<蕎麦か…吉野家の蕎麦もそうだし…蕎麦自体…俺あんまり食べたことないな…>
イオンモール高知のフードコートで、うどんを食べながら、蕎麦のことを考えていた。
<そういえば…このあいだラストチャンスで飲んでるときに常連さんと蕎麦の話になって…オススメの蕎麦屋さん…教えてもらったんだった…>
私は人に薦めていただいた店というのは酔っていてもわりと覚えていて、大抵、後日実際に出向く。
食べることぐらいしか、楽しみがないのでね…!
『そば処 唯』
その屋号、きっと高知蕎麦界の中でも有名。
<お噂は兼ねがね……>
初来店。ややバンビモードで入る店内。
それほど広くないが、ほぼ満席。
空いていたカウンター席に腰を下ろす。
まず水が出てきた。
透き通っている。
四万十川上流みたいに底まで見える。
手に取る、カウンターの上に置かれたメニュー。
通常のメニューの他に期間限定メニューもあり、選び放題。
蕎麦屋経験が浅い私にとって、見たことのない名のメニューも多い。
そんな中で目に留まった、貝。
貝を使った一品。
『つぶ貝のかきあげそば』
頼むことが運命だった。
そこに貝があったのだ。
登山家がそこに山があれば登りたくなるように、貝を目の前に食べないわけにはいかなかった。
<つぶ貝のかきあげ…というもの自体初めて聞いた…初めて見た…こうなってるんだな…>
つぶ貝だけど、つぶじゃない!
掻き揚がって集結したつぶは、そんじゅそこらのつぶじゃない!
大きい…!
ハッピーバースデー!つーぶー!
色は白寄りの麺。
納得の白さ。
プリッとしていて、なんというかコシがある。
この蕎麦……!
圧倒的アルデンテ…!!
蕎麦をあらかた食べておいて、巨大かきあげに手をつける。
それにしても大きい。バンビの口には大きすぎるほどだ。
そのとき謎のオブジェが口を開く。
「俺の口なら余裕のよっちゃんよ…!」
「そうだね!キミの口ならよっちゃんだね!」
『第5章・つぶ貝の急襲』
いったい全体、かきあげというこの惑星のどこに私のつぶ貝ちゃんがいるのだろうか。
探しながら噛んでいた。
噛んでいたら襲ってきた。
つぶ貝ちゃんは唐突に襲ってきた。
中二病のかたなら、きっとこう言う。
「やっゔぇー!つぶ貝マジハンパねぇ!」
鎖とか無駄にジャラジャラさせながら、だ。
温かいつゆ。
飲むと胃にジワリと沁みる。
主戦場のうどんですら、出汁のことなんかよくわからずに食べているのだ。もちろん蕎麦の出汁のこともまったくわからない。わからないけれど、とにかくこれ!
ハッピーバースデー!つーゆー!
(言いたいことは言いましたよ、と)
デザートだろうか。
蕎麦に付いてきたゼリー状のものを食後に頬張る。
イチゴとキウイが入っている。
<ありがたいっ…!いやぁ…ありがたいっ…!お口の中がサッパリする…!>
大好きなあの子にも食べさせてあげたいイチゴだった。
◆ そば処 唯
(高知県高知市上町5-7-25)
営業時間/11:00~14:30、17:00~20:30
定休日/月曜日、第4日曜日
駐車場/有(店舗向かい側)
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