『前編を読む』
私は、腹を括った。
"待つ"と決めた。
それは、"待てない高知県人"にとって、
壮大な覚悟と決意だった。
ところが、だ。
待ち時間は拍子抜けするほど短かった。
簡易的な衝立に仕切られて中が見えない、
イートインコーナーの入口。
そこで舌代を前払いで支払って、
舌代と引き換えに食券を貰って中に入ったときに初めて、
やけに待ち時間が短かった理由がわかった。
行列を見て、無意識の条件反射で、
満席だと信じきっていたイートインコーナーの中は満席ではなく、
わずかではあるが、まだ空席があったのだ。
つまり、長く解消されそうにない行列に見えたそれは、
偶然、同時に複数の客が押し寄せてしまっただけ、という、
"前払いシステム"ならではの現象だったのである。
中にいたお姉さんに食券を渡して、
空いていた席に座って待つ。
一口に「刀削麺」と言っても、一種類ではなく、数種類の中から選べるようになっていて、
私が注文したのは、「坦々刀削麺」という、「杜記」のイチオシらしき品。
いつもと違う場の雰囲気の中で、
しばらく待っていると、ついに未曾有の大陸麺が姿を現した・・・!
よくある担々麺と同じように、赤茶色したスープ。
そこに、"うどん"のようでもあり、"きしめん"のようでもある白い麺が沈む。
<これが坦々刀削麺・・・!>
玉にした生地を削いで麺としているというだけに、
麺を持ち上げてみると、同じ一本の麺でも、両端で、幅、太さがまったく違う。
そして、太い部分と細い部分、噛んだ場所によって食感が違う。
太い部分は非常にモチモチしていて、細い部分はクニュクニュの食感。
やはり見た目の印象は、何処となく"うどん"を思わせるのだけれど、
食感は根本的にうどんと異なり、つなぎを使っていない蕎麦のように、
反発力が低くモソモソとした感じがある。
けれども、一本の麺が、
幾通りもの食感を魅せながら攻めてくる感覚は、
刀削麺ならではで面白い。
長さの問題か、食べていると麺がブランブラン暴れて汁を飛ばしてくるので、
「デパートメントストア・大丸」ということで、若干に高級な服を着て来ていた私は、
服に汁を付けないように、汁の代わりに気を付けて、慎重にいただいた。
『チャーシュー刀削麺』
最初は空いていたイートインコーナー内は、
段々混んできて、いつしか完全な満席状態に。
狭い中に、たくさんの人がいるので、
湯気が出そうなほど、熱気が充満している。
私は、途中から相席してきた老夫婦の隣で、額に汗を滲ませながら、
噛む場所によって食感が異なる、大陸の不思議な麺を噛み締めた。
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