「洗面器かと、見紛う大きさ」
そんなビッグサイズのドンブリに盛られたラーメンが食べられると聞いて、私は高知市にある『万々飯店(ままはんてん)』を訪れていた。
* この記事は2011年2月に書いたもののリライトです。
店先に達するも駐車場の位置がよくわからず、店の周囲の細い路地を3周回ほどした。
「どこだろう……」駐車場はどこかにあるはずだった。「お店に直接聞きに行ったほうが早そうだ」
一時的に車をどこかにとめようと、邪魔にならなさそうな空き地に停車させる。
そのとき、ふと目の前に立てられた看板に目をやった。
ハッとした。
看板にはこう書かれていた。
「万々飯店 P」
万々飯店の駐車場は、店舗東側の『新屋敷』と書かれたバス停の奥にあった。
「なんだ……こんな近くにあったんだ……」
どこを見ていたんだろうと苦笑した。 時刻は午後2時が近い。
中華料理 万々飯店/ままはんてん(高知市)
入口の扉を開け、中に入る。
それほど広くはない店内。昼食どきを大きくすぎているのに、たくさんの人々でごった返している。
1卓だけ席が空いている。
「そちらへどうぞ」店の女性に言われる。
そこに腰を下ろして店内を見渡すと、老夫婦、若い男女、小さい子を連れた家族連れ……。
まさに老若男女問わず、様々な客が集っている。
万々飯店のメニュー
卓上のメニューを手に取る。
- 中華飯 720円
- 天津飯 720円
- 炒飯 720円
- オムライス 870円
- ラーメン 500円
- 天津メン 720円
- チャーシューメン 770円
- チャンポン 720円
- タンメン 720円
- 五目ソバ 720円
- 揚ゲソバ 770円
- 冷メン(夏季のみ) 870円
- ギョーザ 480円
ほかにもあるが、主なメニューはこの辺り。
忙しそうに働く若い男性の店員さんを呼び止めて、注文する。
揚げソバ
覚悟していたから、とくには驚かなかった。しかしあえて言いたい。
圧倒的!麺量っ……!!
その直径、ゆうに琵琶湖の3倍ほどある。
これが、並。
期待通りのボリュームに胸が高鳴り、心が躍る。
揚げられた麺。フライ麺。
餡かけがかかっていない部分はサクサクとしているが、餡かけに覆われた部分はシンナリと水分を吸収していて、
その食感の差が面白い。
シッカリとした味だけど、しつこいほどの濃さではなくて食べやすく感じる。
そして……。
来たっ……!
噂の洗面器……!!
チャーシューメン(大)
レンゲの……
大きさが尋常じゃない……!!
(画像ではわかりづらいが……)
小さい子だったら、安心してお風呂がわりにできるビッグサイズ。
チャーシューは風呂敷みたいだ……!!
かために茹でられたストレート麺。
「うどんより細いな。当たり前か……」
ゴリゴリとした歯応え。
箸でつまんで持ち上げると、上から下へ、重力によって麺が垂れ下がるその姿は、誰が見ても「ラーメン界のナイアガラ」。
いつまでも見ていたい、大自然の美しさがここにある。
滝壺に溜まったスープは、中間より若干薄めに振った濃度で、スーっと喉の奥に吸い込まれてゆく。
ラーメン屋さんのスープとは一線を画す、いかにも中華料理屋さんらしいスープの味。
だが、"どこか懐かしい中華そば"といった雰囲気ではない。
感じる……。
攻め手の気配……。
「将棋でもドラクエでも守るだけじゃダメ!攻めなきゃダメっ!」
守りながらも……!
攻めて揺さぶらなきゃ……!
鉄壁の王座なんて取れやしねぇ……!
当初は見た目の攻撃力に圧倒され、食べ切れるか不安だった「洗面器サイズ」のチャーシューメン。
しかし、かつて人生最大級に逆流の危険を感じながらも、高知・佐川町の攻撃型手打ちうどん店『とがの藤家』で『釜あげパスタ特盛』を完食した成功体験が、私の大きな自信となっていた。
黙々と食べ進め、麺は余裕。
難関だったのは、スープ。
2リットルほど入っていても不思議ではない、どう猛なる汁量。もちろんこれも飲み干さなくてはならない。
飲み干さない竜一は、竜一にあらず。
飲み干すことでしか、己を証明できない。
だから太るのだ。
おもむろにレンゲを脇に置き、巨大なドンブリを抱え上げた。
ズッシリと、両腕にかかるトン数。
こういうのは一気に飲むと逆流する。それを過去の経験から理解しているからこそ、スープが胃の底に落ちた感触を確認しながら、ゆっくりと飲んでゆく。
- 水を飲まない。
- 急いで食べない。
- スープは最後に飲む。
これはラーメンやうどんにおける、度重なるデカ盛りチャレンジで築き上げた……
完食へのプロセスだ……!!
ついにあらわになった……!
万々飯店、滝壺の全貌っ……!!
そのとき私は気が付いた……。
「このドンブリ、ただのヘルメットではない……」
裏返せば、ヘルメット!
頭に被れる……!
余裕でフィット……!!
食べ終えて改めて感じるそのドンブリの偉大さに、私の心はムラムラと震えていた。
ギョーザ
皮の薄さが特徴的な、万々飯店の「ギョーザ」。
さり気なく添えられたカイワレが、彩りのアクセントとなる。
「ラーメンのスープとギョーザが合う。だがそれにしても満腹だ……」
時刻は、オーダーストップの午後2時半を回っていた。
食べ終えた客は次々と店をあとにし、満員だった店内は徐々に静かになっていく。
私も食べ終えて席を立つ。大量のスープが腹の中で揺れている。
重い重い。お腹が重い。
お腹に琵琶湖が入っちゃった……。
万々飯店の所在地、営業時間、定休日、駐車場
- 所在地/高知県高知市越前町2丁目15ー2(万々飯店の地図)
- 営業時間/11:00~15:00(L.O.14:30)、17:00~21:00(L.O.20:30)
- 定休日/火曜日
- 駐車場/有(店舗東側[裏手です])
- ■カウンター席/有 ■テーブル席/有 ■座敷/有
▼ 万々飯店から車で10分の中華料理店。