嫁の実家の2階でゴロゴロしていると、
下から声がした。
「竜一!お昼どうするーーー?」
嫁のお母さんの声だ。
「あぁ………
僕もどうしようかなと思ってるとこで…えへへ」
このとき嫁は出かけていて、いない。
「うどん行くかえー?
お父さんがご馳走しちゃおとー!」
「え!ホントっすか!ほいたら行きます!」
昼過ぎ。14時前後。
時間が遅かったこともあり、
一軒目に目指したうどん屋はあえなく麺切れ。
「塩田町に美味しいうどん屋があるんですけど、
行きます?そこ結構美味しいっすよ!」
行く前から「美味しい」を連呼し、
店側のハードルを勝手に上げまくりながら、到着。
『麺房まつみ』
ちょうど先客の車が出るところで、
難関の駐車場争奪戦を運よくクリア。
カウンターのみ。10席もない。
決して広くはない店内。
ここも運よく、ちょうど3席空いている。
流れがきたっ………!
3人。並んで座る。
先にお母さんの『五目』
「写真撮りや!」
そう言ってうどんを差し出してくれるお母さん。
「いやいやいや別にえいっすよ!」
「まぁ撮りやー!」
婿がうどん野郎ですみません…!
次にお父さんの『山かけ』がくる。
「ほい!撮りや!竜くん!」
「いやいやいや!ええっすよ!」
と言いながらシャッターを切る婿…!(笑)
私が悪いんじゃない。
こんなにまで私を狂わせるうどんが悪いのよ!
キャバ嬢に貢いでおいて、
貢がせたキャバ嬢にも責任の一端はある的な
ことを言ってみる理論に似ている。(知らんけど)
そして私の『冷やし五目』
大根おろし、ワサビ、別盛。
ぶっかけ出汁でいただくぜっ…!
しなやかな、やわゴシの麺。
噛まずとも飲める勢い。
隣にいる、お父さんとお母さんの感想が気になる。
たぶんこのとき、
まつみの大将よりも私のほうがドキドキしていた。
美味しい、美味しい、
と散々ハードルを上げてきたけれど、
果たして「婿の言う通りや!」
と思ってくれているのだろうか…。
結局、感想は聞けずに店を出た。
車に乗り込む。
お母さんの五目の出汁を貰って飲んでいたお父さんが言う。
「あの出汁は、
二日酔いのとき飲んだら、
一発で治る出汁やね!」