<最近…肉うどんばっかり食べてたから…もう肉はいいっ!俺はシンプルな…ぶっかけうどんが食べたい…!>
トラクターを運転しているときにそう思った。
肉や天ぷらが載った華やかなうどんもあるが、うどんといえば基本的にはシンプルなものではないだろうか(知らんけど)。
そして人間も、やはりうどんと同じくシンプルなものではないだろうか。
美味しいものを食べれば美味しいと言うし、綺麗なものを見れば綺麗と言う。シンプルなものではないだろうか。
シンプル・イズ・ベスト。
ライフ・イズ・ビューティフル。
ノーアルコール・ノーライフ。
ここは原点に帰ろうではないか。
うどんの原点とは何だろう。
原点みたいな食べ方とは何だろう。
「かけ」か。いや讃岐うどんでいえば「醤油」な気もしないでもない(わからんけど)。
でも私は「ぶっかけ」が食べたい。
うーん。原点とか…まぁいいや。原点に帰るのはまた今度にしよう。
高級な軽自動車を駆って、安芸市の東へ。
『讃岐仕込 手打ちうどん いおき家』
ここのぶっかけが美味しいという話を、光の魔剣士から聞いた。そこで早速来てしまったというわけだ。
<いやぁ…いおき家…たぶん4年ぶりだ…!久々すぎて店のシステムが…店のシステムが…!おわかりいただけるだろうかっ!店のシステムが思い出せないんだ…!>
たしか変則的なセルフ方式だったと記憶しているが、詳細は忘却の彼方。
<先にカウンターで注文するんじゃなかったっけ…!>
そう思って入店直後、カウンターへ向かった。
が、その瞬間!
「お席で注文お訊きしますー!」
なんていうふうに店員さんに言われた。
<しまった!そのパティーンだったか…!>
圧倒的失策!空前絶後の思い違い!
私は泣きながらスゴスゴと隅の席に着席した。
注文したうどんは、ウルトラマンのカラータイマーも鳴らないぐらいの早さで現れた。
『ぶっかけうどん・冷(特大3玉)』
ぶっかけが食べたくて仕方なかったので、もちろん特大にした。ライフ・イズ・トクダイだ。
すごい!すごい!麺量すごい!やりましたー!
おやおや、大根おろしが緑がかっている!わーい!みどりちゃんって感じだ!
緑がかった大根おろし、食べると粗い。よくある大根おろしよりも粗いおろしかたになっている。
<コイツ…フワフワじゃない…!ゴワゴワした舌触りでゴワゴワ攻めてくるっ…!>
みどりちゃん…お肌ゴワゴワ…!
美しい、ぶっかけうどんの原風景。
かなり甘めに感じるぶっかけ出汁。一緒に仲良くやってきた柚子酢をかけると引き締まった。
いまにもピチピチ跳ねそうなくらい新鮮なアジフライ。キツネ色にコンガリ揚がっている。
ムッチリしたうどんとサクサクのアジフライ。その食感の対比が会長、タマランチン。
タマランチンに会えたのだ。
この一杯のためだけに安芸市まで来た甲斐があった、と私はしみじみしじみみたいに思った。
ありがとう、会長。ありがとう、みどりちゃん。さよならみどりちゃん!またいつの日か。
駐車場から国道に出てアクセルを踏み込むと、高級な軽自動車は軽快なエンジン音を響かせる。悲鳴みたいなエンジン音を響かせる。
◆ 讃岐仕込 手打ちうどん いおき家
(高知県安芸市伊尾木60-1)
営業時間/10:30~14:30
定休日/月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
営業形態/半セルフ(着席→注文→トッピングいるなら勝手に取る→うどん来たら食べる→食器返却→会計→帰る)
駐車場/有