「おぉー寒い寒い!」
駐車場に停めた車から降りると、上着を羽織った。
12月も下旬。
はや2014年も終わろうとしている。
そんな中。
降り立った高知市十津(とうづ)。
坂の下から見えた。
『三里うどん本舗』
「久しぶりだな……」
店の戸を開けると中には先客多数。空席はわずか。
カウンター越し、注文する。
「か……かけを………」
外は極寒。
『かけ』にするのは当然の選択だった。
空席に腰を下ろして待っていると、背後から話し声が聞こえてきた。
「生姜農家の……」
瞬間、私、感激。
<覚えていてくれたんだ……!>
じつは私は以前、三里うどん本舗の大将夫妻と他所でお会いしたことがあった。
しかし覚えてくれていないだろうなと思い、先程も、そ知らぬ顔で注文したのだった。
「そそそ…そうです!お久しぶりです…!」
と答えながらも嬉しい。
へっへっへ。
その後、携帯ゲームで遊びながら待っていると出来上がった。
あっつあつの、かけうどん…!!
出汁の香り。イリコの香り。小麦の香り。
食べる前から、丼を前にしているだけで湯気と共に舞ってくる。
木製の箸を割り、麺からいく。
直後から襲ってくる……!
しなやか舌触り……!!
一般的なビールをも凌駕する…!
驚きの喉越し……!!
このうどん……!
飲めるっ……!!!
身体の中に自然にフッと入ってくる、
噛まずとも飲みおおせる雰囲気。
言わずにはいられない………!
「三里うどんは、飲み物です。」
「いやぁ、温まった……!」
まるで風呂上がり。
『かけ』をいただいたおかげだ。
「しかしそれにしても……」
私は額の汗を拭った。「少し温まりすぎたな……」
今度は冷やさなければならない。
そう思った。
だが冷やしすぎてはいけない。
外は極寒なのだ。
それでもいくらかは冷やさないと、噴き出る汗が止まらない。
「じゃあ………」
と言いながら私はカウンターのほうを振り返り、再度注文した。
「ひやあつを…!」
この局面………!
倍プッシュっ……!!
おかわりだっ…!!
2杯目……!
今度はもちろん大盛…!!
<先程の『かけ』は『並』1玉……!
それでは俺の宇宙…胃袋は満たせないっ……!!>
丼の世界を席巻する白い麺…!
この麺……!
この量………!
このエッジ…!
麺のカドが……!
断面が………!
切り立っている……!!
エッジは出汁を……!
出汁は旨味を………!
連れおおすっ………!!
『かけ』で温まった身体を、
『ひやあつ』で少し冷まして……。
圧倒的透明感を魅せる、透き通った出汁は……。
むしろ俺が、かけられたい。
そんな力強さを放っていた。