地元の神社の夏祭りに行くと
時間が遅すぎて、
ほぼすべての食べ物が売り切れていた。
<仕方がない。
俺が日が暮れるまで働く、
働き者だからこんなことになってしまったんだ>
祭りから帰る頃には、午後9時を迎えようとしていた。
<晩ごはんどうしよう……。
外で食べようにも、もう開いている店があんまりない>
……ああ、回転寿司ならまだ開いているか。
閃いて車を走らせた。
先日オープンしたばかりの『はま寿司』高知1号店、南国店。
このあいだ持ち帰り寿司をして、
まだ4日しか経っていない。
プロ野球における先発ピッチャーの
標準的な登板間隔よりも短い、はま寿司間隔。
寿司とうどんは、毎日食べてもいい。
だって美味しいんだもの。
先日、持ち帰り寿司を取りに来たときには、
店の外で待っている人もいた。
しかし今日は時間も遅いので空いている。
待ち時間ゼロで座れた。
<ここも注文はタッチパネルでするのか…!>
嬉しい。一言も喋らずに注文できるなんて、コミュ障的に最高だ。
タッチパネルを、ピッ!ピッ!と触って注文。
生ビール♪
少しだけ飲めたらいい。
ジョッキではなく250円のグラスにした。
初手からの中トロ♪を食べていたとき、事件起きる。
<醤油が多すぎて、
どれを浸ければいいのかわからねぇ!>
なんと醤油が、出汁醤油や昆布醤油など、5種類もある。
<冗談抜きに本当に困ったぞ………!
いったいどうすれば…どれを浸けて食べればいいんだ!>
そのときジェダイの教えが脳裏をよぎる。
考えるのでなく、感じるのだ。
ジェダイの教えに従って、適当に浸ける。
<昆布醤油は甘いな!普通の刺身醤油でいいや…>
はま寿司、変わった寿司、多い。
<ねぎとろ納豆……?>
早速タッチパネルで注文。
数分後、来る。
その絶景に息を呑む。
<う…うわぁ……!すごい………!
ネギトロと納豆がひとつの軍艦上に…!>
納豆が!ネギトロが!シャリが!海苔が……!
食べるとトロける!口に入れて一口噛んだ瞬間に、トロける!
うっひょーッッッ……!
さらにドンドン食べる。
<シャリが温かい……!
温かいのがいいっ………!>
温かいシャリは、心をも温めるのだよ。
はっ!はっ!はっ!
アサリの軍艦や、カモ肉の握り、
玉子にチーズを載せた握りなど、
変わった寿司がたくさんあって、ついつい食べすぎてしまう。
食べたら太る………。
それがわかっていても食べてしまう……。
私は低い声で言い放った。
「いっぱい食べて大きくなります……」
そもそも私は創作メニューが好きだ。
うどん屋に行っても、変なうどんがあったら優先的に注文する。
本当は『天ぷらうどん』が食べたかったのに、
『グリーンカレーうどん』にしたりする。
本来食べたかったものを曲げてまでそうするのは、
そのメニューが「変」だからだ。
人間でも、ちょっと変なくらいが面白い。
かなり変、大きく変だと、
漢字に書いても「大変」となるように、
実際のところ大変だろうけれど、
ちょっと変なくらいはむしろ素敵。
「好きです、変人」
(「JR、東海」みたいな発音で)
そろそろお腹も張ってきた。
しかし私は変な寿司を食べ続ける。
普通なんかいらない。
安定、平凡、人並み……なにそれ?
この局面………!
豪遊っ…………!!!
ウナギ入り茶碗蒸し……!
一皿100円で寿司が食べられる状況下において、
260円くらいする高級茶碗蒸し…………!
<うまい!うまい!うまい!おいしいいいい!>
ウナギなのに……トロっ………!
ウナギがトロっとトロけますぜ!これ大将っ!
ウナギ入り茶碗蒸しで豪勢にフィナーレ!
と見せかけて………二段締め…………!
やっぱ、うどんでしょ♪
(やっぱ牛乳でしょ♪の発音で)
「いらっしゃい!あさりうどーん!」
テンション上がる。やっぱうどんは最高だ。
人間は裏切るけれど、うどんは裏切らない。(低い声)
<さすがはゼンショーグループ!
なか卯で鍛えたうどんの技術……!>
明らかな氷結麺で、麺は弱い。
しかしアサリの出汁がよく出ていて、
回転寿司店のうどんの中では、他よりパワー感がある。
<アサリの身も厚くていいですなぁ……>
私はどっかのおじいちゃんみたいに目を細め、
アサリを噛み締めた。アサリの味がした。