竜一
【メールフォーム】
【詳細こちらから】
昼下がり。私は高知市内で用事を済ませて家に帰っていた。 すると、着信音が突然鳴り響くのが嫌いで、常時、マナーモードにしている携帯が、助手席で振動する音が聞こえた。 <ちょっと待って・・・切らないで・・・!> 願いながら車を停めた。 大体、いつも、かかってきては切れてしまう運転中の振動音が、このときは長く鳴り続けて停車するまで切れなかった。 電話の主はオバ=アだった。 田舎の人は、全員がそうではないかもしれないが、多くの場合において、電話を、果てもなく長く鳴らす。 大抵、都会より広い田舎の家で、年寄りが「よ ...
春風そよぐ4月のこと。生姜の定植も最盛期を迎えていた。 「おぉの、疲れたちや・・・!」 そんなことを呟きながら、作業の合間に、私は畑の脇に腰を下ろして休んでいた。 すると、畑の脇を流れる小川の川上から、「ドンブラコードンブラコー」と山芋が流れてくるではないか。 山芋は私のすぐそばまで流れてきて言った。 「竜ちゃん、たまには山かけうどんも食べてやー!」 それだけ言い残して流れて去ってゆく山芋に、私は叫んだ。 「山芋、高いねーん・・・!」 元来、私は山芋が好きだ。 ウチでも、山芋みたいに"とろろ"にして食べる ...
高知市の夜の繁華街は、 いつまでも煌々と明るい光を放っていた。 常日頃、私が農作業に励む場所では、 日が暮れると、目を凝らしても天地の境目がまったくわからなくなり、 一歩踏み外すと、当たり前のように田んぼに転落してしまうほどの漆黒の闇に包まれるというのに・・・。 なんだか同じ"高知県"だということが信じられない・・・。 「葉牡丹」を出た私に、 次はどうするか、という予定は一切無く、 ネオンの灯りの元をアテもなく彷徨っていた。 すると・・・! 「和楽路屋きた・・・!」 高知大丸前に颯爽と現れた一台の車を見て ...
野良仕事を終えたあと、急に思い立ち、土曜夜市の会場である高知市帯屋町に達した頃には、すでに20時を過ぎていた。 興味本位に任せて辺りをウロウロと徘徊しているあいだに、 ドンドンと時間は経ち、中央公園に戻ってきた頃には、 土曜夜市の終了予定時刻である21時が近付いていた。 けれども、まだ生ビール一杯しか飲んでいない。 まったく酔っていない。 このまま終われるか、と思った。 人生は、全うしなければならない。 飲むならやり切れ・・・! 泥酔しなきゃ嘘だよっ・・・! 『居酒屋 葉牡丹』 数年ぶりに訪れた「葉牡丹」 ...
「高知市・土曜夜市」 → 『高知の居酒屋 葉牡丹』 → 『徳島ラーメン 麺王 追手筋店』 毎年、夏になると高知市で「土曜夜市」というものが開催されているのは知っていたけれど、元来の人混み嫌いである私は、これまで一度も行ったことがなかったし、行きたいと思ったことすらなかった。 けれども、今年は、ある方のブログを読んでいたら、土曜夜市とは一体どういうものなのか、自分自身で体感してみたいという思いが湧いてきたのだった。 それでも本当に行こうかどうしようか、まだ迷っていたが、7月7日土曜、七夕の日の野良仕事が終わ ...
春風吹く4月のことだった。私は、高知では少ない個人経営のセルフ店である、香南市野市町の「手打うどん吉川」を目指していた。 熾烈を極めた、吉川と私の三つの肉を巡る戦いも、いよいよ最終局面。 <武蔵野風肉汁うどん・・・ピリ辛鳥ぶっかけ・・・!豚と鳥を制圧したんだ・・・!こうなったら今度は牛・・・!肉ぶっかけで・・・!> 吉川・肉の三冠を達成するしかない・・・! 「吉川・肉の三冠」それは、うどん中毒なら誰しもが憧れるタイトルのひとつであり、当然、私もこれを達成するのが数年来の夢、マイドリームだった。 しかし、吉 ...
