「南国SA(下り)」はちきんチャンポンに見る高知の女の強さ

2015.09.17

  1. TOP >
  2. 高知グルメ >
  3. 南国市グルメ >

「南国SA(下り)」はちきんチャンポンに見る高知の女の強さ

2015.09.17

南国SA・はちきんちゃんぽん1

『はちきんチャンポン』と書かれた画像入りの張り紙を確認すると、券売機のボタンに同じ文字列を探した。

南国SA・はちきんちゃんぽん2

<こればぁようけメニューがあったら、探すに一苦労じゃよ>昼下がりのお爺さんみたいに呟いた。

南国SA・はちきんちゃんぽん3

期間限定で『冷やかけうどん』も提供されているようだ。少し気持ちが揺らぐ。
<けんど今日は、はちきんチャンポンを食べにきたがやき、初志貫徹でうどんは我慢や>

ようやく『はちきんチャンポン(800円)』のボタンを探し当てた。一緒にフライドポテトも食べよう。

購入した食券を、すぐそばに伸びる長いカウンターの向こう側で働く店員さんに渡そうとしたとき、張り紙に気付いた。

南国SA・はちきんちゃんぽん4

「食券は渡さずにお手元に持ってお待ち下さいませ。」
どうやら食券が売れると、自動的に厨房のほうへ伝わるシステムになっているみたいだ。
<渡さんでもえいとは…。『どんぶりころころ』みたいな感じか>

南国SA・はちきんちゃんぽん5

昼どきを大きく過ぎて、人影もまばらな『南国サービスエリア』のフードコートの椅子に腰かけ、スマホをいじっていると、食券番号と商品名を呼ばれた。先にフライドポテトが出来上がったようだ。

南国SA・はちきんちゃんぽん6

フライドポテトを一本食べると、口の中に塩からさが広がる。ビールが欲しい。団体客が入ってきた。バス旅行だろうか。

程なくして『はちきんチャンポン』が出来上がった。
盆に載せたそれをカウンターから席まで運んでいると、いい匂いがした。見た目もいい。

南国SA・はちきんちゃんぽん7

ニラにキャベツに豚肉にカマボコ、イカに…とにかく一体何種類あるのかわからないほど、たくさんの具材が載っている。
<これは……トマト…?>ミニトマトまで入っていた。クリーム色の水面で赤さが際立っている。

南国SA・はちきんちゃんぽん8

山のように盛られた具から食べて、少し量を減らす。野菜が口の中でザクザクと音を立てる。ニラは高知県産で、豚は四万十豚を使用しているらしい。

南国SA・はちきんちゃんぽん9

チャンポンらしく太めの麺を、箸でむんずと掴む。ほとばしる重量感。
<ふぉっ!結構美味しい!>

先日、上りの南国SAで食べた『鰹のたたきと葉にんにくのパスタ ジェノベーゼ風』もそうだったけれど、「サービスエリアの飯は不味い」という、かつてのイメージはもう捨てたほうがいいのかもしれない。

県外で食べた有名チェーン店のチャンポンより、確実に美味しい。

様々な具材が入っているため、いろいろな歯触り、舌触り、そしていろいろな味がする。
「僕はニラです」とニラが言えば「私はカマボコよ。ピンク色が綺麗でしょ」なんてカマボコが主張する。

南国SA・はちきんちゃんぽん12

中でも異彩を放っているのがトマトだ。
彼あるいは彼女は、喋らずともそこにいるだけで存在感がある。

吉永小百合みたいだ。

「おほほ、小百合ですのよ」

スープを少し飲んで小百合を食べると、トマトの味がした。
<小百合、お前はやっぱりトマトなんだな>病的な口調で呟いた。

モヤシが浮かんでいる。キャベツも浮かんでいる。肉は沈んでいた。
<おお、四万十豚よ。ここにおったか>豚を発見するや否や、スープと一緒に口へ流し込んだ。

業務用のスープなのか何なのかわからないけれど、好きな味だ。こだわりの不味いスープよりずっといい。

イカだけではなく、エビも入っている。
<エビぞう…>低い声でそう言うと、やはりスープと一緒に流し込む。これだけ多岐にわたる具材がエベレスト状に盛られて、800円はむしろ安いくらいだ。

先程の団体客は、おみやげものコーナーを物色している。

もしも自分が観光客だったらどうだろう。県外からきた私を『はちきんチャンポン』はどのように迎えてくれるだろう。

「ようきたねぇ。どっからきたでお?アフリカ!そらぁ遠いところからきたねぇ。車で?水陸両用?え?飛べるの。あんたの車飛べるの。え?冗談?いやぁー、もぉー!こっとり騙されたちやっ!」

そんなふうに取り合ってくれるだろうか。

「これ高知のニラ。こっちゃあ四万十の豚。ブーブー言うがね。それをキャベツらぁと一緒にチャチャッと炒めて、麺の上へ載せたがね」

南国SA・はちきんちゃんぽん11

「チャンポン」と聞けば、真っ先に長崎チャンポンを思い浮かべる。
けれども高知の『はちきんチャンポン』もなかなかに強かった。まさに、はちきんみたいに美しくも豪快で強かった。