師走も残り数日という時期に到った、昨年末のある夜。
私は、某・裏麺師さんのブログにコメントを書いていた。
「釜揚げうどんに柚子の皮っスか・・・!
いいっスねぇ・・・ごっくん釜揚げ村じゃないですかぁ・・・!」
パソコンのモニターに映し出された白き麺に、
いささか興奮しながらコメントを書き込むこと、30分。
圧倒的長文が完成した。
<あぁっ・・・!それにしても・・・!
我ながら超大作を書いてしまったものだ・・・!>
感慨に耽りながら、
送信ボタンを押した。
翌日。
事態は急転直下。
山の畑の畦ぶちに立つ柳の下で、
そよそよと流れる風にあたっていると、
一羽の伝書鳩が飛んで来て、紙をよこした。
鳩の足に括り付けられた紙を開いて、
見るとこうある。
[ウドンイルカ?]
私は、おもむろに筆を取ると、
紙に一筆書いて伝書鳩に託した。
[コトワリマセンヨ]
「鳩よ・・・!頼んだぞ・・・!
これを・・・あのお方に届けておくれ・・・!」
すると、鳩は、「クックルー」と鳴いた。
「うん、わかった」という意である。
ちゃんと鳩は私の書を届けてくれたようで、
その夜の内に、私の元に神々しく白い粉を纏ったうどんが届いた。
これは夢か真か・・・!
気が付けば俺は麺世界の幻を手にしていた・・・!
<よもや・・・!まさかまさかまさか・・・!
この2011年最終局面で・・・幻の山雀うどんがいただけるだなんて・・・!>
千載一遇・・・!空前絶後・・・!
超絶奇絶・・・!奇蹟っ・・・!
神懸かり的・・・!ラッキーッ・・・!
ありがてぇっ・・・!
ありがてぇっ・・・!!
母さんっ・・・!!
年越しうどんだぁっ・・・!!!!
白い粉を纏いし麺を手に入れた、白い粉中毒。
大興奮、目の前の"おうどん"に、抗う事など出来ない。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ・・・!
ウドウドウドウドウド・・・ウドォォォーンッ・・・!
やったぁぁぁあああ・・・!!」
<クククククククククク・・・!
さぁて・・・!どいつから湯掻いてやろうか・・・!
醤油で喰ってやろうかぁ・・・いいや釜玉でいこうかぁぁ・・・!>
「おぉ・・・!そぉだぁぁ・・・!
釜揚げにしよう・・・!ごっくん釜揚げ村・・・!」
※ はいっ・・・!
最初からそのつもりで柚子を買ってきております・・・!
※ 貯蔵用の横穴から生姜・・・!
畑からネギも、ぶっこ抜いてきておりますっ・・・!
物語には、大抵、台本がある。
「役者は揃っている・・・!
それじゃあ・・・行こうか・・・!
平成の世に到るまで発見されなかった秘境・・・!」
ごっくん釜揚げ村へっ・・・!!
「キミにも・・・!見えるだろ・・・
安田川沿いのクネクネ道を今日もバスが帰ってくる・・・!
そんな田舎の情景がっ・・・!」
段々と出汁が薄まってくる感じを嫌い、
元来、店では殆ど釜揚げを注文しない竜一。
そこで、この局面。
丼に湯を張らず、湯なし釜揚げという攻めの戦術。
そして、小皿には密かに生姜を、
おろしではなく、あえてスライスで乗せおおす。
<生姜をスライスして乗せるだなんて・・・!
何を考えているのかわからねぇと思うが・・・!
自分でも何をしているのかよくわからねぇのさ・・・!!>
何はともあれ、生姜を乗せおおした結果、
山雀うどん、竜一生姜、遇機のコラボ。
成立っ・・・!
そうやってコラボした両者を、
出汁に浸して一口。
すると・・・!
ゲートから一斉にスタートする各馬・・・!
馬・・・馬・・・馬・・・。
「ウマっ・・・!」
出遅れたウマっはございません・・・!
さらに、柚子の皮と絞り汁を出汁に加えて、一口。
すると、さっきとはまた違った様相を呈し、
キリリと酸味が効いて、爽快に「ごっくんごっくん」
飲める、飲める、飲む、飲みおおすっ・・・!
<うおぉぉぉぉ・・・!
俺の味覚中枢・・・!大パニックっ・・・!>
小麦畑と生姜畑と柚子畑の総攻撃っ・・・!
「ぜぇ・・・!ぜぇ・・・!
よぉし・・・こうなったらドンドン行くぜ・・・!」
うどんの食べ方を自由自在にコントロール出来て・・・!
尚且つ悦楽の境地まで取り込むことが出来る・・・!
こんな夢見たいな機会そうそうあるかよ・・・!
手に持ったこの箸置く気なしっ・・・!
喰えるだけ喰うさ・・・!
続行だっ・・・!
アルデンテの果てが見えるまで・・・!
(後編へ続く・・・!)
『幻の山雀うどん ごっくん釜揚げ村の章 後編/アルデンテの中心で愛をさけぶ』