「如月のチキンナンバンが食べたい」突然、そんな衝動に駆られて、私は高知では有名な弁当店、「くいしんぼ如月」に来ていた。 如月に来ることは滅多にない。せっかくだから、たくさん食べたい。せっかくだから、背中に翼が生えてきても可笑しくないほどの量を食べてみても良いと思えた。 通常の「チキンナンバンBIG大盛」を注文するはずだったのに、私の口は「セッカクダカーラ」という魔法がかかったみたいに、勝手に動いた。 「スーパーBIGでっ・・・!」 「スーパーBIG」とは・・・!チキンナンバンが2枚入った「チキンナンバンB ...
「夏限定」そんな言葉に誘われるようにして、私は、このところ高知だけの新メニューを続々と投入している「たも屋」の"南国店"へ来ていた。 入口をくぐってすぐにあるカウンター。見慣れた顔のオバチャン店員さんがいる。 「ツナサラダうどん・・・特大で・・・!」 オバチャンに注文すると、釜揚げ系を除く、大抵のメニューを注文した場合と同じように、麺だけを入れた器を渡された。 多くの場合は、そのまま"湯だまり"、あるいは、それを回避して"天ぷらコーナー"へ進むのだけれど、「ツナサラダうどん」は違った。 切った野菜が入った ...
【徳島・カピバラの旅】『カピバラに逢いに徳島へ ~納豆の香りと共に~』 → 『192号線は麺だらけ』 → 『とくしま動物園 EP1/鳥に接近』→ 『とくしま動物園 EP2/おねむの時間』 → 『とくしま動物園 EP3/待望のカピバラさん』 → 『動物園から鉄火場へ』→ 『中華そば 田村』 → 「あすたむらんど徳島 & 巨大たらい」 上り坂が続き、道はドンドン山の中へ入っていく。「中華そば田村」を出た私は、「あすたむらんど徳島」という所を目指した。 まだ口に残る「田村」のスープの香りを感じながら到着した駐車 ...
徳島ラーメンを食べると決心してからが、また迷った。 決心が揺らいだのではなく、道に迷ったのだ。 うどんならば、数十キロ離れた位置からでも出汁の香りで店の位置を特定できるため、 道に迷うなどということは考えられないことだが、 ラーメンとなると、本来の専門分野では無いためか、香りを上手く嗅げずに迷いまくった。 同じ道を何度も通ってしまう。 嗅覚には定評のある戌年の私が、だ。 ついには自力での到着を諦めて、 道を覚えなくなるからと意図的に使わないようにしていた、スマホのナビアプリを起動させた。 すると、目指す徳 ...
【徳島・カピバラの旅】 『カピバラに逢いに徳島へ ~納豆の香りと共に~』 → 『192号線は麺だらけ』 → 『とくしま動物園 EP1/鳥に接近』 → 『とくしま動物園 EP2/おねむの時間』 → 『とくしま動物園 EP3/待望のカピバラさん』 → 「動物園から鉄火場へ」 → 『中華そば 田村』 → 『あすたむらんど徳島 & 巨大たらい』 時刻は13時を回っていた。 「とくしま動物園」を出た私は、動物園の広い駐車場に、 相変わらず一台だけ停まっている自分の車の運転席に座って、 昼ご飯を何にしようかと考えてい ...
【徳島・カピバラの旅】『カピバラに逢いに徳島へ ~納豆の香りと共に~』 → 『192号線は麺だらけ』 → 『とくしま動物園 EP1/鳥に接近』→ 『とくしま動物園 EP2/おねむの時間』 → 「とくしま動物園 EP3/待望のカピバラさん」 → 『動物園から鉄火場へ』→ 『中華そば 田村』 → 『あすたむらんど徳島 & 巨大たらい』 「とくしま動物園」には「室内展望所」といったような施設があって、その中から、人間が、外にいるキリンの目線と同じ高さで対峙できるようになっていた。 これまでキリンと同じ目線に立っ ...
