「いで湯と城と文学のまち」松山。
松山には、やさしい心と夢
……そして物語がある。
(*松山市の観光案内パンフレットより)
愛媛県松山市中心部のアーケード街「大街道」を歩く。
宇和島でも「鯛めし」を食べたが、様々ある「愛媛のグルメ」の中でも「鯛めし」は格別の美味しさである。
(参考記事:愛媛・宇和島「鯛めし」のおすすめ店「とみや」でランチ!)
「愛媛に来たからには、もちろん……」
鯛めし行くぞ!
「香川県=うどん」
「高知県=カツオ」
そんな雰囲気で、「愛媛県=鯛めし」。
私の中ですっかり公式が出来上がっていた。
松山・大街道の老舗料理店「出雲屋」。
フラフラ歩いて、ちょうどお昼どき。
噂に聞いた「鯛めし」が食べられる店『出雲屋』。100年以上の歴史を持つという、圧倒的老舗の戸を開ける。
その前にここで一旦、決め台詞。
「歴史の扉が、いま開かれるっ……!!」
ジョジョ立ちしつつ、入店。
しかし店内、ほぼ満席。
「座れないかな?」疑心暗鬼する竜一。
わずかにあった空席に腰を下ろすと、早速メニューを開き『鯛めし』を探した。
「あったあった…これだ……」
見つけるのに、大した時間はかからなかった。
がっ……!
ここで想定外の出来事、起きる。
「どうやら『出雲屋』の鯛めしは"炊き込みご飯風"のようだ……」
このとき竜一が食べたかったのは、宇和島など南予地域で食べられる、生の鯛がのった鯛めし。
しかし、こちらの鯛めしは米と鯛を一緒に炊いた、中予や東予でよく食べられる「鯛めし」のようだった。
『出雲屋』があるのは、中予、松山市。鯛めしが炊き込みご飯風であるのは、むしろ自然なこと。
「そうか。そうだよな……」
行き詰まり、途方に暮れていたそのとき。
光、射す……!
「メニューにある!"鯛丼"ってのがっ……!!」
そこに記載された「鯛丼」なるメニュー。
"ご飯に鯛の刺身を乗せたものです"と書かれている。
これが俺の求めていた『鯛めし』じゃないのか……!
しかし確信が持てない。
店のおばちゃんを呼ぶ。
そしてコミュ障、竜一。コミュ障の殻を打ち破り、頑張って聞く。土佐弁丸出しで。
「鯛丼って、どんながぁーながですか?」
すると、おばちゃん。
鯛の刺身をご飯にのせたものを、醤油で食べるのだ、と教えてくれる。
どうやら出汁に鯛を浸けて食べる、宇和島風の鯛めしとは違うもののようで、食べ方は一般的な「海鮮丼」である。
でもイイッ……!
それはそれで、美味しそう……!
「じゃあ、鯛丼で!」
と、おばちゃんに注文する。
「鯛丼でよろしいですか?」
そう言ってニッコリ微笑むおばちゃんに、竜一返事する。
「ふぇい!」
松山市「出雲屋」の海鮮丼。
初手は「海鮮丼」。「鯛丼」が海鮮丼みたいなメニューだと判明したが、こちらは完全なる、正真正銘の「海鮮丼」。
飯の上を席巻する!
色とりどりの魚介!
「いっぱい入っている……」
ありがたいっ……!
食べると甘い。
魚が甘い!
舌の上に旨味が広がる!
そう、海のように……!
直後に待望の「鯛丼」!
"たいびんび"がくる!
松山市「出雲屋」の鯛丼。
瞬間、竜一、興奮を隠せない。
「どうしよう……!」
卵黄がかわいい!
「見ろよ、これ!なんて丸い卵黄なんだ……!」
丼上を埋め尽くす鯛!ほとばしる鮮度!
「鯛が私は新鮮です!と言っている……」
俺には聴こえるのさ……。
鯛の生の声が……!
(刺身だけに、生、上手い!上手すぎる!)
天から「刺身醤油」を回しかけ!鯛の上のかわいい卵黄を潰し……!
食べるっ!
鯛丼!
「宇和島風の鯛めしも、美味しいけれど……」
「鯛丼」もうまい!
同じ鯛でも出汁で食べるのと、また違う。
宇和島風の鯛めしが、ピッチャー大谷だとすると、鯛丼は、バッター大谷。
そんな様相。
「つまりは同じ鯛でも、仕事の仕方が違う、そういうことだ……!」
しかしそれにしても、宇和島風の鯛めしが食べたくて『出雲屋』に来て、ないとわかって勝手に落ち込んだりもしたけれど……。
結局「鯛丼」という、よもやの美味に出逢うことができて……。
人生、なにが起きるかわからないよ。
そのとき、竜一の中に疑念が浮かぶ。
「海鮮丼の鯛と、鯛丼の鯛は、同じ鯛なのか?」
"海鮮丼の鯛"を食べてみる。
「ああっ!何か違う気がする……」
鯛丼の鯛と、海鮮丼の鯛の違い。それは淹れ方による、お茶の味の違いのようにも思えた。
鯛もお茶も人生も、わりと些細なことで大きく違ってくるのかもしれない。
「出雲屋」の所在地、営業時間、定休日、駐車場
所在地/愛媛県松山市大街道2丁目6−7(地図)
営業時間/9:00~21:00
定休日/不定休
駐車場/無