愛媛県にある「エミフルMASAKI」に来たのは2度目だった。
<相変わらず迷える……店内で……!>
「エミフルMASAKI」は、高知でいう「イオン高知」みたいな大型ショッピングセンターで、中にはたくさんのテナントが軒を連ねている。
<広いなぁ……って……あれ……ここさっきも通った気が……!>
イオンと違い、若干、迷路っぽくつくられたエミフル。
とにかく迷える。迷えるから面白い。
田舎から出てきた田舎っぺには堪らないものがある。
エミフル、そこは最先端のラビリンス。
とくに何を買うわけでもなく、モール内をブラブラ。
フードコートに迷い込んだ。
うどん屋があるっ……!
ここで大変なことが起こった。
突然、目の前にうどん屋が現れたのだ。
<フードコートの入口にうどん屋を配置するとはっ……!エミフル……なんという恐ろしいことを………!>
私は硬直した。ヘビに睨まれたカエルだ。「うどん」という平仮名3文字が私を制止する。
<逃げられない……この状況から……うどんから……逃げられない………!>
頑張って、一旦、通りすぎようとした。
しかし、うどんが私の心を絡め取る。
ダメだっ……!
食べずにはいられないっ……!!
『うどんのめんた』と書かれたその店、そのセルフレーンに飛び込んだ。
店の中央には「肉うどん」と大きく書かれた看板がかけられている。
<肉うどん推しっ……!だったらこの局面…いつも通り…店のオヌヌメに従うだけ………!>
本当は釜玉が食べたかったが、自分の意思を無視して肉うどんを注文した。
『肉うどん(並)』
生姜とネギは入れ放題。
<ありがたいっ………!>
マツジュンみたいに優しい雰囲気の麺と出汁。
店のオバちゃんが丁寧に盛り付けてくれた肉もマツジュンみたいだ。
<どうしよう………!>
フードコートに入った直後から…つまり、だいぶ前から気が付いてはいたが、フードコート内に麺屋がもう一店あるのだ。
しかも結構有名だけれど、高知には出店していない店だ。
<いっぱい食べたら大きくなる……わかってるけど……わかってるけど………!>
我慢できないっ……!!!
我慢は体に毒だものっ………!
向かう……!
リンリン……!
リンガーハットォ!!!
驚くべきことに、麺2杯分の「ダブル」でも値段は同じだと書かれていた。
じゃあ、ダブルにしますっ!
『長崎ちゃんぽん(ダブル)』
<ククク……最初から気付いていたさ……!ダブル同料金なんてことはリンガーハットを見たコンマ2秒後には確認済み……だから…うどんをあえて並にした……!>
私はお腹をさすった。
<もちろん…うどん大でも食べきれはした…食べきれはしただろうが……食べたいものを食べたいだけ食べたらどうなる………!>
お腹が出る。
<三十すぎて最近代謝が悪いっ……!>
しかし……それでも………!
同料金ならダブルにしてしまうのが麺喰いだろっ……!気持ちのいい俺ってもんだろう……!
ご覧、この至福の光景を。
(* 画像では小さく見えますが、実物は琵琶湖です)
太いチャンポン麺をガツガツ食べる。
肉うどんを食べたあとに受ける、怒涛の攻撃。
野菜が、麺が、スープが、私のお腹を隙間なく埋め尽くしていく。そしてそれに従って、視界が徐々にボヤけていく。
遠のく意識の中で、私はうわごとのように呟いていた。
「た…食べてるときが一番幸せ……」