いったいどういうわけだろう。
私はとくに「担々麺」が好きというわけではない。
好きというわけではないのに、定期的に「担々麺」が食べたくなる。
伝説の魔法「定期的に担々麺が食べたくなーる」にかかっているのではないか、と自分自身、疑心暗記している次第だ。
とにかく私は早く担々麺を食べないと、発狂しかねない自体と相成った。
そこでグーグル社の協力を勝手に得て、担々麺を食べさせてくれるお店をネット調査していると、高知市の『イオンモール高知』内の中華料理屋さんに、数種の担々麺が存在することが発覚した。
<イオンの中華料理屋にそんなにたくさんの担々麺があるとは・・・盲点だった・・・!>
私は高級な軽自動車を、F1マシ-ンのようにスッ飛ばし・・・たりはせずに安全運転で夜道をブンブン走った。
高級な軽自動車は「キーン」と甲高いエキゾーストノートを響かせる。
やがて『イオンモール高知』へ到着した。
闇夜に「AEON」と書かれたピンク色のネオンが、浮き袋みたいにプカプカ浮かんでいる。
私は高級な軽自動車を駐車場に停めて、1階のフードコートへ歩く。
そして迷うことなく『紅虎餃子房イオンモール高知店』の前にたどり着く。
<10年ぶりとか・・・かな・・・>
入口の上部に掲げられた店名を見上げる。<たぶんココに入るのは、高知にイオンが進出して、このイオンモール高知を初めてオープンさせた当初・・・それ以来だ・・・!>
店先の食品サンプルに目を奪われながら、店内へ入る。
<結構、人いるなー>
若い男性の店員さんに案内されて、フードコートが見える窓際の席に腰を下ろす。
メニューを開く。
<わぁー!担々麺がいっぱいあるー!>
私は無邪気な歓声を上げた。心の中で。
<うぉっ・・・中でもコイツは珍しい・・・!>
注目は一点に集中した。<エビ味噌ッ・・・!いいな・・・これ・・・!>
私は、ややうつむき加減にクスクスと不気味に笑う。
<俺、エビ味噌とかカニ味噌・・・めっちゃ好きやし・・・!>
そうしてポケモンでも出すみたいに言い放った。
「エビ味噌タンタン麺・・・!キミに決めた・・・!」
他にもテキトーにいろいろ注文して待つ。
店内には家族連れが多い。
<家族で中華かぁ・・・ええのぉ・・・>
と私は昼下がりのおじいちゃんみたいなことに思いながら天井を見上げた。
数分後―――。
『エビ味噌タンタン麺』は、担々麺らしくタンタンと現れた。
一目見た瞬間に私は思う。
<紅虎餃子房だけに・・・!紅虎みたいな紅さだ・・・!>
紅い泉の上を、ネギ、メンマ、モヤシなどが席巻。
さらに大きなエビ、小さなエビが浮かぶ。
<エビちゃんいっぱいやぁー!>
群雄割拠のエビのビジュアル戦に歓喜しながら箸で麺を捕らえる。そして食べる。
<うぉぉ・・・>
食べるとすぐさま攻めてくる濃密な香り。
エビ!全開ッ!!
<ふむふむ・・・>
と私は食べながら頷く。<エビが入っている分、通常の担々麺よりも海っぽいな・・・>
箸休めに『半チャーハン』
<おやおや!これは見るからに!昔流行った踊りのようだ!>
と私は思う。昔流行った踊り・・・そう・・・"パラパラ"だ。
レンゲですくって口へ運ぶ。そしてモグモグする。
<やはりパラパラ・・・>
米の一粒一粒が口の中で踊っている。
私も踊り始めたいほどだが、警備の方が駆けつけそうなのでやめておく。
もちろん私の注文は、
これだけではない。
ここは何処だ。
『紅虎餃子房』だ。
<餃子を食べなきゃ・・・>
私はそう小さく呟いてから、力を篭めて言い直す。<餃子を食べなきゃ・・・!>
紅虎餃子房が・・・!
"紅虎房"になっちまうッ・・・!
おそらくここでの主役である『鉄鍋棒餃子』
それは鉄鍋の上で、ジュージューと豪快に音を立てながら現れた。熱そうだ。
通常の餃子とは違い、春巻きみたいに長方形に包まれている。
そしてそれは私が知っている一般的な春巻きよりも、若干長く見える。
早速、箸でつまんで口へ運ぶ。
「熱ッッッぅぅぅうういッッッ・・・!」
その棒餃子、まさに灼熱。
<内側が物凄く熱い・・・!>
噛んだ瞬間に激アツの湯気が、ブワッと蒸気機関車よろしく発せられる。<ぬぉぉっ・・・これほどまでに熱いとは・・・!>
私は再び力を込めて言った。
「この棒餃子・・・まるで・・・」
渾身のキメゼリフだ。さらに力を篭め直して言う。
「この棒餃子・・・まるで真夏の恋のように熱いッ・・・!」
これだけでは大きくなれない。
さらに食べる。
<紅い担々麺を食べたからには、黒い担々麺も食べておきたい・・・>
そんな心理学上、当然の思考で注文した『黒ごまタンタン麺』
もちろん、担々麺らしくタンタンと現れた。
「黒い・・・!」
私は見たままを言う。黒い湖面に黒い挽肉が浮かんでいる。
<まろやか・・・>
麺を次から次へと口に運んでモグモグする。<のち・・・ピリ辛・・・!>
締めに!蒸し点心!
私のお腹は、とっくにいっぱいだ。
「でも、もっと食べないと大きくなれないの・・・!」
私は乙女のように言い放った。「それに点心は別腹さぁッッッ・・・!」
注文したすべてをあらかた片付けてから、最後に1個余っていた『鉄鍋棒餃子』に手を伸ばす。
卓上にそれが現れてから10分以上は経つ。
<もうさすがに冷めてるだろう・・・>と私は思う。
「熱ッッッ・・・!まだめっちゃ熱い・・・!」
食べて驚いた。いったいどういうわけだろう。外側は冷め始めていたけれど、中が熱い。
<厳重に包まれているから、中の熱が外に逃げないのか・・・?>
冬場にポケットの中に入れておくと、いつまでも温かくてよいかもしれない。
と私は思った。
(※ 帰りにイオンモール内でジョジョ立ちする竜一さん。
恥ずかしい・・・でも恥ずかしいのが・・・いい・・・!)
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◆ 紅虎餃子房 イオンモール高知店
(高知県高知市秦南町1-4-8イオンモール高知1F)
営業時間/11:00~23:00(L.O.22:30)
定休日/無
駐車場/大量に有