【徳島・カピバラの旅】『カピバラに逢いに徳島へ ~納豆の香りと共に~』 → 『192号線は麺だらけ』 → 『とくしま動物園 EP1/鳥に接近』→ 「とくしま動物園 EP2/おねむの時間」 → 『とくしま動物園 EP3/待望のカピバラさん』 → 『動物園から鉄火場へ』→ 『中華そば 田村』 → 『あすたむらんど徳島 & 巨大たらい』 昼間に活動する鳥たちと違って、哺乳類は夜行性の動物が多いようで、とにかく寝ていた。 (寝ていた・・・!) (寝ていた・・・!) (寝ていた・・・!) (とにかく寝ていたっ・・・ ...
【徳島・カピバラの旅】『カピバラに逢いに徳島へ ~納豆の香りと共に~』 → 『192号線は麺だらけ』 → 「とくしま動物園 EP1/鳥に接近」→ 『とくしま動物園 EP2/おねむの時間』 → 『とくしま動物園 EP3/待望のカピバラさん』 → 『動物園から鉄火場へ』→ 『中華そば 田村』 → 『あすたむらんど徳島 & 巨大たらい』 駐車場に車を停めて、濡れたアスファルトに足を下ろす。 高知を出たときから降ったり止んだりしていた雨は止んでいた。それも、たったいま止んだばかり、という風な路面の濡れ具合。傘をさ ...
【徳島・カピバラの旅】『カピバラに逢いに徳島へ ~納豆の香りと共に~』 → 「192号線は麺だらけ」 → 『とくしま動物園 EP1/鳥に接近』→ 『とくしま動物園 EP2/おねむの時間』 → 『とくしま動物園 EP3/待望のカピバラさん』 → 『動物園から鉄火場へ』→ 『中華そば 田村』 → 『あすたむらんど徳島 & 巨大たらい』 徳島の「西の雄」と謳われるうどん屋さんに吸い込まれそうになりながら、私は国道192号線を、さらに東進。県を横断して徳島市を目指した。 その道中に通った徳島県西部の"三好市"界隈 ...
【徳島・カピバラの旅】「カピバラに逢いに徳島へ ~納豆の香りと共に~」 → 『192号線は麺だらけ』 → 『とくしま動物園 EP1/鳥に接近』→ 『とくしま動物園 EP2/おねむの時間』 → 『とくしま動物園 EP3/待望のカピバラさん』 → 『動物園から鉄火場へ』→ 『中華そば 田村』 → 『あすたむらんど徳島 & 巨大たらい』 早朝、コンビニの駐車場に停めた車の中で私は「納豆おにぎり」を食べていた。 これから車で徳島県を目指す。納豆おにぎりは、その"腹ごしらえ"というわけだ。 ちなみに今回の旅の目的は ...
『前編を読む』 私は、腹を括った。 "待つ"と決めた。 それは、"待てない高知県人"にとって、 壮大な覚悟と決意だった。 ところが、だ。 待ち時間は拍子抜けするほど短かった。 簡易的な衝立に仕切られて中が見えない、 イートインコーナーの入口。 そこで舌代を前払いで支払って、 舌代と引き換えに食券を貰って中に入ったときに初めて、 やけに待ち時間が短かった理由がわかった。 行列を見て、無意識の条件反射で、 満席だと信じきっていたイートインコーナーの中は満席ではなく、 わずかではあるが、まだ空席があったのだ。 ...
なんという名だったか忘れてしまったが、「高知大丸」で、日本中の美味しいものが集うイベントが開かれていると聞いて、私は高知市内でうどんを食べるついでに、高知大丸5階へ向かった。 しかし、そのイベントで販売されていた、見るからに美味しそうな食べ物たちは、物の価値を「たも屋のうどん○玉分」という基準で、無意識に換算してしまう私にとって、かなりツライ値段設定がなされていた。 <これがたも屋のかけうどん特大2杯・・・つまり6玉分か・・・!>そう思い始めたら、もう買えない。 元々、明確に目当ての品があったわけでもなけ ...
