冬の晴天の中に『美味だし家(びみだしや)』は佇んでいた。
高名なステーキハウスとして、高知県民は誰しもが知っている老舗『やぽんすき』の南側。
『大阪王将 高知 南川添十石店』から、道路をはさんだすぐ西側でもある。
美味だし家(高知市北川添)
週末の昼下がり……。
ここが……
美味だし家……。
快晴。晴れやかな空とは裏腹に、南国土佐に冷たい空気が漂う。
入口の格子戸から、店内の様子をうかがい知ることはできない。
美味だし家の店内は座敷あり、子連れで入りやすい
その格子戸をガラガラと開いて入った店内。
私の脇から、2歳の娘が駆けてゆく。
「あっ………」
と思った、次の瞬間「ちょっと!」と妻が声を上げる。
しまった……!
土足禁止……!!
下駄箱がある。
靴が置かれている。
<これは明らかに、靴を脱いで入るタイプのお店……!>
目の前の出来事に思考が追いついていない。
だが直後には、走る娘の背中を両手で抱きにいく妻の姿が視界に入る。
「"くっく"脱いで入らんといかんよ……」
そう言いながら、妻は娘を抱きかかえる。
<危ない……>
……なんてもんじゃない。娘は数歩、店内に土足で入ってしまった。
<すいません……>
心の中で謝罪の言葉を発した直後、店のかたが出てくる。
ヤバっ……!
正直そう思った。
<土足禁止の店内に、靴を履いたまま踏み入るなど言語道断。親の責任を問われても仕方がない……>
恐る恐る見上げると、ダンディーな男性が目尻にしわを寄せて微笑んでいる。
「すいません……」
今度は心の中でなく、実際に言葉にして発していた。
男性は、相変わらずニコニコと微笑んでいる。
「元気がえいねぇ」土佐弁でそう笑う。
靴を脱いだ娘はどんどん歩いて、個室に勝手に上がり込んでいく。
<おいおい……!>
私が制止しようとしたより先に、男性が言う。
「そこに、するかね?」
私は苦笑した。妻も苦笑している。
掘りごたつ。戸を閉めれば完全個室になりそうな部屋。
『美味だし家』の店名通り、出汁にこだわられているお店のようだ。
美味だし家のメニュー
出汁にこだわるお店……。
漠然としたイメージから、メニューは少ないのかと思っていた。けれども実際は違う。
「いっぱいあるなぁ……」
即決できないほどのメニュー数が存在する。
決められない……。
迷う……!
ありすぎる幸せ……!!
どれも魅力的で、全部食べたい。
「おすすめ!季節限定メニュー」と書かれたそこには、「本マグロの目玉煮付け」がある……。
「1目玉400円……!?安いっ……!」
私はマグロに限らず、大きな魚の目玉が好きで、これまでに数々の目玉を食べてきたが、マグロの目玉が400円は魅力的。
「眼球周りのコラーゲンがうまいんだよなぁ……!」
一見、変態の発言のようだが、世の中そんなものである。
世の中には、変態しかいない。
正味……。
いわゆる"まとも"など存在しない……。
周りにいる一見まともに見える人は、本当にまともだろうか。
あるいは"まこも"……マコモダケである。そういう可能性も捨てきれない。
鴨塩バターラーメン(900円)+まぐろ丼セット(500円)
メニューの雰囲気から察するに、『美味だし家』の推しは「鴨」と「マグロ」であると判断。
そこで迷った挙げ句、初手は「鴨塩バターラーメン」と「極上まぐろ丼」のセットに決定。
バターがブンブン香る、「鴨塩バターラーメン」。
とんでもない野菜量!
「ラーメンだと知らなかったら、野菜スープと間違えてもおかしくない姿……」
「一度は食べていただきたいのです」
……そうメニューに記載されていた「極上まぐろ丼」とのセット。
「ぬぬぬ……。漬け……?」
マグロの"漬け"がごはんの上にのっている……ように見える。
それはひとまず置いておいて……。
とんでもない野菜に挑む!
「麺はどこだろう……」
まだ見ぬ麺を探っていると、鴨肉が出てきた。
ドンブリの脇には、レモンが置かれている。
「見るからにフレッシュなレモン。こんなに瑞々しいレモンはなかなかない……」
野菜の海をまさぐり、やっと見つけた麺と共に食べる!
超バター!
「バターが効いているせいか、想像よりも遥かに濃厚……!」
それにしてもこのラーメン……。
「麺だけを食べることが難しい。箸で麺を取ろうとすると、絶対に野菜も一緒にはさんでしまう……」
野菜が、麺のみ食べることを許してくれない!
「まぐろ丼」にも手を伸ばす。
「やっぱり漬けだ……。のっているのは、漬けになったマグロだ……」
けれども……
ただの漬けじゃない!
「どうなっているのかわからないけれど、醤油の味が強くない。スパイシーというか、醤油ではないなにかの味が主張する……」
このまぐろ丼……!
普通じゃない……!!
まぐろ丼の謎は究明できないまま……。
途中からラーメンにレモンをしぼる。
「酸味が効いておいしい……」
日替わりよくばり膳(1,000円)
豪華定食……!
満漢全席っ……!
こ、これが1,000円……!?
日替わりの「よくばり膳」……。
1,000円でこれ……!!
有頭エビやホタルイカのお刺身を始め……!
もりもり盛りまくって……!
おうどんorお蕎麦まで付いて、1,000円!
お得感がありすぎて興奮。
鼻血が出そうな定食だぜ……。
「私もこれまでに数々の日替わりランチを食べてきた……」
しかしこの構成……。
間違いなく………
トップ3に入るお得感!
「毎日限定とあるから、食べられたのは幸運だった」
しかもこれ、明らかに全部手作り。
無添加無化調。
「優しい味がする……」
そういえば……。
「お店の雰囲気自体がどこか落ち着いていて、優しい空気に包まれている」
私はこのとき、"美味だし"の出所を完全に把握していた。
「もうわかったんだ……」
出迎えてくれた男性から、厨房で料理する姿が見えるご婦人から、そしてお店の天井、床、壁、柱から……。
"美味だし"が、あふれてんだ……。
「つまり、”美味だし"は料理だけじゃない……」
店のすべて、引っくるめて「美味だし家」。
美味だしの「家」なのだ……。
「美味だし家」の特徴まとめ
- 無添加無化調。
- 出汁にこだわるお店。
- 店内には靴を脱いで上がる仕様。
- 座敷(個室)あり。
- お店の推しは「鴨(カモ)」と「マグロ」?
- ラーメンの野菜量が普通じゃない。
- ラーメンは野菜マシも可能なようだが、増すと大変なことになりそう。
- コスパが高いのは「日替わりよくばり膳」。
- 極上まぐろ丼は、ただの漬け丼ではないため、一度食べておきたい。
「美味だし家」の所在地、営業時間、定休日、駐車場
- 所在地/高知県高知市北川添2-28(地図)
- 営業時間/11:00~14:00、18:00~22:00(夜営業は金・土のみ。予約すれば平日も可能)
- 定休日/日曜日
- 駐車場/有
- ■カウンター席/有 ■テーブル席/無 ■座敷/有(個室)
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