* 「さきっちょ」はその後に閉店されました。
あのミルクラーメンがまだこの世に存在すると知ったのは、
「さきっちょ」でチューリップを購入したときだった。
私は時々「ひろめ市場」内の「ファミーユ」というbarに行く。
酒を飲んでいるあいだ、あまり物を食べないけれど、さきっちょのチューリップは、たまに食べる。
酒に合うし、なにせ美味しいからだ。
私はいつもチューリップしか頼まない。
だから、さきっちょのメニューなど見たことがなかった。
しかしその日はなんとなく、
"チューリップ以外のものは何があるのだろうか"と気になってメニューを見てみた。
そこに記載されていたのが、知る人ぞ知る、あの"へそまがり"の「ミルクラーメン」だった。
<ミルクラーメン・・・!>
私は目を疑った。<生きてたんだ・・・!>
以前は高知県内に数店あった"へそまがり"だが、現在は一店舗もなく、
そこで提供されていた看板メニューのミルクラーメンも、もはや絶滅したものだと思っていた。
がっ・・・!
ミルクラーメンは生きていた・・・!
ひろめ市場の"さきっちょ"で、ヒッソリと生き続けていた・・・!
ファミーユのカウンターに、さきっちょの枝豆とキムチを持ち帰り、
あとから店主が持って来てくれた2人前のチューリップをむさぼっているあいだも、
私の頭の中からはミルクラーメンのことが離れなかった。
大好きなファミーユのマスター・あっちゃんの声もロクに耳に入らないほどに、
とにかくミルクラーメンを想い、とにかくミルクラーメンのことを考えて、ボーッとしていた。
それはまるで思春期の恋のようだった・・・。
私はボーッとしながら、無意識に枝豆に手を伸ばした。
<熱っ・・・!>私は瞬間的に枝豆から手を離した。<これ熱いんやった・・・!>
さきっちょの枝豆は、そんじゅそこらの枝豆とは違って、熱い。
たとえば、ぶっかけうどんや醤油うどんに、「温」と「冷」があるように、枝豆にも温冷があるのだ。
私は少し慎重に、枝豆を口に入れ、冷たいウォッカを流し込み、
甘いようで辛いような複雑な味わいの"さきっちょ"のキムチを一口食べて、またウォッカを流し込んだ。
その日から、寝ても覚めてもミルクラーメンのことが、心の中のどこかにずっとあった。
結果がどうであれ、告白しないと気持ちに終止符が打てない。
私は体調を整えて、適度に酒を煽ってから、また"さきっちょ"に出向いた。
「ミルクラーメンをください・・・!」
私は、さきっちょの店主にそう言った。
交際相手の親に、「○○さんをください・・・!」とでも言うように。
ファミーユでグチャグチャ喋りながら、10分ほど待った。
やがてミルクラーメンを持った店主が登場した。
きたっ・・・!10数年ぶりの再会!
へそまがりのミルクラーメン・・・!
ファミーユが満席だったので、ファミーユの前のテーブルで食べる!
麺を摘み上げた瞬間・・・!
ほとばしる!独特の香り・・・!
<わずかにポタージュスープを思わせるこの香り・・・!
これだ・・・!この懐かしい独特の香りこそ!へそまがりのミルクラーメン!>
歴史の扉は開かれた。
私は夢中で麺を口に運び、スープを飲んだ。
まろやかな味わいのスープが喉を伝う。
そのままスープはアルコールが充満した胃に落ちて、体内をやさしく満たす。
<本当にスープだ・・・!>
と私は思った。<汁じゃない!スープ・・・!>
すこぶる洋風。
<えす・・・おー・・・ゆー・・・>
私は頭の中でアルファベットを羅列してみた。
"soup"
<クリームソースのパスタみたいな味でもある・・・>
と私は食べながら思った。<昔へそまがりで食べたときより美味しく感じる・・・>
私は"soup"を一滴残らず飲み干して、完全に空になった器を店主に持って行った。
P.S. 『骨付きモモ肉』も皮がパリパリで美味しいぜよ!
※ 大体いつも上記画像の店主と美人のお姉さんがいます。
店主は酔って絡みまくる竜一に若干呆れ顔です!(苦笑)
さきっちょは、かつての"へそまがり"と同じ、"俵屋"という会社のお店で、俵屋グループの他のお店でもミルクラーメンが提供されていたりしますが、その中でも"さきっちょ"のだけが、ミルクラーメンの正当な後継ラーメンなんだ!さきっちょのミルクラーメンは他店舗のとは違うんだ!と、ある方が豪語されていた・・・らしいです。(笑)
◆ さきっちょ
(高知県高知市帯屋町2丁目3-1・ひろめ市場内・乙女小路31番)
営業時間/11時~23時
定休日/不定休