俺だって………
一度は食べてみたかった…!
『豚太郎』…『自由軒』と共に……!
"高知ラーメン"の源流として支持される……!
旭軒のラーメンを……!!!
『旭軒』
<旧店舗の時代に来られなかったのは無念…。
おかげで人生の9割を損したと言っても過言ではない>
ずっと前から知っていた。
昔の店舗の頃から知っていた。
同級生がバイトしていたこともあった。
だけど入ったことがなかった。
週末。
ほぼ満席の店内。
<席が空いていたのは……
運が良かっただけ…かな……>
メニューを睨む。
そこに書かれたラーメンは、9種類。
ラーメン店のメニュー数としては、
際立って多いというわけではない。
がっ…しかし…!
選べない……!
<くそっ………!
どれにすればいいのかわからない…!>
このとき竜一の脳裏によぎる…!
後悔したくないという思いっ……!
<せっかく来たんだ………!
旭軒のイチオシが食べたい……!
でも…どれがイチオシなのかわからない…!>
通常はメニューの筆頭……
あるいは1ページ目…上段もしくは右端に…
イチオシが記載されている場合が多い…!
旭軒の筆頭…右端は……!
ラーメンっ…!?
ららら…ラーメン……!?
普通のラーメンっ……!?
普通のラーメンがイチオシ……
そういうパティーンもある…よくある……!
だが…初めての旭軒だ……!
そもそも…スープが何味だとか……!
それすら知らない………!
予備知識もほとんどない状態で……!
独断にてイチオシを推測するのは半ば博打っ…!
何でもいいんだ………!
どんな攻撃でも俺は受け止める…!
ただ………!
旭軒に対する…ウン十年来の思いを…
この1戦にぶつけてるんだ……!
これが旭軒のラーメンだ…!
そんなラーメンを食べたいっ……!!
万が一……!
店の人に訊けばわかるかもしれない…!
でも俺にそれができるわけがない……!
食べたいものを食べる……!
コミュ障に残された道は…ひとつっ……!
見えないイチオシに……!
追い詰められた竜一……!
追い詰められながらも選ぶっ……!
ワンタンメンっ……!!
旭軒のイチオシ…オヌヌメ……!
いわゆる"推し麺"がわからなかったため…!
自己の意思のままに頼んだ一杯……!
『ワンタンメン(大盛)』…!
中央に黄色いウズラの生卵………!
ウズラの生卵の周りに…これまた黄色いコーン…!
さらに無数のワンタン……!
ネギが配された格好………!
キャベツだとっ…!?
<ラーメンにキャベツとは…ラーメン店では稀…!
むしろ田舎のオバアがよくやる仕様……!>
しかもウズラの玉子…それも生とは…!
半熟煮卵全盛の時代にこれ……!
周囲に流されない…強烈な独自路線……!
初手は玉子を崩さずに麺…!
<意外に塩分強めのスープが麺に絡んでくる……!>
次順………!
麺からのキャベツ………!
バリッ…!
んんん………!
緑黄色野菜っ………!!
<ラーメンにキャベツは…
賛否が分かれるだろうが……
このラーメンにキャベツは必須……!>
カレーライスにおける福神漬けのように…!
完全に調和………!
むしろ………!
キャベツが入ってこその旭軒……!
いや……………!
キャベツが旭軒っ…!!
旭軒はキャベツ!
キャベツ軒っ……!!
キャベツを食べると……
畑の香りがする………!
いわゆる自然の香りが……!
旅に出ようか………!
群馬とか…そういうキャベツの名産地へさぁ…!
群馬な気分になりつつ、
竜一、ワンタンへ。
いったい…いくつ入ってんだ…!
ワンタンだらけじゃないか…!
スープが見えないほど敷き詰められたワンタン…!
ワンタンの絨毯………!
ペルシャ絨毯に匹敵するほどの高品質…!
<これは………!
他の絨毯仲買人に買われてしまう前に…
俺が全部食べておかないとっ………!>
コイツは十中八九…いつか……
その世界でも有名な絨毯になる……!
しかし………!
いまは誰もこの絨毯の才能に気が付いていない…!
食べるなら…いまだ………!
いまならまだ簡単に食べることができるっ…!!
コイツは俺のワンタン絨毯だっ…!!
ワンタンのひとつひとつにギシッ…!
シッカリ詰まった中身……!
<結構…肉感が強い……!
皮が柔らかくて…まさに上質の絨毯みたいだ…!>
『焼餃子』
<わかったんだが……
旭軒……点心がガチだ……!
皮が…ガチの皮してるっ……!>
食べているあいだにも、
続々とお客さんが入ってきて、
それほど広くない店内。あっという間に満席。
入口には待機客も出始めた。
俺はまだワンタンと戦っていた……。
終わりが見えない……!
いったい何個入っているんだ…このワンタン……!
◆ 旭軒
(高知県高知市旭町3-18)
営業時間/10:30~23:00
定休日/無
駐車場/有