CAFE MISSY SIPPY (ミシシッピ)高知・本山町/謎のチキンジョージ

2013.06.19

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CAFE MISSY SIPPY (ミシシッピ)高知・本山町/謎のチキンジョージ

2013.06.19

川と平行して走る片側一車線の道路を、高級な軽自動車で走る。
両脇には山。右を見ても左を見ても緑色。川には大きな岩がたくさん寝ている。

「あっ!牛・・・!」
川の向こう側に牛が放牧されている。それを見つけて僕は言う。
「おいしそ・・・!いや、カワイイ・・・!」

国道439号線を東から西へ走る。
<この道沿いにあるはずなんだけど・・・>
目的の店を見落とさないように、道路沿いにある建物に注意する。

<もう近い・・・!近いぞ・・・!>
地図によると、もうすぐ側まで来ているはずだ。<どこ・・・!見つけれない・・・!>

その直後、僕は目指す文字列を見つける。
「あった・・・!」

ミシシッピ 看板

「CAFE MISSY SIPPY」
道路脇の小さな看板に、そう書かれている。

「ミシシッピ・・・!」
と僕は言った。

ミシシッピ 外観

高級な軽自動車を店先に停めて降りる。
踏みしめる本山の地。店の建物の前に立つ。
言葉にならない声が僕の口から漏れる。

「ふへぇ・・・!」
見たことがない配色。見たことがないデザイン。
店の建物の外壁が、ひとつの芸術のように彩られている。

<俺・・・こういう感じ・・・好き・・・!>
一気に高鳴るワクワク。中から人の声が聞こえる。
それに誘われるように僕は店に入ろうとした。

すると、中に綺麗なお姉さんがいた。
綺麗なお姉さんは、僕を見るなり言う。

「あ・・・!入口!向こう側です!」
「あぁっ・・・!向こう・・・!」と僕は苦笑する。

入口を間違えた。

お姉さんに誘導してもらって、正規の入口から入る。
(入口は向かって左側だった)

ミシシッピ 店内1

中の雰囲気も独特。
しかし外壁が、水色や黄色や赤といった配色で鮮やかな彩りだったのとは対照的に、中は落ち着ける茶系の色合い。

ミシシッピ0

お姉さんが、ランチメニューの説明をしてくれる。
それによると、ランチは3種で「MOJOカレー」「チキンジョージ」「タイカレー」だと言う。

謎の「MOJOカレー」に少し興味があったけれど、僕は「チキンジョージ」を注文した。
<ミシシッピに来たら、絶対に"チキンジョージ"を食べようと決めていたんだ・・・!>

ミシシッピ 店内2

料理の出来上がりを待つあいだ、まったく退屈しない。
店内の様々なものが、僕を魅了する。

炎を揺らめかせる薪ストーブ。その上にはヤカンが乗っている。
新緑みたいな色したソファー。何だかよくわからない置物・・・。

犬の形の置物もある。
本当の犬みたいに大きい。

「よう出来ちゅうねゃ・・・」
と僕は土佐弁で呟いた。すると犬の形の置物が少しだけ動いたように見えた。
「ちゃんと動くがや・・・!」

元々、寝そべっていた犬の形の置物は、薪ストーブの前に場所を移動して、また寝そべった。

「あれ・・・?」
あまりにもよくできた作り。滑らかな動き。
僕は疑念を抱いた。僕は気が付いた。「これ・・・本物の犬・・・!」

圧倒的・・・!
本物の犬ッッッ・・・!

