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憧れの地、『とがの藤家』での、ひと時を、
満喫する竜一。
その時、実は奇跡を起こしていた。
珍しく上手な発声で、注文すること・・・!
それが出来たのだ・・・!
「か・・・!かかか・・・かま・・・かまげ・・・!」
終わった。
になるかと思ったのに・・・!
「釜あげパスタ、特盛で!」
そう普通に言うことが出来たんだ・・・!
「俺・・・今日・・・なんだか・・・
まろやか・・・!」
何気ない日常の中で見つけた小さな感動に、
一人、涙した。
やれば出来るんだよ・・・!
人間は・・・!
独特の和の空間を誇る、とがの藤家。
待っているあいだも、退屈しない。
店内をくまなく観察し、
畳の目を数えていると、
お姉さんが、持ってきた。
瞬間、
竜一。
絶句。
『釜あげパスタ(特盛)』
ズゴ━━━━(゚Д゚)━━━━ン!!
なにがあったの・・・!
この麺量っ・・・!
まるで巨大な氷山のように、
ドサッ!と鎮座する、大量のうどん。
普通のうどん屋の感覚で頼んだ私は、
この時、心底震えていた。
浅はか・・・!
俺は・・・浅はか過ぎる・・・!
舐めていた・・・!
舐め切っていた・・・!
とがの藤家の攻撃力をっ・・・!
大盛で良かったんだよっ・・・!
云わば、それは、『○分以内で食べられたら無料』
そんなチャレンジメニューを知らずに注文してしまったようなもの・・・!
しかし・・・!
困ったことになった・・・!
食べきれねぇ・・・!
どんな角度から計算しても・・・!
これは食べきれねぇ・・・!
常人が食べきれる量・・・!
その程度の次元は、とっくに逸脱している・・・!
好きなものだったらいくらでも食べられる・・・
そんなの・・・まやかし・・・!
幸福の境地を知らない者の口八丁・・・!
ただ、自信が無かった。
食えるかよっ・・・!
なんぼでも・・・!
絶望的な思いが、
私を支配する。
あとから思い起こしてみると、この時、
「釜あげパスタ特盛で~す♪」
そう言うお姉さんの笑顔が、
笑顔ではなくて、不敵な笑みにも見えた気がした。
(エピソード3に続く)
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