平日の、いの町枝川、『運転免許センター』は、比較的空いていた。 ここでの用を終えた男は、広い待合室のベンチに座って、時間を潰しに小説の文庫本を読む。 <もう少しだな・・・> 男は携帯電話の時計を見た。<でも開店と同時に入るのも何かイヤだな、初めての店だし・・・。半ぐらいに行くか・・・> 目的の店の開店時刻は11時10分だった。 11時ちょうどでも11時30分でもなく、11時10分だ。 その10分に、いったいどういう意味があるのだろうか、と男は考えたがわからなかった。 待合室は、若い男女が数人いる程度で閑散 ...