日中の高知市内をウロついていると、お腹が空いてきた。
時刻を確認すると午後2時を回っていた。
お腹が空くのも無理はなかった。
「どっか、ごはん食べに行こう」
と私は言った。「どこがいいかね?」
「うーん……」
ブランは悩んだ表情を浮かべた。「とにかく早くしないと、僕の姿が犬に戻っちゃうよ」
「そうだな…」
気が焦り始めたとき、見つけた。
トリコローレが…!
電車通りの向こう側に…!
私は微笑した。
「ブランよ、電車通りを跨いで行こうぜ」
人生初……!
ラ・ヴィータランチ…!
「イタリアンの店?」
と訊きながらブランは私を見た。「パスタもあるの?」
「そりゃあるだろう」
大きなラヴィータのビルの下で、小さなトリコローレが風にはためいている。
(トリコローレ。いまさっき覚えたばかりだからジャンジャン使いたい、トリコローレ)
するとブランは携帯電話を取り出し、どこかへ電話した。
電話を切るとブランは言った。
「いいってさ!」
「いいってなにが?」
「今回は組織から依頼されたわけじゃないけど、パスタを食べることを条件に、麺屋100店行脚にカウントしていいってさ!」
どうやらブランは黒ずくめの男に確認したようだった。
「そりゃよかった。じゃあ時間もないことだし、急いで入ろう!」
『ラ・ヴィータ』のレストランは地下にある。
その地下のレストランに行くには、一旦1階に入る必要はなく、外にある階段からそのまま降りられるようになっている。
時刻は午後2時すぎ。
『ラビータ』のランチのオーダーストップは午後2時半。
とにかく時間がない。
私は時間に追われ、地下へ続く階段を全速で駆けた。
そのときハプニング、起きる。
全速で駆けた私………!
地下へ続く階段で………!
ズルッと……!
滑りおおしたっ……!
がっ!
畑で鍛えた筋力で体勢を立て直し、事なきを得る…!
「おぉぉ…めっちゃ怖かった…!」
頬が引きつるのが自分でもわかった。
脳裏をよぎる、あの言葉。
急いては事を仕損じる…!
入口のドアを開ける前、中にいる店員さんとガラス越しに目が合った。
しかし、すぐに視線をそらした。
滑りながら降りてきたので、恥ずかしい…。
重厚で落ち着いた雰囲気の漂う店内。
入店後、ブランは『窯焼きピザランチ』(810円)を。
私は『パスタランチ』(864円)を注文した。
いずれも内容は日替わりの模様。
先に『パスタランチ』のサラダとパンとスープがきた。
(『窯焼きピザランチ』には、サラダとスープが付いている!)
野菜から先にバリバリ。
バリバリ後に広がる味。香り!フレバー!
こ……………!
ここ……………!
このドレッシングはいったい……!
サラダのドレッシングが地中海。
つまり、サラダのドレッシングが地中海の一番深いところら辺くらいに深い味わいを奏でている。
さらに、そのサラダの中にはホタテも入っている。
サラダにホタテ……!
サ・ラ・ダ・に・ホ・タ・テ………!
あ……………!
あ……あっ…………!
ありがたいっ……!!!
しかも…ホタテ……!
いっぱい入ってるっ………!
こうなったら…………!
ホタテにお礼を言わなきゃ……!
ありがとうッ……!
ありがとう!ホタテさん…!!
ホタテに感謝していると、ブランのピザが焼きあがった。
PIZZA……!
LaVita………!!
一切れ貰って私も食べる。
「これ普通のピザと違う…!?」
驚く私の前で、ブランは味を探るようにして言った。
「味噌が入ってる…?」
「あぁ!ホントだ!味噌の味がする気が…!」
生地がやわらかい。やわらかくてモチモチしている。
「洋風の中に和風、みたいな感じで…なんか新しいね!」
からのー!
PASTA……!
LaVita………!!
パスタの中に入っている肉。
それは…………。
鴨ちゃん。
正式名称は忘れたけれど、鴨が入ったペペロンチーノ。
食べるごとに、鴨ちゃんがドンドンドンドン鴨ってくる。
「ぐわっ…!
か……鴨ちゃん………
俺を鴨の国に連れて行ってくれ……!」
"そのとき鴨が言った。
鴨の国に鴨ーん。"
なんて気の利いたシャレを思いついたが、
決して口にはせん…!口にはせんぞっ……!!
鴨は駆け抜けた、トリコローレの向こう側に。
◆ イタリア料理 LaVita(ラ・ヴィータ)
(高知県高知市本町3丁目3−1)
営業時間/
11:30~15:00(L.O.14:30)
17:00~22:00(L.O.21:30)
定休日/祝日以外の水曜日
駐車場/有