「大名シャモ鍋うどん」を無くした代わりに、
シャモ肉を「大名うどん」に盛ったのではないか、
南国市関連で推しに推しているシャモ肉を使用したうどんを、そう簡単にやめられるわけがない!

という推察に辿り着いたのだった。

そして近くの厨房にいる店のお姉さんを、得意の超音波によって呼び寄せ、
「大名うどん」を・・・"特盛"の記載は無かったので、"大盛"で発注した。

その際に少し思いはした。

<直接お姉さんに聞けば、"大名シャモ鍋うどん"に関する
一連の私の混乱がすべて解決するかもしれないし、
"大名うどん"にシャモ肉が使われているか否かもわかるだろう>

だが、事情をすべて把握したのちに安心してうどんの出来上がりを待つ、
それでは、ガーターの溝が塞がれたボウリングみたいで、何も面白くない。

たとえ私の見当違いで、勝負賭けの「大名うどん」の湖面にシャモが居なくても、
それはそれで良いのだ。

人生はなかなか思い通りに行かないものだし、
思い通りに行かないこと自体が楽しいのだし、シャモではなく"シャケ"でも乗っていたら、
それはそれで「圧倒的!サーモン!」でハッピーではないか。

うどんの出来上がりを暫く待っていると、
背中側から女性のお客さんが笑いながら話す声が聞こえてくる。

「食べても食べても全然減らない・・・!」

私は、すでにそれを「大盛」で発注していたがために、
私より一足先に、いま現在現実にうどんと対峙している彼女の発言に、少し慌てた。

<大名庵のうどんってそんなに多かったか・・・!>

けれども、今更「大盛」をキャンセルをするわけにはいかないし、
闘わねばならない、大盛の大名と。

<来いっ・・・うどん大名行列・・・!>

うどん処大名庵 大名うどん(大盛)

『大名うどん(大盛)』

お姉さんが私の前に置き去った"大名"。

モクモクと立ち込める湯気の向こう側に見える麺上には、
ニンジンやダイコン、ゴボウなどの根菜が乗り、
何処と無く「しっぽくうどん」を彷彿させる様相である。

大名庵独特の細麺。

強烈なコシで勝負するタイプではなく、
いわゆる"軟弱ゴシ"の系統であると感じる、食べ易さ重視型。

この麺はチマチマ食べるよりも、一気に荒々しくカッ喰らったほうが旨いことを、
茹で麺をスーパーで買っていた経験から知っていたので、
この局面でも、たくさんの麺を箸で掴んで口の中に放り込んだ。

<おぉぉぉぉ・・・ブルルルルルル・・・!>

茹で立てで麺の鮮度が良いことと、
素人でしかない私と、プロの湯掻くウデの違いもあるのだろうか。

スーパーで売られていたものよりも、
プリプリ感があり、幾分に上を行く弾力。

うどん処大名庵 大名うどん(大盛) アップ

そして注目の肉。

ガシガシと力強い歯応えがある。

これがシャモ肉であるのかどうか、
今までにシャモ肉を食べたことが無いので、なんとも判別できないけれど、
少なくとも、まったく食べたことが無いような食感の肉である。

だからもう例えこれがシャモ肉じゃなかったとしても、
シャモ肉だということにしておきたいし、

肉が発するオーラで、おそらくはシャモ肉だろうと、なんとなくわかる、わかるのだ。

それにしても"シャモ"だと思って食べてみると、
「ガシガシ」と感じていた食感が、「シャモシャモ」に思えてくるから不思議だ。

「食べても食べても全然減らない」と言っていた女性と連れの男性が帰り、
外はドシャ降りで、昼時にもまだ少し早かった大名庵の店内には私だけ。

BGMはない無音の空間に、
食器を洗う音と、私がうどんを食べる音だけが響く。

出汁が優しい。
飲むと胃へフワリと着地する。

細麺はそれを邪魔せず、
麺と出汁が別々ではなく一体化していて、
同時に絡み合って攻撃してくる。

そして肉を食べると、また「シャモシャモ」

これが私の初シャモ体験だったのか。

それが私にもわからないのだけれど、
もしも「シャモを食べたことがあるか」と聞かれることがあったら、
「食べたかもしれない・・・!」とだけは、自信を持って答えられそうだ。

うどん処 大名庵

◆ うどん処 大名庵
(高知県南国市大乙1038−1)
営業時間/11時~14時30分
定休日/不定休
営業形態/一般店
駐車場/8台

『うどん処大名庵』の場所はココ・・・!