『前編を読む』
『うどん源水 南国』
チョンマゲおじさんに誘われるようにして、入口に達すと、
そこには溶き卵がかけ出汁の中を漂う、美味しそうなうどんの写真が貼られていた。
<あんたまうどん・・・!>
新メニューだろうか。
特に食べたいメニューがあるわけではなかったので、
私はそのうどんを食べてみることにした。
店内に入って、カウンター越し、お姉さんに注文する。
「あんたまうどん・・・大で・・・!」
メニューに特大は無く、小、中、大の三択だったから、
最大量である「大」にした。
このような変り種のうどんを注文する客は稀なのではないか、
そんな気がして、店員のお姉さんも私のあんたま発注に、
驚いた表情を、わずかではあるかもしれないが見せるのではないかとも思ったが、否。
お姉さんは、寸分たりとも表情を崩さずに言った。
「はい!あんたまうどん大ですね・・・♪」
<俺のあんたま発注に驚かない・・・!
あんたま・・・あんたまだぞっ・・・珍しくないのかよっ・・・!>
尚もお姉さんは一切表情を変えずに言った。
「二分ほどお待ちいただけますか・・・♪」
<動じない・・・!
元々俺がこの局面であんたま勝負に打って出ることを、読んでいたというのか・・・!>
二分待ち・・・!
二分待ちである・・・!
この二分のあいだに「あんたまうどん」の、
"あんたま"の部分を作りにかかるのだろうということは、
"うどんハンター"の勘で容易に想像できた。
出来たら呼ぶ、という旨を告げられた私は、
「8」と書かれた番号札を持たされて、長いカウンター席に腰を下ろした。
横の窓からは、田んぼが見えた。
田んぼの向こうにあるのは、山を切り開いて造られた住宅地。
自然の向こう側に建物が建ち並ぶ風景は、
どこか調和がとれていないが、独特の味がある。
「番号札八番で、あんたまうどん、お待ちのお客様ー!」
宣言どおり。
ちょうど二分ほどが経ったころに呼ばれた。
実は私は"忍びの者"なので、
一切の音も立てずにカウンターまで、いわゆる"忍者走り"にて忍び寄った。
そして、手裏剣を投げるみたいにして、
番号札をカウンターの上へと滑らせたのであった。
めでたし、めでたし。
『あんたまうどん(大) & 唐揚げ』
「あんたま」という名から、
トロミのあるスープを想像していたが、意外とあっさり。
"卵スープ"みたいな優しい味だった。
美味しそうだったので思わず取った唐揚げを噛むと、中から肉汁。
溢れ出す攻撃力・・・!
<あたたけぇ・・・この鶏にはまだ温もりが・・・!>
昼時を少し過ぎた時間帯だったけれど、
続々とお客さんがやってくる南国源水。
一人の男性が私と同じ「あんたまうどん」を注文する声が聞こえた。
その男性も、やはり数分待つように言われて、のちに、
「番号札八番で、あんたまうどん、お待ちのお客様ー!」
と呼ばれていた。
私はハッとした。
八番・・・!
八番である・・・!
私と同じ・・・八番・・・!
他に待ち人がいなくても・・・!
あんたまは・・・絶対に八番っ・・・!
この八番という番号にはおそらくなにか深い意味があるに違いなく、
私は一人のうどんハンターとして、これからもこの謎に挑んでゆきたい所存である。
◆ うどん源水 南国
(高知県高知市大津甲388-1)
営業時間/10時~20時
定休日/月曜日(データがかなり古いので要確認)
営業形態/セルフ
駐車場/有
(あんたまうどん大530円、中430円、小330円、からあげ90円)
うどん源水南国の場所