『1店目を読む』 『2店目を読む』
セルフうどん店に対する恐怖心を
取り戻すために始まった、
今回の3店行脚も、いよいよ大詰め。
ラスト・・・!
3店目のセルフうどん。
そのうどん店に
「店舗」というものは存在しない。
まるで蜃気楼・・・!
いつもどこかにフッと現れては消える
そのお店のことを、人々はこう呼んでいる。
「幻の山雀うどん」
━━━ある冬の夜。
「例のブツだ・・・!」
そう言って山雀さんが私に渡してくれた、
白い粉・・・からできたものは、重量級。
<重っ・・・!
こんなにたくさん・・・!>
私はそれをコソコソと家に持ち帰り、
見つからないように冷凍庫に隠した。
<こんなの持ってるなんてバレたら大変だ!
一刻も早く食べてしまわなきゃ・・・!>
━━━後日。
湯掻いた。
そう!白い粉の正体は!
うどん!うどんだったのである!
テレビで香川のナントカという有名なお店の大将が
言っていたやり方の通りに、強火でグラグラと湯を沸かして、
吹き零れそうになったら、ビックリ水をして麺を踊らせる。
「うどんを打つ以上に実は
うどんを茹でるほうが難しい」
高知の某うどん店の大将が
ブログに書かれていたその言葉が脳裏をよぎる。
<たしか、どんな名人が
上手く打ったうどんでも、湯掻きを失敗すると、
台無しになるという意味だったよな・・・!>
重くて深い言葉である。
私はうどんを打たないけれど、
仰っていることはわかる!
湯気と共に
漂う緊張感。
<つまり・・・!
この湯掻きの局面で俺がミスると・・・!
幻のうどんが台無しになる可能性もあるということ・・・!>
怖い・・・!
うどんが怖い・・・!
<プロが30秒違えば、
全然違うとか言うんだぞっ・・・!>
蘇る!恐怖!
究極のセルフうどんが思い出させてくれる!
うどんの怖さっ・・・!
本来!この3店行脚は、
「セルフうどん店に対する恐怖を取り戻す」
ことがコンセプトだったが、
もうこの際!
そんなことはどうでもいい!
うどん自体が怖い!ということでOK!
幾度か実際に麺を食べてみて、
食感を確認しながら、慎重に湯掻く。
数分後・・・。
完成!
『幻の山雀うどん
釜バター天』
<あらまぁぁぁ!
美味しそうにできた!
俺!すげぇぇぇ!>
一人で勝手に大喜びの一品!
それは「たも屋」の「釜バター」と
いまはなき「一蓮」の「丸角天うどん」を、
豪快にパクッて合体させたスペシャルうどん!
<すごい!なにこれ!美味しい・・・!
小麦とバターの香りが入り混じって、
ブワァァァァァっと攻撃してくるっ・・・!>
これは!もう・・・!
わざわざたも屋に
行かなくてもいいレベル!
(物の例えです!たも屋!行きます!すみません、笑)
本当に美味しくて、
かなり感動。
数日間にわたって、
他にもいろいろ作ってみた。
『丸角天醤油』
早い話が、先ほどの「釜バター天」の、
卵とバターを乗せないバージョン。
当然、ネギと生姜は自家栽培!
『豚しゃぶホルモン醤油』
"豚しゃぶ"と言っても、
肉はしゃぶしゃぶ用ではなく、
安価な"こま切れ肉"を使用。
ホルモンは、高級な牛ホルモンであるが、
もちろん近所のスーパーで半額にて購入だ!
『かき揚げうどん』
近所のスーパーにて購入の、
日の出をイメージした、まん丸のかき揚げと、
縁起のよい紅白のカマボコ。
それを高名なヒガシマルの
「粉末うどんだし」からできた、
かけ出汁の上に乗せた一品。
<フッフッフッ!どうだい!
普段は山雀さんの手作りかけ出汁の中を
悠々と泳いでいる麺たちも・・・!>
まさか粉末出汁に
入れられるとは思わなかっただろう!
しかし!
麺に馬力があるのと、
ヒガシマルのソコヂカラも手伝って、
結局!美味しい!
一見、かけ出汁が少なく
感じるかもしれないが、違う。
出汁は少なくない、
麺が多いだけだ。
この「かき揚げうどん」こそ、
2012年、大晦日の夜に私が食べたうどん。
そう!つまり!
2年連続!
年越しうどんは!
幻の山雀うどんだった!
<うどんがない!どうやって年を越そう!
なんて思ってたんだけど・・・山雀さんのおかげで、
今年も年越しうどんが食べれた!うっ!うっ・・・!(感涙)>
セルフうどん店を回って、
うどんに対する恐怖心を取り戻そうとした、
今回の3店行脚。
私は湯掻く過程で、
うどんの怖さを知った。
うどん自体が怖くなったのだ!
これで!これからはセルフ店のみならず!
一般店でも恐怖に震えることができるだろう!
めでたし!めでたし!
(対局!セルフうどん!3店行脚!完)
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