「クスクス・・・クスクス・・・!」
謎の声に誘われて、
私は、高知市塩屋崎から桟橋通に移転した「さぬき岩蔵」に来ていた。
『さぬき 岩蔵』
<岩蔵のうどんを食べること自体、数年ぶりだな・・・>
広い駐車場、立派な店舗。
以前の岩蔵とは雰囲気がまったく違っていたけれど、
「さぬき岩蔵」と記して掲げられた店前の看板が、この店がたしかに岩蔵であることを主張していた。
移転してから約1ヶ月。夜19時前。
そろそろ客足も落ち着いてきた頃かと思っていたが、目論見は甘かった。
木の褐色が印象的で小奇麗な店内には、たくさんのお客さん。
<岩蔵・・・大盛況・・・!>
入ってすぐにあった窓際のテーブル席が空いていたので、
そこに腰を下ろした。
すると、またあの声が聞こえてくる・・・。
「何にするの・・・ねぇ、何を注文するの・・・!?」
<いま決めている最中だよ・・・!>
「クスクス・・・釜玉にすればいいのに・・・!
竜ちゃん・・・昔、移転前の岩蔵さんで、釜玉・・・食べたことがあったじゃない・・・」
<なぜそれを・・・!
しかし不思議と、"岩蔵といえば釜玉"という印象がある・・・なぜだ・・・なぜだろう・・・!>
「さぁ・・・どうしてかしらね・・・!
とにかく食べてみればいいじゃない・・・!
ここで釜玉にでもしておかないと、竜ちゃん、優柔不断だから2年ぐらい迷うでしょ?」
<あ・・・ありえる・・・!>
謎の声の言うとおりだった。
私は迷い始めたら、果てしなく迷ってしまう。
釜玉こそが、この局面における最良の落とし所であるように思えた。
<イッとこう・・・!
これはもう・・・イッとこう・・・!
釜玉・・・!イッとこうっ・・・!>
岩蔵さん・・・。
俺をタマゴで包み込んでくれっ・・・!
『いかげそ & ちくわ天』
注文してから暫くののち。
まずは先発部隊の両者、「いかげそ」と「ちくわ天」登場。
その後に主役。
『かま玉(3玉)』
あらかじめタマゴが混ぜられていたり、混ぜられていなかったり、
釜玉の提供の仕方は、それぞれのお店で分かれるが、
岩蔵の場合は、出された時点で、すでに混ぜられていて、さらに出汁がかかっている状態。
客がしなければならない作業はない。
<完成してんだ・・・!
すでに完成してんだって・・・!>
つまり・・・。
岩蔵の釜玉は、手間いらずっ・・・!
鍛えたその殻・・・あふれる卵黄・・・
それ・・・向こうへぶち込め・・・胃袋スタンドへ・・・!
<ああっ・・・みなぎってきた・・・!
さぬきの夢が・・・!全身にっ・・・!>
前回に食べたのが何年も前なので、記憶が怪しいが、
麺が以前と違う感じがした。
前よりもプリプリ感が薄いけれど、
その分、シコシコ感が増したような、そんな雰囲気。
岩蔵では、お馴染みの、
青ノリ入りの天カスも健在。
元々、私は釜玉に天カスを入れて食べるのが好きだから、当然入れる。
<おや・・・タマゴや小麦の風味と共に・・・
ほのかに香ってきたぜっ・・・!>
青ノリと・・・四万十の風・・・!
大地の匂いがっ・・・!
青ノリが四万十産だなんて、誰も言っていないのに、
とりあえず勝手に四万十産だということにしておいた。テキトーである。
『かけ(2玉)』
また謎の声が聞こえてくる・・・。
「クスクス・・・良かったね・・・!
おうどん食べれて良かったね・・・!」
<あぁ・・・あのまま畑で草を取ってばかりいたら、
今頃、倒れていたかもしれない・・・うどんに逢えて良かったよ・・・>
「唐突だけど、聞いていい・・・?」
<聞くって、何を・・・?>
「竜ちゃんにとって、"うどん"って何・・・?」
私は微笑しながら、天を見上げて、
ポツリと呟くように言った。
「恋人です・・・!」
◆ さぬき 岩蔵
(高知県高知市桟橋通3丁目)
営業時間/11時~20時
定休日/今のところ無しと記載有り(7月29日時点)
営業形態/一般店
駐車場/有
(かま玉450円、かけ390円、一玉増し100円増、いかげそ160円、ちくわ天90円など)
『さぬき岩蔵』の場所はココ・・・!