『尾木食堂』に行った日。
海老特天丼にセットで付いていたうどんを
少量食べてしまったことが引き金となって、起きた。
麺欠乏症による、
発作。
麺を大量に服用すれば大丈夫なのだけれど、
中途半端に服用してしまうと、
麺に心が煽られて、ムラムラが止まらなくなってしまうのだ。
しかし、尾木食堂の後に連チャンで、もう一軒。
それだとダメ。
自分の腹の容量の関係で、症状を緩和するだけの麺の重量を達成できない。
夜を静かに待った。
気分は、猛烈に「味噌カツラーメン」
そう言えば、『豚太郎』と並ぶ高知の老舗ラーメン店である『自由軒』
その味噌カツは一度も食べたことが無い。
高知の老舗で、高知の魂息衝く味噌カツを、食べたことが無い。
これは果たして高知県在住の麺中毒患者として、いかがなものなのか。
しかし・・・!
一日に二麺・・・!
それはさすがに・・・
豪遊っ・・・!
肉が付いても文句は言えない・・・!
至極の・・・贅沢っ・・・!
心の中で様々な、
どうでもいい葛藤が繰り広げられた。
後、決意。
行こう・・・!
自由軒・・・!
虎の門をくぐるんだっ・・・!
『自由軒 大津店』
一年数ヵ月ぶりの自由軒。
相変わらずの大盛況で、店内、ほぼ満席。
前回来た時と同じ様に、家族連れが多い。
ラーメン屋さんには多いとは言えない、
『小さい子供がいても気軽に入れる雰囲気の店』だというところも、
人気の秘訣なのだろう。
既に、何名かの人が入口で空席待ちをしていたから、
「あかーん。これ待たんと座られへん・・・!」
そう確信して、少しテンションが下がり始めていたその時。
店員のお姉さんが歩み寄ってきて、
「ソーメンの席で宜しかったらご案内出来ますが・・・」
そう聞いてくるから、
間髪入れずに答えた。
「じゃあ、そこで・・・!」
案内されながら、内心思っていた。
自由軒にある、自由軒独特のメニュー、
『流しそうめん』
それが一体・・・!
どのようにして行われるのか・・・!
ナスカの地上絵に匹敵する・・・!
人類史上最大級の謎・・・!
その謎を解く手掛かりが・・・!
何か掴めるかもしれない・・・!
その席は、店の入口から向かって左の隅に、
3~4テーブルほどあった。
触ると、硬い。
叩いてみると、痛い。
石や・・・!
このテーブル・・・!
石やっ・・・!
テーブル内側の溝の中には、
金属で出来たパイプの口が覗く。
流しそうめんをする時は、
ここから水が出るのだろうか。
例え、ここから水が出るとして、
どれほどの勢いで水が出るのだろうか。
そして、どれほどの水が湛えられるのだろうか。
私はとにかく、石を使って作られた、
この重厚な"流しそうめんテーブル"に深い感銘を受けて、
テーブルを眺め回しては、撫で回した。
ザラザラとした表面の質感。
この上を白くて細い絹糸のようなソーメンが、
冷水に乗って舞うのかと思うと、自然と鼻息が荒くなる。
その時、
我に帰る竜一。
ダメだっ・・・!
テーブルに興奮している場合じゃないっ・・・!
注文しないと・・・!
高知最大級に広い店内スペースを誇る、自由軒大津店。
このレベルの広さになると、店員さんを呼ぶこと。
それは私にとって容易なことではない。
店員さんがコッチを向いた瞬間・・・!
おもむろに手を上げ・・・!
振る・・・!
お手手・・・!
笑顔で・・・!
フリフリ~♪
ヨン様でもここまではしないっ・・・!
ヨン様(ただの竜一)に導かれるようにして、
歩み寄ってくる可愛らしい女性の店員さん。
眉毛の上で綺麗に切り揃えられた前髪は二つに分けられていて、
メイド服を着たら似合いそう。
竜一。
己に言い聞かす。
ここでドモったら最悪・・・!
ここは格好良く・・・!
ナチュラルに注文するんだ・・・!
それこそヨン様のように・・・!
竜一・・・!
意を決して・・・!
発声っ・・・!
「みみみ・・・みそっ・・みそ・・・!
みそ・・・み・・みそか・・・!」
終わった。
なんとか注文して待っているあいだにも、
次々とお客さんが来る。
だけど、座席数が多いから、
比較的回転は良いようだった。
カウンターの奥にある厨房では、
8人前後ほどの店員さんが、忙しそうに働いている。
威勢の良いおばちゃんの声が飛び、
若い女性が一所懸命に洗剤を泡立たせて皿を洗う。
今やらなければならないことを、全うする姿。
何ゆえにそれは美しいのか。
思い耽っていると、おいでなすった。
『みそカツラーメン(大盛)』
一口サイズではなく、
通常サイズのトンカツが、ズサッ!と乗る。
衣は、当然ふやけているのだけれど、
存分にスープを吸っているだけに、
舌で押すと味噌のエキスが溢れ出てくる。
脇にはチャーシュー。
これも、なかなかの大ぶり。
一時期、流行った、
トロトロと、噛まずともとろける様なチャーシューではなく、
シッカリとした歯応えがある、分厚いチャーシュー。
数年前までは、トロトロのチャーシューの方が好みだった。
だけど近年、こういうチャーシューの良さも解ってきた。
味の嗜好は様々な要素で、常に変化して行く。
私の味のストライクゾーンは、年齢を重ねるに連れて広がっているのだ。
いかにも高知のラーメンといった風な、
食感と味を持った、麺とスープ。
奇を衒った感じは無いけれど、
これこそが自由軒の良いところなのである。
『ピリカラみそラーメン』
『ギョーザ』
◆ 自由軒 大津店
営業時間/11時~21時
定休日/月曜日(祭日の場合は火曜日が休み)、祭日を除く第2火曜日
駐車場/有
(みそカツラーメン770円、ピリカラみそラーメン680円など。大盛100円増)
『自由軒大津店』の場所はココ!
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