※ この話は『土佐あかうしがいる空港』からの続きです。
なお一応、「はなまるうどん」→「夢鶴」から続く、カレー3部作の3作目にして、「スルラクセ」から続く土佐あかうしシリーズの2作目、という位置づけです。(なんのこっちゃ)
2階へ上ると、いくつかの飲食店が目に入る。
目当ての店の名は『チャオ』
<いったいどの店がチャオなんだ・・・>
私は不審者のようにキョロキョロと辺りを見回しながら「チャオ」を探す。
とくに大きな看板が掲げられているわけでもなかったので、意外と見つけられなくて苦戦しながらも、なんとか発見。
「おお・・・!ここがチャオかね・・・!>
私は「チャオ」の前に立って、店頭に陳列された食品サンプルを眺めた。
それからスパイのように・・・というよりも正真正銘のスパイなので、スパイらしく中の様子をコソコソ伺う。
<ふむふむ!座席の配置はこうなっていてああなっていて・・・>
昼の15時を回っているが、店内には数名の客がいる。スパイは少し迷う。<でっ!これは勝手に中に入っていい方式なのかしら・・・>
そのとき女性の店員さんが中から出てきて、「どうぞぉー!」と声をかけてくれる。
<おっと・・・!気付かれていたか・・・!>
私は何食わぬ顔で入店しながらも、自分はスパイとしてまだまだ未熟なのだと実感した。
天井から床にかけて一面ガラス張りになっていて、外を一望できる素晴らしい眺めの窓際の席が、数席がある。
しかしそこはスーツ姿のビジネスマンたちで埋まっている。
<オラも窓際の席がよかっただぁー!>
と私は若干、駄々を捏ねた。心の中で。そして壁際の席に腰を下ろす。
それからどれどれ、とメニューを開く。
<あれ・・・どこだよ・・・あかうし・・・!>
メニューの中に土佐あかうしを使った料理を見つけられなくて、少し慌てる。
「企画倒れ」という、実は裏で内緒でよくある言葉が脳裏をよぎる。
だが、それも束の間。
メニュー内を大捜索した結果!ついに発見!
「土佐赤牛すじ肉をじっくり煮込んだスパイス香る手作りビーフカレー」という結構長い文字列!
<あった!よかった・・・!>
早速、卓上のボタンを押して店のお姉さんを呼び寄せて、注文する。
注文してから、しばらく待つ。待っていると現れた。
『土佐赤牛すじ肉をじっくり煮込んだスパイス香る手作りビーフカレー』が現れた!
しかも!見てくれ!このヘルシーさ・・・!
サラダ・・・サラダが付いているッ・・・!
(※ 編集部注: サラダだけで1000文字ほど語りかねないので、サラダについての注釈は割愛します)
「土佐赤牛すじ肉をじっくり煮込んだスパイス香る手作りビーフカレー」の姿を見て、私は思う。
<わりと色!濃い!こげ茶色!>
そのこげ茶色の中に、黒い物体が点在している。<間違いない・・・コイツが土佐あかうしのスジだ・・・>
私はスプーンを手に取り、「土佐赤牛すじ肉をじっくり煮込んだスパイス香る手作りビーフカレー」のこげ茶色のルーと一緒にスジをすくい、ごはんと一緒に口へ放り込む。
あぁぁっ・・・!きたっ・・・!
濃厚!ピリ辛・・・!あかうし!ブリンブリン・・・!
駆け抜ける・・・!
圧倒的・・・牧場っ・・・!
最初はそうでもなかったが、食べていると次第に口の中が炎上。
<熱い・・・!口の中がヒリヒリと燃え上がっている・・・!>
あらかじめ、消火用に用意されているのだろうか。
コップに注いだ水が卓上に置かれている。
私はそれをゴクゴク飲む。
<うわあぁっ・・・!冷たいっ!水が冷たいっ・・・!>
水は私の口内を急速に冷していく。<ありがたいっ!ありがたいっ・・・!>
スジ肉自体はそれほど入っていないけれど、カレーの味は噂に聞いたとおり、シッカリしている。
私は何もわかっていないのにフムフムと頷き、わかったような顔をしながら「土佐赤牛すじ肉をじっくり煮込んだスパイス香る手作りビーフカレー」をムシャムシャと完食した。完食したら眠くなってきた。
ムニャムニャ・・・ムニャムニャ・・・。
ムシャムシャの次はムニャムニャか・・・。
などと思いながら、私はそのままムニャムニャと眠りについた。
2秒ぐらいは寝ただろうか。
ハッと目を覚ますと、私の前にナニカがいた。
<あぁ・・・>
と私は息を漏らす。<キミは"はちきん地鶏の照焼き重"じゃないか・・・!>
いったいどういうわけだろう。
私の目の前には『はちきん地鶏の照焼き重』が置かれていた。
こまけぇこたぁ気にせずに、私はそれを食べる。
<ちょうどいい・・・!土佐あかうしと、はちきん地鶏・・・!高知を代表する肉の二大巨頭を喰らってこそ、真のニクキング・・・!>
お肉もッッッ・・・!
いっぱい食べて大きくなります。
箸を手に持つ。
持った箸の上にごはんと、茶色く照りっ照りっ!に照焼かれた、はちきん地鶏を乗せる。
食欲をそそる香ばしい匂いが、ゆっくりと漂ってくる。
<この香りの香水はないのかしら・・・>
などと抜かして、一口食べる。
<おっ!おっ・・・!はちきん地鶏・・・!ムッチムチッ・・・!>
モグモグ噛む。
これならいくらでも食べられる・・・!
カレーを食べたあとでも・・・いくらでも食べられるッ・・・!
そうやって私は「はちきん地鶏の照焼き重」をも完食した。
そのとき店のお姉さんが、私のほうを見ているのに気が付いた。
<まだ食べますか?おかわりいきますか?>という目で見ている。
私はテレパシーを送り返す。
<もうコケッコーです・・・もうコケッコウです・・・もうコ結構です・・・>
さらに、わかりやすくするために付け加える。<はちきん地鶏だけに・・・鳥だけに・・・コ・結構・・・>
うぅっ・・・く・・・くるしいよ・・・どういうわけか・・・くるしいよ・・・!
しかし、たった2品だけ食べて帰るのも悪いので、締めにアイスコーヒーを飲む。
<キンキンに冷えてるー!>
私はそれを一気にゴクゴク飲む。<めっちゃアイスコーヒーの味がする・・・!>
出発の時刻を勘違いしていたのだろうか。
空港内にアナウンスが流れた瞬間、私の隣に座っていた中年夫婦は慌てて立ち上がり、レジで代金を払う間さえも、もどがしいようにして全速力で走っていく。
<そろそろ俺も出発しよう・・・>
私は食べ終えて店を出ると、空港内の土産物屋でバリィさんグッズをデレデレ眺めたあと、エスカレーターで1階へ下りて、自宅へ向けて出発した。
◆ レストランチャオ
(高知県南国市久枝乙58)
営業時間/6:30~19:00(オーダーストップ)
定休日/無
駐車場/有料(○円以上・・・2000円だったかな?の食事をすると1時間分の無料駐車券をいただける)