数年ぶりの再会だと思うと、すっかり興奮して鼻息荒くイレ込んで、
開店10分前に「麦庵」に到達してしまった私が、
時間つぶしを兼ねて、"三里方面"で偵察していたのは、もちろん、うどん屋さんだった。
あとから調べてみると、そこは"三里"ではなく、
「麦庵」があるのと同じ"仁井田"という地名で、
その"うどん屋さん"も、正確には"うどん屋さん"ではなく、"喫茶店"である。
とにもかくにも、「麦庵」で"肉ぶっかけ"を食べおおした私は、
早速、偵察しておいた、喫茶店みたいなうどん屋さんみたいな喫茶店へと走った。
「麦庵」から車で5分足らずで到着。
その喫茶店みたいなうどん屋さんみたいな喫茶店、
「シーランド」を味わうのも、4年ぶりか、5年ぶりか、
思い出せないほど久し振りだった。
喫茶店の"売り"が"うどん"であるということは、少なくとも、"よくあること"ではないので、
内心、今もうどんが提供されているのか不安を覚えたのだけれど、
敷地の一角に、「うどん」と大きく書かれた看板が掲示されていたことで、安心した。
黒い自動ドアを潜って中に入ると、
クッキリと陰影のある顔立ちをした色白の婦人が出迎えてくれる。
年季の入った赤いソファーに腰を下ろすと、
先程の婦人がメニュー表を持ってきてくれた。
メニュー表は、二つ。
コーヒーやサンドイッチなど、
通常の喫茶店によくあるものが並んだメニュー表とは別に、もう一つ。
うどんばかりが記載されたメニュー表が添えられている。
私は片方のメニュー表には目もくれず、
うどんばかりが記載されたメニュー表を食い入るように見た。
喫茶店とはいえ、「かけ」や「ざる」の他に、
「カレーうどん」もあれば、「ぶっかけうどん」だってある。
中でも目を引いたのは「からあげうどん」というもの。
喫茶店の唐揚げ・・・なんだか良さそうな気がするではないか。
"揚げたての衣の中から溢れ出す肉汁"
それを想像し始めたら、肉汁よりも先に私のヨダレが溢れ始めて、
ヨダレを拭いながら、婦人に注文した。
遥か後方にある厨房のほうから、
「からあげ定食じゃなくて、からあげうどんね」と、
婦人に注文を聞き返す、調理担当だと思われるオバチャンの声が聞こえてくる。
もしかすると、「からあげうどん」を注文する客は珍しいのかもしれないな、と思った。
「からあげうどん」と「からあげ定食」で、どちらにするか迷ったら、
値段もおそらく大差ないだろうし、大抵の人が「からあげ定食」を選ぶだろう。
私も"うどん依存症"になってさえいなければ、
あるいは、「からあげ定食」を選んでいたかもしれない。
考察を巡らせていると、
婦人がテクテクと歩み寄ってきて、ニッコリと微笑みながら言う。
「はい、かきあげうどんね!」
<おおっ・・・!か・・・かきあげ・・・
それにしても、"からあげ"みたいな"かきあげ"だな・・・>
婦人は、自身が置いた目の前のものを見て、
一瞬、ハッとした表情をして顔を赤らめながら言い直した。
「あっ!からあげうどんですね!」
思わず私も「そうですねぇ!」と笑いながら同調した。
「かきあげうどん」と間違われながら、
微笑ましく登場した、待望の「からあげうどん」
比較的大きめの器に並々と注がれた
かけ出汁の湖に白い麺が沈み、麺上には3個の鶏唐揚げが鎮座する。
出汁が少し塩辛く感じるけれども、
表面に細かな凹凸がある麺は、ムッチリとした食感を魅せて、なかなかにアルデンテ。
そして期待通りの唐揚げ。
揚げたての衣の中から
溢れ出す肉汁の攻撃力・・・!
<ありがたいっ・・・!>
「ショパン」でも「めんどーる」でも感じたことだが、
喫茶店独特の落ち着いた雰囲気の中で食べるうどんというのも、
普段とまた趣が違って良いものである。
私は婦人に舌代を払うと、
駐車場に繋いでおいた白馬に跨って、颯爽と帰りおおした。
◆ ファミリー喫茶 シーランド
(高知県高知市仁井田1612−12)
営業時間/確認し忘れ
定休日/確認し忘れ
営業形態/喫茶店
駐車場/有
(からあげうどん700円、かきあげうどん580円など)
『ファミリー喫茶シーランド』の場所はココ・・・!