数年ぶりの再会だと思うと、すっかり興奮して鼻息荒くイレ込んで、開店10分前に「麦庵」に到達してしまった私が、時間つぶしを兼ねて、"三里方面"で偵察していたのは、もちろん、うどん屋さんだった。 あとから調べてみると、そこは"三里"ではなく、「麦庵」があるのと同じ"仁井田"という地名で、その"うどん屋さん"も、正確には"うどん屋さん"ではなく、"喫茶店"である。 とにもかくにも、「麦庵」で"肉ぶっかけ"を食べおおした私は、早速、偵察しておいた、喫茶店みたいなうどん屋さんみたいな喫茶店へと走った。 「麦庵」から ...
讃岐うどんのメッカ・香川には及ばないが、 高知にもたくさんのうどん屋さんがある。 そんな高知を舞台に、うどん屋さんからうどん屋さんへ、 私は日々の農作業の合間を縫って、四国霊場88ヶ所巡りのように食べ歩いている。 思えば、こんなことを、もう7年も8年もしている。 暇さえあれば、うどん。 とにかく、うどん。 元来は、"引き篭もり農民"であるから、 うどん以外の用事で外出することなど滅多にない。 髪はうどんを食べるついでに切りに行くものだと思っているし、 服はうどんを食べるついでに買いに行くものだと思っている ...
『前編を読む』 山雀さんのうどんを食べて、「たいびんび」を出た私は、なにか面白いものでもないかと辺りを見渡していた。 すると、あるブログに掲載されていた画像で見た、"ドルチェかがみまま"によく似た女性がいた。 「あっ!」と思ったけれども、とりあえず、私は一瞬合った視線をそらして知らん顔をした。 確信が持てなかったからだ。知らない人と見詰め合ったりしたら可笑しいではないか。 もう一度、顔を確認して、改めて自分の中で詳細に判別しようとしていると、私の判別が終わる前に、女性のほうから「もしや竜一ではないか」と声 ...
指定の駐車場に車を停めて、私は何処か懐かしい穏やかな空気が漂う赤岡の商店街を歩いていた。 ここでなんでも、「あかおか横町ちょこっと市」という名のイベントが開催されているらしいのだ。 圧倒的に独りだった。 "イベント"と呼ばれるものに独りで行くのは、友達がいないことがバレるので恥ずかしかったけれど、気心が知れている・・・はずの幻の麺師・山雀さんが出店されているということで、とりあえず、行けばなんとかなるだろうと思っていた。 ボク山雀さんと知り合いなんです、みたいな顔をしておけば、大した違和感はないだろう。 ...
『土佐魚彩処 にしや』 → 『活貝・海老料理 満潮(みちしお)』 → 『Bar Optimista(バル・オプティミスタ )』→ 「和楽路屋(わらじや) うどん・そば・ロボット屋台」 「Bar Optimista(バル・オプティミスタ )」を出た私は、雨から逃げるようにして、すぐ北側にあるアーケードへ走った。 すると「高知大丸」の前に、高知では有名な、通称「ロボット屋台」と呼ばれる「和楽路屋(わらじや)」が店を開いていた。 「和楽路屋」の営業は22時からだと聞いたことがあるが、私が「バル・オプティミスタ」 ...
『土佐魚彩処 にしや』 → 『活貝・海老料理 満潮(みちしお)』 → 「Bar Optimista(バル・オプティミスタ )」→ 『和楽路屋(わらじや) うどん・そば・ロボット屋台』 「満潮(みちしお)」を出てもなお、雨は同じように全力で、アスファルトの上に叩きつけて跳ね返っていた。 一軒目に立ち寄った「にしや」がある、屋台が数軒建ち並ぶ通りに一旦戻る。そこでは「にしや」を出たときに見たのと同じように、顔を赤らめた人々が、談笑しながらラーメンをすすっていた。 それが、なにか、めくるめく夜の妖艶からの生還者 ...