そこそこ大きい。
犬に詳しくないのでよくわからないけれど、おそらく買うと高そうな犬だ。

僕は犬に近寄って頭を撫でてみた。
手が頭に触れると、犬は僕を少しだけ見て、また目線を元に戻す。

そして深い溜め息をついた。

「フゥゥゥゥゥーッ」

<えぇっ・・・!>
僕は犬の意外な反応に苦笑した。<そんな溜め息つかなくても・・・!>

それから・・・お姉さんの旦那さんだろうか、
ガッシリした体格の男性の方と少し話したりした。

「前の道を渡った向こう側の下によ・・・」
と男性は土佐弁で言った。「アトリエがあるき、帰りにそっちも見て行ってや・・・!」

<アトリエ・・・?>
と僕は思いながらも、「はい・・・!」と笑って返事した。


男性が外へ出て行ったあとも、僕は店内を観察していた。
店内・・・店内というよりも、誰かの家に上がらせてもらっている感覚。
厨房というよりも台所・・・で料理を作ってくれているお姉さんの後ろ姿が見える。

<チキンジョージって、どんなんやろー>
僕はチキンジョージが、いったいどんな料理であるのか知らなかった。
"ミシシッピといえばチキンジョージだ!"という、兼ねてからの個人的思い込みに従って注文しただけだった。

<チキンジョージっていうからには、鶏・・・だよね・・・>
と僕は思った。<チキンはわかるとしても・・・チキンジョージの"ジョージ"って、どういう意味だろう・・・>

僕にはわからない。
だが世の中には、わからないままにしておいたほうが楽しいことが、たくさんある。

僕はジョージの真相を知ろうとはしなかった。
ジョージは"謎のジョージ"のままがいい。

ジョージ、ジョージ、チキンジョージ。
チキンジョージは多くの謎を抱えたまま現れた。

ミシシッピ チキンジョージ

『チキンジョージ』

ミシシッピ5

「ほへぇー・・・!」
と僕は阿呆みたいに小さく声を漏らして目を丸くした。<カラフル・・・!>

ごはんに、ニンジン、コンニャク、キュウリや水菜、タケノコ、そしてチキンが一皿に圧倒的集結!
<これがチキンジョージ・・・!>
様々な色がひとつの皿の上に鮮やかに散りばめられている様は、ミシシッピの外観みたいだ。

僕は川の向こう側に放牧されていた美味しそうで可愛らしい牛のように、野菜をムシャムシャ食べる。
それから注目のチキンに箸を向ける。

チキンには大粒の胡椒が塗されている。
噛むと中から肉汁が溢れてくる。

「美味しい・・・!」
と僕はほとんど無意識に言った。
だがジョージが何であるのか、僕にはまだわからない。

わからないけれど、わからないままでいい。
ジョージは"謎のジョージ"のままがいい。

ミシシッピ タイカレー

『タイカレー』

ミシシッピ6

m-1

食後にケーキとコーヒーを注文した。
メニューを書いた黒板に「今日のケーキ」と書かれていたから、ケーキは日替わりなのだろうか。
僕が注文したのは、『ニューヨーク・チーズケーキ』というケーキだった。

<ニューヨーク・・・>
と僕は考える。<いったいどうしてニューヨークなのだろう・・・>

「ジョージ」に続いて、わからないことがまた増えた。

でも、もちろん僕はニューヨークの真相を知ろうとはしなかった。
ニューヨークは"謎のニューヨーク"のままでいい。

犬は薪ストーブの前で、寝転んで、目を閉じて、穏やかにゆっくり眠っている。

彼はどれだけの月日をここで過ごしてきたのだろう。僕にはわからない。
チーズケーキは口の中で甘く溶けていく。

ミシシッピ10

(ミシシッピを出て、男性が言っていた、向かいの"アトリエ"へ歩く)

ミシシッピ9

(これは写真に撮ったりするものじゃないな・・・と判断して中の写真は撮らなかった。中には壁に直接描かれた大きな絵や特徴的な写真が貼られていて・・・とにかく言葉にならない衝撃を受けた。素敵だった!)

ミシシッピ

◆ CAFE MISSY SIPPY (ミシシッピ)
(高知県長岡郡本山町本山1102―1)
営業時間/11:30~22:00
定休日/水曜日、木曜日 *営業時間&定休日は要確認
駐車場/有