黒まるが……。
黒まるが………。
5月の連休明け。
私はまた「ラーメン食堂 黒まる」に来ていた。
「黒まる」に来るのは、もう何度目だろうか。わからない。
それでも、いつもは仕事が終わった夜に来るので、昼の「黒まる」は初めてだった。
14時前、ランチタイムのオーダーストップ寸前に入店した。
床から天井まで伸びるガラス窓から、闇ではなく光が射している。
少し新鮮な気持ちでメニューを見る。
と言っても、メニューの記載はほとんど覚えてしまっている。何を注文するのかも、家を出る前に決めて来ている。
卓上のボタンを押し、店員さんを呼んで注文する。
「ご注文どうぞ!」
「え…えっと……」
手が小刻みに震えている。
額から脂汗が滲み出す。
<ヤヴァイ………>
ここ数日の私は苦しんでいた。
黒まるのラーメンが欲しくて欲しくて苦しんでいた。
注文した、背脂が入った醤油ラーメン「こくまる」が出てきた。
そのときには手の震えはピークに達していた。
荒く息を吐き、過呼吸ともいえる状態で麺を喰らう。
「こくまる」の麺が、スープが、具材の一つ一つが、喉を通って胃に落ちる。
気が付くと、手の震えは収まっていた。
芳醇な香りが口の中を漂って鼻に抜ける。
器にわずかに残ったスープを飲み干しながら、また食べたいと思った。