昼どきを大きく過ぎていた。
高知の大抵のうどん屋は、
14時あるいは15時で店を閉めてしまう。
つまり現時点で
まだうどんにありつけていないということは、
うどんを食べそびれる、
もしくは全国チェーンのうどん屋に行くしか
選択肢がなくなっているということだ。
私がやたらと『はなまるうどん』に行くのも、
この営業時間の法則と密接な関係がある。
<どっかにまだやってる店…ないかな……>
やはり頭の中に『はなまるうどん』が真っ先に浮かぶ。
だが、はなまるは、つい先日も行ったばかり。
<はなまるのカレーセットでもいいんだけど…
いまカレー食べて…………
また数時間後に晩ごはん…どうかなぁ……>
それはいかんぞう………。
いかんぞう…………。
ん……………?
いわぞう……………。
『さぬき岩蔵』!
移転オープンした当初以来、約3年ぶり。
https://syoga-udon.com/archives/35101
当時も"岩蔵自体数年ぶりだ"、と書いていた模様。
(移転前にはよく行っていた記憶があるのだけれど……)
<お久しぶりです!岩蔵さん……!>
店先にて心の中で丁寧に挨拶していると、
雨が降ってきた。結構強く降ってきた。
コソコソと中へ入る。
店内、3年経っても相変わらず綺麗。
<どういうわけか………
俺の中で岩蔵といえば『かま玉』というイメージ!>
まずはイメージに従い、『かま玉』
ゴマが振られているのが岩蔵かま玉の特徴か。
相変わらず、麺、幅広。
縦が短く、横に長い、平たい形状。
<パスタのフィットチーネのような形……!
玉子が麺に載り…!麺が玉子を載せてくる…!
がんじがらめの絡み具合…………!!!>
玉子をまとった麺を夢中で頬張っていると、
私の口から自然と言葉がこぼれ落ちた。
「ありがたい……」
岩蔵といえば、かま玉イメージに加えて、
創作メニュー多めというイメージもある。
そこで!
『月見納豆』
メニューに「温」「冷」両方できるような
記載があったけれど、注文時に指定しなかった。
<「冷」が来るのかなと思っていたら、「温」…!
デフォは「温」なのか……!わからない……!
わからないけれど……まぁどっちでもいい……!>
辺り一面、黒と緑!
刻み海苔とネギが織りなす魅惑の彩り。
<納豆はどこだ………!
納豆は………………!>
創作メニューに捜索部隊を派遣して、
納豆を捜索。(上手い!)
<いた……!ねばねば納豆……!
そして温玉先生…………!>
岩蔵が放つ創作メニュー、『月見納豆』…!
主役の二人は海苔とネギの陰に隠れ、
好機をうかがっていた…………!
全体を洗濯機みたいに
グワングワン混ぜて食べる。
幅広の麺に……
今度は納豆が絡みついてくる……!
<海苔がいいっ………!>
食べていてわかった。
海苔が非常によい役割を果たしている。
<他の店にも納豆を使ったうどんは時々ある…!
でも海苔が入っているパティーンはたぶん初めて…!
この海苔が麺をつなぎ、玉子をつなぎ…………>
納豆をつないでいる……!
香りという点でも、うどんの小麦の香りと
納豆の香りの中間に立って、両者の仲を取り持つ海苔!
仲介者………!
仲介者・海苔………!!!
さらに一般的には小口切りになっていることが多いネギ。
それが斜め切りになっている。
<斜め切りだからこそ生まれる……
歯触り…!舌触り…!食感…!喉越し…!>
研究されている………!
相手打者の苦手なコース……!
内角を攻めれば打ちとれる……!
外角低めは長打率が低い………!
全部研究されている………!
海苔もネギも………!
納豆にうどん……うどんに納豆……!
この組み合わせで……
俺たちを打ちとるため……
研究され尽くした……
必勝の配球だったんだ……!!!
手のひらの上で転がされていたっ……!!
気が付いたときには終盤。
ドンブリの底に溜まったぶっかけ出汁で、
納豆を流し込んでいた。
今日はねば~る君で